図は藤井王位が8七に歩を垂らしたところ。この手は詰めろではありませんが、後手に角金銀のいずれかが渡ると先手玉は詰めろになります。したがって、ここで▲2八飛と寄って△2三歩▲同歩成△同金に▲3一馬から馬を捨てて詰めろを掛ける筋や、▲2三金と打ち、△同歩▲同歩成△同銀に▲2五歩と詰めろを掛ける筋はいずれも先手は詰まされてしまいます。控室では当初、この△8七歩の意図を計り知れないところがありましたが、検討を進めるにつれ「さすがですね。これはもう読みきっている感じの印象です」との声が上がりました。豊島九段はこの局面で30分考えており、残りは6分となりました。
2022年7月
2022年7月21日 (木)
こういう手が
16時53分、豊島九段は歩頭に桂を打っていきました。船江六段は驚きの様子で「へー、こういう手がありましたか。これは検討していませんでした。先手を持って少し攻め駒が足りない感じがしていたところで、豊島九段としては尋常な手では追いつかないと見て勝負にいった印象です。この▲2四桂自体は終盤の手筋として頻出しますが、本局の場合は飛車が2筋にいないため、取られたあとに攻めが続くか微妙なところがあります。ただ、豊島九段はほかの変化と比べて、この▲2四桂が最も勝機があると先ほどの3時間を超える長考で判断して勝負を懸けたのだと思います。ここから△2四同歩▲同歩までは進みそうですが、藤井王位としては桂を取るしかないところなら、ここで指さずに先々を考えるかもしれませんね」と解説しました。