2025年7月

2025年7月30日 (水)

Dsc_4977(感想戦の前に大盤会場へ。本局を振り返った)

Dsc_4997藤井王位「本局は序盤から手の組み合わせ方が非常に難しい将棋でした。▲4六銀(41手目)に△6五歩と仕掛けていけるかどうかが一つのポイントではあったのですが、その変化は自信が持てないような気がして、△3四歩と受けることになりました。その後は攻めさせられるような展開になってしまって、中盤戦は自信のない局面が多かったのかなと思います。△3二玉(68手目)のあたりから少しずつ立て直すことができた気がします」

Dsc_5027永瀬九段「昨日の段階で△5五歩(52手目)が発見できていなくて長考になりました。その後に▲5五銀(63手目)からの組み立てのつもりだったのですけど、△4五銀(64手目)の局面で具体的に手が発見できなかったので、△4五銀を警戒して組み立てるべきだったのかなと思います」

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Dsc_4948(終局直後の様子)

Dsc_4968(藤井聡太王位は開幕3連勝。防衛まであと1勝)

――対局1日目の感想。

藤井 似たような形は経験があったんですけど、本譜の展開そのものは経験がなくて。△8六歩と突き捨ててから角を引いて、▲4六銀(41手目)に当初は△6五歩と仕掛けるつもりでしたが、あらためて考えてみると、あまり自信が持てない気がして。本譜△3四歩と受けるようでは8筋の突き捨てをとがめられそうな形で、ちょっと自信のない展開になってしまったかなと思いました。

――△5五歩(52手目)を突いたあたりは。

藤井 ▲6六銀(51手目)には△6四歩とかが自然ですけど、受け止められて歩が足りないかなと思ったので。△5五歩も攻めとしては軽いので、少し苦しめかなと思ったんですけど、勝負手のようなイメージでやっていました。

――▲5五銀△4五銀(63-64手目)のあたりの駆け引きについて。

藤井 ▲5五銀に第一感は△同銀▲同角でしたが、陣形をまとめるのが難しい気もしたので。△4五銀も働きがあまりよくないですけど、△3二玉と整えて、どこかで反撃のタイミングをうかがえればと思っていました。

――△5七歩成(76手目)のあたりは。

藤井 こちらの3二玉の形は2三からの逃げ道があって、攻め合いのときに生かせそうな展開になったので、そのあたりは楽しみが出てきているのかなと思いました。△2七銀打(82手目)で攻め合いになって、少しいけていそうな感じはしました。

――本局全体について。

藤井 序中盤の手の組み合わせが非常に難しくて、考えていても分からないことが多かったので、これからしっかりと振り返りたいと思います。

――次局に向けて。

藤井 第4局は少しだけ間が空くので、しっかりとよい状態で迎えられるように取り組みたいと思います。

Dsc_4956(挑戦者の永瀬拓矢九段は追い込まれた)

――対局1日目の感想。

永瀬 互いに構想力が問われる将棋なのかなと思いました。

――2日目午前の攻防について。

永瀬 ▲5五銀(63手目)の組み立てではあったので、昼休前に指してしまいましたけど、△4五銀と出られてみると読みが前に進まなかったので、局面としておかしかったのかもしれないなと思います。

――▲5三歩(71手目)のあたりの手ごたえは。

永瀬 どうやれば難しいのか発見できなかったので。8八銀の壁銀が残っていて、だいぶ厳しいのかなと思いました。

――△5七歩成(76手目)のあたりは。

永瀬 全然ダメなのかと思ったんですけど。楽しみがない展開になってしまったのかなと思います。

――本局全体について。

永瀬 矢倉対雁木で、先手が主張できるか難しいかなと思ったんですけど、中盤の組み立てがよくなかった気がするので、そこらへんは改善点が多いのかなと思います。

――次局に向けて。

永瀬 しっかり準備をしたいと思います。

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▲永瀬-△藤井聡戦は88手で藤井王位が勝ちました。終局時刻は18時6分。消費時間は▲永瀬7時間53分、△藤井7時間28分。藤井王位はシリーズ成績を3連勝とし、防衛まであと1勝としました。第4局は8月19、20日(火・水)の両日に福岡県宗像市「宗像ユリックス」で行われます。

250730_082△2七銀打(図)は先手玉から遠い場所を攻めているようですが、先手にとって2八飛は7八金に次ぐ重要な守り駒ですから、この飛車を取ってしまうのが寄せの近道です。後手は自玉の守りも深く、▲5三金から▲5四角とされても△2三玉から△1二玉まで逃げ込めます。後手は攻防ともに死角なし、勝勢を築きました。

250730_064_21図から▲3七角△6六歩▲同金△3二玉▲6四銀△6五桂▲5三歩△3六銀▲4八角△5六歩と進みました(2図)。

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上記手順のうち、△3二玉以外は後手の駒が前進する手です。このままだと後手が中央を制圧する可能性が高く、中央を制圧すれば、壁形の先手玉はひとたまりもありません。△5七歩成~△4八と~△4七銀成~△4六角の王手飛車取りまで見えています。藤井王位が的確な指し回しでリードを広げました。阿部健七段も後手優勢と判断しています。2図で▲5六同金には△4七銀不成が両取りで激痛です。

先手は上記手順中で△6六歩に▲同銀から▲8七銀、あるいは△3二玉に▲8七銀としたかったのですが、▲8七銀には△8五歩が厳しかったのだと思われます。壁銀を立て直すチャンスがありませんでした。

Dsc_4944(阿部健七段の検討では、後手の勝ち筋がいくつも示されている)