2014年8月19日 (火)

前夜祭(6)

対局者の退場後、前夜祭の最終プログラムとして、深浦九段、畠山鎮七段、豊川七段による「見どころ紹介」がありました。司会進行は鈴木女流二段です。

B414 深浦「現地に多くの方にきていただいてありがとうございます」
鈴木「今日は女性やお子さんも多いですよね。ありがたいです」
深浦「…マンモス!」
豊川「そうですね。本当に女性やお子さんからたくさん」
鈴木「豊川先生、今日は飛び入り参加ですね」
豊川「昨年もですが、お邪魔虫で。王位戦といえば西日本新聞。レッツゴーゴー(第55期)ですからね、いてもたってもいられず。すみません、つまらない。それはともかく、いてもたってもいられず」
鈴木「先ほど会場からもマンモスが聞こえました」
豊川「ほんとに、将棋で頑張らないといけないんですけどね」

B518 鈴木「見どころということで、前の第3局は持将棋でしたが、先生方は経験ありますか」
深浦「私は何度かあります。タイトル戦では非常に珍しいですよね」
畠山「私は一回もないので、どうやれば持将棋になるのかわからなくて。ルールは知っていますが、やり方がわかりません。第3局はすごかったですね。あさっても持将棋になったらどうしましょう」
深浦「一回あるとですね、何かまた起きそうな気がするんですよね。持将棋ではなくても、千日手はあるかも。千日手は即日指し直しなので、終局が遅くなりますから西日本新聞の皆さんは大変ですね」
豊川「持将棋は一回だけあります。普段の対局はすぐ指し直すんです。12時ごろに指し直しで3時か4時くらいに終わってあまり思い出したくない記憶ですね」

B434_3 鈴木「ここまでの内容はいかがですか。木村さんが押しているように見えますが」
深浦「持将棋は大きな出来事で、引き分けは将棋にはまずないことですから、過去を振り返ってしまいますが、率直に言うと、木村さんがリードしたところを逃してしまった。チャンスだったと思うんですよ。勝つチャンスはあったと思う。羽生さんの反撃が始まってきたかなと思います。木村さんといろいろありましたので、これくらいにしておきます」
鈴木「いろいろあったとは」
深浦「第50期の…」
豊川「横から失礼。お邪魔虫で深浦さんは木村さんとの王位戦は3連敗だったんです。第4局は忘れもしない佐世保の対局です。深浦さんは対局時は別人なんですよね。普段は気を使うやさしい方ですが、3連敗で地元の佐世保ですよ。立会で行っていたんですけど、普通にしていてもすごいものを感じました。そこから4連勝したんですね」
畠山「3連敗から4連勝は個人競技で起こるんだとビックリしました。今日が奨励会と重なったため、記録係は私に弟子の斎藤五段なんです。深浦九段が代われといえば、記録をやらせていただきます」
深浦「言ったら記録やりますか」
畠山「立会人命令でしたら」
深浦「いやいやいや」
深浦「今日は女性ファンが多いのですが、斎藤五段の影響ともうわさされています」
鈴木「西の王子と言われているんですよね。これだけ女性が多い前夜祭はあまり見ませんよね」
豊川「女性ファンが増えていますよね。ほんと驚きマンモスで、大変なことです」
鈴木「一つお聞きしたいのですが、マンモスってどういう意味なんですか」
豊川「マンモスは氷河期に…これは冗談ですけど、将棋は難しいじゃないですか、なので楽しくやりましょうみたいな」

B449_2 鈴木「先ほど、西日本新聞の川崎社長から話がありましたが、羽生王位は手が震える、木村八段は顔が渋くなると、勝つときのしぐさがあるようです」
深浦「羽生さんは勝ちになるとよく手が震えますよね。ファンの方に『勝ちになったら手が震えるんですか』と言われたんですけど、僕はそういうことはなくてですね。特殊な状態ですよね、手が震えるのは。たしかにあれを見ると、負けたなと思います。あれはたくさん見ました」
畠山「深浦さんは勝ちになると、どんどんどんどん顔が赤くなるんですよ。少年のように赤くなって若返ってくる。深浦さんにはたくさん痛い目にあっています」
鈴木「棋士は勝ちになると、何か出てくるんでしょうか」
畠山「やはり、ホッとしますからね。どちらが勝ちかどうか分からないところを決断して進んで、自分が勝ちになったところが一番危ない。舞い上がってしまうといいますか」
深浦「畠山さんは手がしなりますよね」
畠山「僕は変わらないですよ」
深浦「しなっていますよ」
畠山「そうですか。深浦さんには将棋と酒で非常に痛い目にあっています」
鈴木「豊川先生はいかがですか」
豊川「すみません、二人の会話が面白くて。畠山さんも穏やかですけど、勝負師タイプですから。二人ともおじさんになっても、まだこの席でも勝負しているって、半分冗談ですけど、それくらい将棋指し魂ですね。驚いちゃうくらい、驚きマンモスです」

B507_2 鈴木「明日の戦型予想はいかがですか。第1局と第2局は矢倉、第3局は角換わりでした」
深浦「こういうのは早めに言った方がよくて、僕は矢倉だと予想しています。立会人として二人の熱戦を見守りたいと思います」
畠山「対抗するわけでないですが、角換わりかなと。お二人は前に指された戦型を繰り返すことがあるんです。第3局は羽生さんが角換わりだったので、明日は▲7六歩△8四歩に▲2六歩かなと」
豊川「私は無責任に横歩取りや意表の振り飛車か。急所でやることもありますから。角交換振り飛車、ナウい振り飛車があるんじゃないかなと思います。私は明日から高校の大会で大分の別府に行きますが、ネット中継を携帯でも見られますから楽しみです。環那さんは戦型予想は?」
鈴木「私も矢倉かなと思います。どうなるでしょうか。九州の対局はドラマが多いということで、第4局も楽しみですね」

B495
(文章書き起こし=銀杏 写真=牛蒡)