2023年3月12日 (日)

終局直後

Img_7113(勝った藤井聡太王将は、王将位初防衛となった)

□藤井王将のインタビュー
――△6四角(40手目)で前例を離れた。
 その前も変化はあって、本譜は少し危ない形になるが、際どい将棋になるかと思っていた。

――△7五同歩(44手目)に1時間を超える時間を費やした。難しい局面という認識だったか。
 こちらが壁銀の形で攻め合っているので、慎重に指さなければいけないと思っていた。

――先に角を手放す展開は、2日目にどう影響したか。
 △7四角(50手目)は仕方なく、そのあとの構想が難しかった。7四の角のラインを生かす形になればと考えていたが、具体的な組み合わせははっきりとわからないまま指していた。

――封じ手の局面(58手目△3三桂)の形勢判断は。
 △3三桂~△4五桂と跳ねて、7四の角を生かして攻めていく形を作れればと考えていた。

――△3六銀~△4五銀上(64手目~66手目)の踏み込みについて。
 △8四飛(62手目)と浮いたところなどで、すぐに△3七歩と攻めていく手があった。本譜は▲5六歩(65手目)とさせて、角打ちを消して攻めていくという構想だった。しかし、本譜のタイミングで▲2一角には気づいておらず、嫌な形にした。△4五同桂(70手目)の局面は、前につんのめってしまいそうだったので、自信はなかった。

――勝ちを意識したのは。
 △5六角(76手目)と出て角が働く形になり、寄せの形が見えてきた。

――王将位初防衛となった。これまでの6局を振り返って。
 得るものの多いシリーズだった。今後に生かしていけたら。

――羽生九段と初めてのタイトル戦を戦った。6局盤を挟んで得られた収穫は。
 8時間という長い持ち時間で指すことができて、羽生先生の強さや自分の課題を感じた。今シリーズは考えてもわからないという局面が多く、将棋の奥深さを感じた。盤上に没頭して指すことができた。

Img_7114(敗れた羽生善治九段)

■羽生九段のインタビュー
――羽生九段の主導で角換わり早繰り銀となった。40手目(△6四角)までは自身が経験のある形で、改めて採用してどうだったか。
 去年、公式戦で同じ形を指してみて、まだわからない部分があったのでもう一回やってみた。角銀を持ち駒にしてもう少し手があるかと思ったが、手を作るのが難しい将棋だった。桂頭のあたりを攻めていく筋を作りたかったが、なかなかいい組み合わせがなく、ちょっとずつ苦しくした。

――1日目の昼休み明け、1時間以上の長考で▲6六銀(45手目)と指した。2歩損もあったが、形勢判断は。
 あの場面は違う変化をやるか、ずっと悩んでいて、明確に成算を持てずに見送ったが、もしかするとよくなかったかもしれない。

――封じ手あたりの形勢判断は。
封じ手のところは、もう悪いと思っていた。その前に問題があったのではないか。

――2日目、攻めのターンが回ってこない展開だった。1日目の形勢判断を踏まえて、どのような組み立てを考えていたか。
 苦しい局面なので、どれだけ頑張れるかと考えていたが、やはり少しずつ苦しくなっていった。

――七番勝負は2勝4敗。6局を振り返って印象に残ったことは。
 いろいろやってみて、もう少し全体的に指し手の精度を上げないといけないと感じたシリーズだった。

――藤井王将と初めてのタイトル戦で6局戦ってみて、これまでのタイトル戦との違いや、印象に残ったことは。
いろいろな変化や読み筋がたくさん出てくるので、対局していて大変でもあるが、勉強になった。

――今後について。
自分自身の足りないところを改善して、また次に臨めたら。


Img_7120(終局直後の模様)