(続いて豊島九段)
――改めて藤井王位の印象を。
豊島 一番感じたのはやっぱり中終盤の読みの正確さですけど、序盤戦術も非常に新しいものを取り入れて指されている印象です。
――昨年のシリーズをどう総括するか。
豊島 出だしの3局くらいは割と序盤はうまくいっていて、中終盤は第1局はうまく指せて、2、3はミスが多かったかな、と思うのですが、そのあとはこちらの内容が悪くなって、序盤もあまりうまくいかなくなったかなと思います。
――どのようなシリーズにしたいか。
豊島 去年に続いてですけど、自分としては今年が始まってから新しい気持ちで将棋に取り組んでいて、無冠になったのでタイトル戦に出られるかどうかもわからない状況で、出られるとしてももうちょっと時間がかかるかなと思っていたんですけど、こうしてまた出られてうれしく思うので、それを盤上に表現していって、自分なりに精いっぱい指していい勝負にできたらと思っています。
――「新」という字を揮毫した。
豊島 さっき話したような感じで、新しい気持ちで指していって、昨年とは違うような新しい展開になればと思いました。
――犬山城は織田信長、徳川家康、豊臣秀吉の3人が奪い合った城。3人の武将の中で誰が好きか。
豊島 (笑)。信長ですかね。けっこう革新的なことをたくさんされてきた印象があるので。誰が好きというわけではないんですけど(笑)。
――今年からの新しい取り組みについて、もう少し具体的に。
豊島 普段の勉強や研究方法が大きく変わったというわけではないんですけど。やっぱり結果的にもいろいろ見直さないといけないと迫られている状況なので。詰将棋であったり棋譜並べであったり、一般的なことをやっていく中でも、目のつけどころとか意識を変えていけば、ちょっとずつ変わっていくのかなというふうに思っています。
――タイトル戦という舞台にどういった心境で臨むか。
豊島 やはりタイトル戦は特別な緊張感があって、それを感じている。半年で出られたので、前に王将戦(2011年1~3月、第60期王将戦)で挑戦して、しばらく出られなかったので、そのあとに王座戦(2014年9月~10月、第62期王座戦)に出たときは場の空気に慣れるのに時間がかかってしまったんですけど、そういうことはなく指せるのかなと思います。
――今年は岩佐美帆子女流2級が弟子になったり、師匠の桐山清澄九段が引退を迎えたり、環境の変化があった。
豊島 そうですね。弟子を取って自分もしっかりしないとという気持ちになりましたし、師匠は引退にはなってしまったんですけど、最後まで闘志を持って戦われている姿を見て、自分ももっとよりいっそう頑張らないといけないという気持ちになっていて、それがすぐ結果に反映するわけではないんですけど、モチベーション高く取り組めているのかなと思います。
――愛知出身の2人が愛知で対局する。
豊島 愛知県での対局は自分にとっても非常にうれしいことですし、地元が盛り上がっていただけたらうれしく思います。犬山は子供のころ何度か来ているので懐かしく感じています。
(書き起こし:文)