攻めに専念できる形 渡辺九段が攻め、斎藤八段が受ける構図がはっきりしました。竜に働きかけた▲8七歩(69手目)が周到な下準備で、△同竜は▲8九香の串刺しが決まります。本譜は△8三竜と引かせて▲3四香と着実な攻めに出ました。 重い感じもありますが、▲3三香成△同金▲4五桂といった要領で自陣の桂が活用できれば攻めが切れる心配も少なくなります。竜を引かせて先手玉がより安全になった効果で攻めに専念しやすくなりました。渡辺九段ペースです。斎藤八段としては受け一方では視界が開けないため、どこかで攻め合いに出たいところです。
意表の決戦 斎藤八段が動きを見せて渡辺九段も呼応し、徐々に開戦の気配が漂ってきました。じわじわと戦線を押し上げる展開が予想されていましたが、渡辺九段はズバッと▲5四飛(57手目)! 意表の決戦です。 意表というのは、少し前に▲2七銀(51手目)と上がったために、飛車を渡すと△2九飛と打たれる隙が生じているからです。しかし、△5四同歩▲4四角△2九飛▲3八銀△1九飛成▲2九金という順は、後手にとって容易ではありません。玉の守りを固めて、細くても攻めをつなげるのは渡辺九段好みの展開といえます。
我慢比べ 本格的な戦いに入らないまま、両者の残り時間が少なくなっています。斎藤八段は残り1時間を切り、渡辺九段も残り1時間が近づいています。控室を訪れた伊藤真吾六段は「マイナスの手が多い。我慢比べですね」と話しました。いい手を探すのではなく、悪い手を指さないようにする作業は神経を使います。
一手一手が重い 両者とも時間を使って一手一手が重い展開になっています。中住まいで低く構えた先手陣と、銀冠を築いて力強く金銀を繰り出している後手陣が対照的。まとめるのに苦労するのはどちらかといえば後手で、斎藤八段が多く時間を使っている状況からも苦心がうかがえるようです。