無料インターネットテレビ「AbemaTV」の将棋チャンネルでは、現地対局室の様子にあわせ、プロ棋士による解説をライブストリーミング形式で配信しております。1日目の解説は伊藤真吾五段と今泉健司四段、聞き手は室谷由紀女流二段と貞升南女流初段が務めます。下記のリンク先からご覧ください。
【AbemaTV】 第58期王位戦七番勝負第1局 1日目
無料インターネットテレビ「AbemaTV」の将棋チャンネルでは、現地対局室の様子にあわせ、プロ棋士による解説をライブストリーミング形式で配信しております。1日目の解説は伊藤真吾五段と今泉健司四段、聞き手は室谷由紀女流二段と貞升南女流初段が務めます。下記のリンク先からご覧ください。
【AbemaTV】 第58期王位戦七番勝負第1局 1日目
湯の山温泉グリーンホテルでは、対局2日目の7月6日(木)に現地大盤解説会が行われます。※対局1日目の現地大盤解説はありません。ご注意ください。
石田和雄九段、杉本昌隆七段、甲斐智美女流五段による明日の展望予想です。
石田和:皆さん、明日からいよいよ夏の王位戦が始まります。第1局が中日新聞のエリアであります、この三重県菰野町の開戦となりますね。杉本君がもう、こちらで(新聞やテレビに)しょっちゅう出て……。
杉本昌:何を言うんですか。私、昨日ぐらいに石田先生の喜んでいる顔をよく見たような気がするのですが。
石田和:はっはっは、ありがとうございます。王位戦はすごい。王位戦のことを言わな、いけないんだけど。だけど! やはり地元から出たスーパーヒーロー藤井君(杉本昌七段門下の藤井聡太四段)がね、いやぁもう、天下を湧かした、手早く日本中に藤井フィーバーを起こした、将棋界でこんなことは空前絶後であります! おそらく絶後といってもいいと思います。そのお師匠さんだからね。ええ、しかし、私んとこの勇気君(石田和九段門下の佐々木勇気五段)が負かしたんだから。
杉本昌:非常に厳しい将棋を教えていただきまして。
石田和:新聞も連日のように採り上げていただいて。私もあえてここで述べさせていただきましたが、明日の決戦について。杉本さんは菅井君をどう思いますか?
杉本昌:挑戦者は関西の菅井さんで、振り飛車を得意にされていまして、ここ近年の挑戦者では珍しいです。いまの将棋界は飛車を縦に使う居飛車が全盛なんですね。飛車を横に動かす振り飛車という戦法は、その昔、大山(康晴)十五世名人が得意にされていましたが、最近では本当に少なくなってしまった。私も振り飛車党ではありますが、振り飛車で勝つ人は少ないですね。そんななか、菅井七段は振り飛車で勝ちまくって挑戦者になりました。羽生王位としても対策をどう考えているか、非常に興味があります。1週間ぐらい前、羽生王位が別のタイトル戦で自ら飛車を振ったんですね。これは極めて珍しいことですが、いまにして思うと明日の菅井対策なのかなと思いました。それだけ、菅井将棋を警戒しているのではないかと思っています。
石田和:甲斐さんは振り飛車党でなかったのですか?
甲斐:はい、振り飛車党です。
石田和:本当に杉本七段が言っているように、振り飛車党は少なくなりましたもんね。振り飛車のほうが損なのか、そうではないですね? 菅井君が挑戦者になったから、同じ振り飛車党の甲斐さんとしてはどう思いますか?
甲斐:私も三間飛車になることが多くて、菅井さんの書かれた『菅井ノート』をよく読んで普段から勉強しています。菅井七段は憧れの棋士という面がありまして、今回、フレッシュな顔合わせになったと思います。絶対王者の羽生先生にどう振り飛車でぶつかっていくのかが、とても楽しみなところです。
石田和:杉本さんね、同じ振り飛車党として質問するんだけど、菅井さんの振り飛車は人とちょっと違うんですか?
杉本昌:ええ、そうですね。彼が三段の頃から将棋を見たことがありまして、何局か指したことがあるのですが、非常によく研究して、序盤が精密です。そして、ねじり合いにめっぽう強いですね。駒がぶつかってごちゃごちゃしたときに手を作るので、とても手ごわい。同タイプの人はほとんどいませんね。
石田和:久保さん(利明王将)の振り飛車とはちょっと違う?
杉本昌:久保さんのは軽快な感じですよね。菅井七段はズバッと斬るよりは、盤面全体で、たたき潰すみたいな感じの力強さがある……。
石田和:力強さがある?
杉本昌:ええ、非常に。大体の棋士はどうしても個性が少ない。皆、いい手が指されると真似する傾向があるのですが、菅井さんの将棋はまったく人真似をしないという。
石田和:あぁ、独特の将棋だね。
杉本昌:菅井七段の指した手を皆「ほう、こんな手があったんだな」と真似しているんです。
石田和:はぁあ、なるほどねぇ……。
杉本昌:ですから、今回の対局、その後は先後が決まっていますから、何か菅井流の新手が出る可能性は高いと思います。
石田和:はぁあ、なるほどねぇ。甲斐さん、振り飛車もやるし、居飛車もやる……、んじゃない?
甲斐:はい、居飛車もやります。
石田和:いまは居飛車穴熊のように、かたーい囲いでやってくるから、それで振り飛車が少なくなった1つの原因があると思うんですね。
甲斐:そうですね。根本的に穴熊は最強の囲いで、毎回穴熊でこられるのは嫌なものですよね。
石田和:(残り時間が少なくなって)ズバッともう、このあと大まかにいきましょう。
杉本昌:これだけ振り飛車、振り飛車と言っておいて、意外と菅井七段って何でも指すので。裏切って、居飛車ということもないわけではない。
石田和:ともかく、皆さんの知る羽生さんに対して、どういう戦いを菅井君がして、どこまで肉薄するか。第1局目が大注目なんだけどね、どういう戦型になるかね?
