図の局面で千田四段は▲3五銀と引きました。「ひえー」と佐々木勇五段、「きたきた」と伊藤真五段。普通に指すなら▲3三銀成△同金上が思い浮かぶところです。攻めの銀と守りの銀の交換になり、手番も握れます。そのいずれも放棄する▲3五銀は意表の手。千田四段独自の感性がでた手といえるかもしれません。
「先手は一連の攻めで1歩損になりましたが、歩切れは解消できました。これは先手のポイントです。▲3五銀に△8四歩▲7八金△7二飛は今度こそ▲2四歩から銀交換をするかもしれません。▲8三銀の打ち込みがあります」と岡崎六段。4六銀・3七桂型(後手なので6四銀・7三桂型)でよくみる攻め形は使いにくいようです。岡崎六段は「後手の方針が難しい」と付け加えました。
第55期王位挑戦者決定戦
千田四段、残り1時間を切る
16時ごろの控室
千田四段が考慮中
木村八段は3一角を5三に上がりました。2筋に備えていないように見えますが、▲2四歩△同歩▲同銀には△2三歩があります。千田四段は▲3六歩(37手目)に20分考えましたが、ここでも時間を使いそうです。本局は2筋の攻防だけでなく、6九金の動向に注目です。最後まで6九金型で戦うのか。▲7八金と締まるにしても、どのタイミングで指すのか。
(牛蒡)
スピード化の時代
▲3五歩を見て岡崎六段は「スピード化の時代ですね。GPS新手を思い出します」と話しています。少し形は違いますが、この角銀の並びで▲3五歩は、第2回電王戦第5局の▲三浦弘行八段(現九段)-△GPS将棋戦をほうふつとさせます。△3五同歩に▲2六銀が新手筋として話題になりました。
「△3五同歩に▲同角もありますか。以下△5五歩▲同歩△5二飛▲4六銀△5五銀▲同銀△同飛▲4六角(参考1図)で後手は飛車を成れません。6九金型が生きています」(岡崎六段)
「ちなみに7八金型で上記の変化も定跡としてあります。▲4六角に△5九飛成▲7三角成△6四角▲同馬△同歩▲4八銀(参考2図)。これはこれで難しい。高橋王位、岡崎2級のころの将棋です」(岡崎六段)
29年前の王位戦
先後は違いますが、本局と似た形の将棋に、1985年7月の第26期王位戦第2局▲高橋道雄六段-△加藤一二三王位戦(段位と肩書きは当時)があります。参考情報として棋譜を紹介します。
第26期王位戦七番勝負第2局
昭和60年 7月30日 於・岐阜・下呂温泉・水明館
持ち時間 ▲六段 高橋 道雄
各9時間 △王位 加藤一二三
▲7六歩 △8四歩 ▲6八銀 △3四歩 ▲7七銀 △6二銀
▲4八銀 △4二銀 ▲7八金 △3二金 ▲6九玉 △4一玉
▲5六歩 △5四歩 ▲5八金 △5二金 ▲6六歩 △3三銀
▲7九角 △3一角 ▲6七金右△4四歩 ▲3六歩 △7四歩
▲6八角 △4三金右▲7九玉 △6四角 ▲3七銀 △3一玉
▲8八玉 △8五歩 ▲4六銀 △2二玉 ▲3七桂 △7三銀
▲5八飛 △5二飛 ▲2六歩 △8四銀 ▲1六歩 △7三桂
▲1五歩 △9四歩 ▲3八飛 △2四銀 ▲6五歩 △4二角
▲3五歩 △同 歩 ▲2五桂 △8二飛 ▲3五銀 △同 銀
▲同 角 △3四歩 ▲6八角 △7五歩 ▲3三歩 △同 金上
▲同 桂成△同 玉 ▲1四歩 △同 歩 ▲同 香 △同 香
▲1二銀 △3二銀 ▲2一銀不成△同 銀 ▲1三角成△1二香
▲2五桂 △3二玉 ▲3三歩 △同 金 ▲同 桂成△同 玉
▲4六馬 △4五銀 ▲6八馬 △7六歩 ▲同 銀 △7七歩
▲同 金寄△8六歩 ▲同 歩 △7五歩 ▲6七銀 △7六桂
▲同 金 △同 歩 ▲2五桂 △4三玉 ▲7四歩 △6五桂
▲7三歩成△5七金 ▲8二と △8七歩 ▲同 金 △6八金
▲同 飛 △7七角 ▲同 桂 △同 歩成▲同 金 △同 桂成
▲同 玉 △6五桂 ▲7八玉 △7七金 ▲8九玉 △6八金
▲6二飛 △7九飛 ▲9八玉
まで、117手で高橋 道雄六段の勝ち。
(消費時間=▲7時間49分、△8時間54分)