2025年7月29日 (火)

定跡を作る

250729_042▲4六銀に△3四歩が指されました。これも検討に出ていた手で、▲4六銀をとがめています。▲4六銀に代えて▲3六銀であれば、△3四歩は▲4六角で効果はありませんでした。

先手が攻めるなら▲3五歩ですが、「それなら後手はかなり読みやすい」と島九段は話します。例えば▲3五歩△6五歩▲同歩△同桂▲6六銀△8六角▲同角△同飛▲8七歩△8一飛には▲3四歩になりそうです。これまで検討に出てきた変化では、△8一飛に6五桂を食いちぎってから▲3五桂といった強い攻めも可能でした。それと比べて▲3四歩は明らかに甘く、後手は△6九角と攻める手もありそうですし、△6四歩と力をためても指せそうです。

先手は▲3五歩を指せるのか。もし指せないなら、先手から厳しい攻めは見当たりません。となれば、△6五歩を緩和しかありませんが、それが極めて難しい。▲8八玉は8筋の突き捨てを生かされそうで、かえって危険。▲9六歩も受けに役立つのかどうか。

このまま封じ手になる可能性も十分にあります。永瀬九段は残り時間に余裕があるため、仮にこのまま封じ手にしても、大きな時間差はつきません。島九段は、この攻防の成否に注目しています。「二人でいま、まさに生きた定跡を作っている、という感じがします。矢倉対雁木の戦いにおいて、今後の指針になりうる将棋です」と話しました。

Dsc_4247(モニター前で解説する島九段)