2025年5月22日 (木)

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佐々木八段が勝負手を放ちました。飛車取りを手抜いて△3二角打(100手目)は渾身の一手です。次に△7六角と銀を取る狙いがありますが、王手にならないため先手玉にも余裕があります。そのため、▲8一銀不成と飛車を取る手も十分に考えられます。先手にとって心強い要素は、好機に▲4四香の王手が利くこと。通常は△4三歩と受けて何事もないのですが、大事な角2枚の連係が切れてしまうため、怖くても△3三玉とかわして耐えるよりなさそうです。うまく手を組み合わることで、先手がリードを拡大できそうです。

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佐々木八段は飛車先の突き捨てを入れて△4七歩(86手目)と手筋の歩を放ちました。永瀬九段が態度を決める前に▲3四歩とたたくと、佐々木八段は△2四金!と強気の姿勢を示して一気に猛烈な攻め合いに突入します。以下▲4七角△4六香▲5五桂△4七香成▲6三桂成△同金▲4七金△5四角と進みました。

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駒割りは角桂と銀香の交換でやや後手の駒得ですが、後手は金銀の形が悪いうえにキズも多く、実戦的に大変です。図の△5四角は7筋の銀に狙いをつけながら、金にヒモをつけて▲7二銀の筋に備えています。攻防手です。

「棋の音道場」では、お酒とともに棋士のトークを楽しむ「キッシサカバ」というイベントを開催しています。今日はコミックエッセイ『山口恵梨子(えりりん)の女流棋士の日々』の特別コラボイベントとして、羽生善治九段と山口恵梨子女流三段の公開対談が行われていました。今回はソフトドリンクで乾杯。イベントの見学に訪れた勝又清和七段も飛び入り参加するなど、にぎやかな雰囲気で進行していました。

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両者の消費時間の差が広がっています。佐々木八段は△8六歩(84手目)に1時間13分使い、残り1時間を切りました。対局室では1から60まで数字が書かれた残り時間の早見表が出ています。永瀬九段はまだ3時間残していて余裕があります。有利な条件で終盤戦を迎えられそうです。

千駄ヶ谷の将棋会館は昨年に移転作業が始まり、年明けから対局が始まりました。「ヒューリック将棋会館千駄ヶ谷ビル」の1階部分が新会館になります。対局場、道場、ショップだけでなく、カフェも新設されました。「棋の音カフェ」は対局時の出前でも使われていて、店頭では対局者と同じメニューを楽しめます。月替わりで棋士の顔写真がプリントされる「棋士カプチーノ」はインパクト抜群。今月は豊川孝弘七段です。いつもと違ってスペシャルバージョンが用意されていました。

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2025052275永瀬九段が指した▲7六香(75手目)で前例を離れました。次に▲7四歩の突き出しを見せて△8四桂を催促している意味があります。実戦は△8四桂▲7四歩△7六桂▲同銀△7四銀と進行。消費時間は佐々木八段が1時間ほど多く使っていて、永瀬九段の研究通りに進んでいることがうかがえます。佐々木八段は初見で永瀬九段の事前研究に対抗しなければならないとすると、さらに消費時間の差が広がると予想されます。形勢は別にして、後手に苦労の多い展開になりそうです。