2013年5月

2013年5月29日 (水)

Kifu_24佐藤九段は長考の末に△1四角(図)と打った。局面を動かしにいく狙いを秘めた、意志の強い手だ。3筋の歩を取って歩切れを解消しようという手で、▲3七銀と受ければ、△3五歩▲同歩△4七角成と馬を作る狙いがある。そこで▲3四歩(A図)が反撃として利きそうに見えるが、これには後手も用意の順がある。
A_29A図から
△3四同銀▲5五角△3三桂▲9一角成△8二銀▲9二馬△3六歩でB図。
B_36ここで▲4八銀は△4六馬が飛車取りと△9一銀を見て厳しい手だ。
馬を作れれば後手としては不満がない。どう受けるべきか、先手も対策を練る必要がある。この手を見た行方八段は11時54分ごろには休憩に入れた。定刻は12時10分なので早い決断と言えるが、行方八段はそれだけ時間を使って考える必要がある局面と捉えている、と読み取ることもできる。行方八段が昼食休憩までに使った時間は40分。消費時間は▲行方1時間3分、△佐藤52分。昼食の注文は両者ともなし。対局は13時に再開する。

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(昼食休憩までの棋譜用紙。佐藤九段は△1四角に36分使った)

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(昼食休憩中、他棋戦対局中の糸谷哲郎六段が控室に。「はあー……すごい手ですね」とポツリ)

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(続いて中村修九段も来訪。「家を出たときは▲3六歩の局面だったんですが」)

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本局に佐藤九段が勝てば、七番勝負を戦うのは6度目になる。初めての挑戦は1990年7月のこと。このときのタイトル在位者は谷川浩司王位のほかは羽生善治竜王、中原誠名人(名人・王座・棋聖)、南芳一棋王、米長邦雄王将という顔ぶれだった。一方、行方八段が勝てばこちらはタイトル初挑戦となる。

Oui

(文)

Kifu_23行方八段が▲3六歩(図)と突いた局面で佐藤九段が時間を使っている。本局の変化は後手が金を持ち駒にしている点がほかにはない大きな特徴だ。この金は攻めにも受けにも使えるため、戦略的な価値が非常に大きい。反面陣形がまとめにくいため力がないと指しこなせないが、佐藤九段は剛腕で知られる棋士。こうした形はまったく苦にしないはずだ。このあとの後手の方針としては、△4三金~△5四金~△4二飛と、金を繰り出して中央を制圧するのがよく見られる順。守りが薄いので、その分攻勢のアドバンテージをとりにいく狙いだ。行方八段がどんな陣形で迎え撃つのかが序盤のポイントになるだろう。
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(文)