杉本昌:やはり振り飛車をするでしょうし、8時間の将棋が不安って本人も言われていましたね。恐らく8時間の将棋を仲間と練習でやろうとしたんですね。それは嫌がりますよ。
石田和:いないいない。8時間はいないよ。
杉本昌:(合わせて)16時間ですからね。
石田和:30秒将棋なら。2日制っていうのは初めてだから。
杉本昌:それぐらい意識していたということでしょうね。
石田和:初挑戦でものすごくドキドキしているけど、そこがいちばん不安なとこじゃないのかな、と思います。羽生さんと本当に異色の菅井さんね、対局が明日から始まりますので、皆様大盤解説会ふたりでやってくださいますから。
杉本昌:大盤解説会は明後日ですね。私と甲斐女流五段とで明後日の14時から始まります。
石田和:たまに私も出るけど。
杉本昌:そうですね、お願いします。通常、聞き手は女流の段の低い人が多いんですね。甲斐女流五段、強いのでやりにくいのですが、ハイレベルの解説会に。
石田和:解説会も楽しみにしてください。それでは、またこちらにも足を運んでください。どうも、よろしくお願いしまぁす。
一同:ありがとうございました。
【閉会の辞】石川保典・中日新聞社三重総局長
「皆さまのお陰で前夜祭、盛大に開催することができました。改めて御礼申し上げます。2年前に愛知県の蒲郡で第56期王位戦の第1局が行われまして、そのときにも前夜祭に参加したのですが、羽生王位とツーショット写真を撮りまして、それをいまでも時折知人に見せびらかしています。そんな単なるミーハーの羽生ファンですが、最近は藤井(聡太)四段の活躍もあって連日のように新聞やテレビで将棋の話題が報道され、そういう情報に接するに連れて将棋への興味がどんどん湧いてきています。明日からの第1局、皆さまと一緒に熱戦を期待したいと思います。どうもありがとうございました」
◆羽生善治王位の挨拶◆
「改めまして、皆さん、こんばんは。第58期王位戦第1局の前夜祭をこのように盛大に開催していただきまして、まことにありがとうございます。今日、台風が接近してきた中にも関わらず、本当にたくさんの皆様にご参加いただいたことをうれしく思っております。王位戦は北は北海道から、南は九州まで全国各地を転戦していきますが、今年は三重県菰野町湯の山温泉から開幕となりました。最近、若い世代の人たちとの対局が非常に増えていますが、それを刺激としながら私自身も前に進んでいけたらいいなと思っています。最近は藤井さん(聡太四段)の活躍もあって、将棋をあまり知らない人たちにも興味を持ってもらえる機会が増えたと思っております。明後日はこちらで大盤解説会も開催されますので、将棋の持っている面白さや泥臭さ、そういったものを対局を通じて伝えていけたらいいなとも考えています。この王位戦を主催していただいております、中日新聞社様、地元の菰野町、湯の山温泉の皆様、会場をご提供いただいておりますグリーンホテルの関係者の皆様にはお世話になります。一生懸命頑張りますので、どうぞよろしくお願いいたします」
◆菅井竜也七段の挨拶◆
「皆様こんばんは、挑戦者の菅井竜也です。本日はたくさんの方にお越しいただきまして、ありがとうございます。本当に緊張していて、話すことも忘れてしまっているのですが……。今回、初めての挑戦で分からないこともいっぱいあるのですが、持ち時間が8時間と長いので、それがまず僕にとっていちばん不安なところです。本当はもっと練習をしたく、いろいろな方にお願いしたのですが、皆に断られました。なかなか8時間の対局というのはできなかったのですが、1局目から自分なりに一生懸命やっていくしかないと思っております。羽生先生とできるということは自分の将棋人生にとって幸せなことだと思っているので、精一杯2日間頑張りたいと思います。どうぞよろしくお願いします。ありがとうございました」
(去り際、会場にいたファンから「菅井、頑張れ!」と大きな声援がかかった)
(書き起こし:飛龍記者/撮影:夏芽)
乾杯のあとは、しばらく歓談の時間。出演棋士たちが地元の方々と交流を深めました。
【歓迎の言葉】大森優司・湯の山温泉グリーンホテル取締役社長
「皆さま、いらっしゃいませ。ようこそお越しいただきました。第58期王位戦第1局ということで、とても名誉ある対局を私どもグリーンホテルで開催いたします。皆さん多分ご存知だと思いますが、ここは天然温泉であります。『温泉とは何ぞや?』ということですが、基本的に言いますと温泉は25度以上あればすべて温泉。もうひとつ19種類の成分のうち、ひとつでも含んでいれば温泉と名乗ることができます。日本全国にたくさんの温泉がありますが、ここはありがたいことに2本源泉を引いておりまして、3号線が46度、4号線が39度。いちばん困るのはこの夏場で、46度まで上がるとなかなか冷めないんですね。日帰り入浴で来られた方から『温度が高い』と言われることもあります。まだ水道の水が1滴も入っていません。100パーセント、上がり湯もすべて温泉ですから、是非、羽生先生も菅井先生も入ってください。泉質はアルカリの単純温泉で、数ある温泉の中でも本当に温泉と言える温泉だと思います。最後になりますが、関係各位の皆さまのご尽力に感謝し、羽生先生と菅井先生には頑張っていただきたいと思います」