1日目の午後、飯島七段に第1局~第6局のポイントを振り返っていただきました。なお、飯島七段は七番勝負の展望を阿久津主税八段とともに分析しています。王位戦中継サイトの特集からご覧になれますので、そちらも合わせてお楽しみください。
◆第1局(矢倉、△木村勝ち)
第1局はtwitter解説でして、2日間にわたって解説させていただきました。対局中は羽生王位の▲3七銀と繰り替えた手がうまい工夫に見えまして、手損でも後手が早めに△9五歩▲同歩△同香と交換したのをとがめているのかと思っていました。先手はいつでも▲9六歩から香を補充できるので、攻めがかなり続きそうだからですね。ところが、この将棋は木村八段が押し切ります。私が驚いたのは▲2五歩の継ぎ歩に△同歩と応じたところです。
△2八角成と、普通は目標になりそうな角を避難させたいじゃないですか。それを堂々と歩を取って、やってきなさいと。この手は木村八段らしい強い手ですよね。結果的に先手は▲9六歩から香を補充する手を入れることができませんでした。終盤で△4二飛からの2枚飛車も実現して、受けの木村八段が羽生王位を攻め倒しています。
投了数手前の△7一金も、木村八段らしい決め手。大胆な手を織り込みながらも勝つ、インパクトのある将棋でした。
◆第2局(矢倉、△羽生勝ち)
これは途中まで木村八段が押していましたが、中盤で攻め急ぎが出て羽生王位が逆転勝ちしました。
ここで▲4一と△同金▲4五桂としましたが、▲7三歩成が正着だったようです。▲6三とから銀を取りにいくのが間に合うんですね。▲4五桂以下、羽生王位がうまく攻めをかわしました。
ただ、木村先生がうまく指していた将棋でした。結果よりも内容の印象の方が大きいです。
◆第3局(角換わり、持将棋)
これも押したり引いたりの大熱戦でした。途中は先手の攻めがつながらないかと思っていたんですが、△3六馬に▲4六歩△同馬▲3三歩は見えにくいですね。▲6三歩成を軸にして組み立てた、歩の妙技です。△6三歩の局面も先手大変かなと思ったんですけど、そこから2枚飛車をさばきました。
終了図を見ると、点数だけでなく駒の配置も絶妙のバランスで持将棋になったんだなとわかりますね。持ち味は両者出ていましたが、この将棋も若干木村ペースだった思います。流れは挑戦者で前半戦を終えました。
◆第4局(矢倉、△羽生勝ち)
ここからですね、羽生王位が巻き返してこられるのは。△6四歩がびっくりの工夫でした。先手が攻めてこようとしているのに、けん制している角の利きを止めたですからね。木村八段もつぎの▲2五桂に1時間9分考えていますし、やはり驚かれたと思います。
▲5六金に△4六角▲同金△5七銀。これで攻めが続くと見たのも凄かった。相手は「千駄ヶ谷の受け師」ですから、なおさらです。
◆第5局(角換わり、▲羽生勝ち)
△7五歩は若手で注目されています。最新形です。
▲8七金と受けたのが意外でしたが、▲3七馬に△3五銀▲3九香と進むと先手優勢になっています。どうしてこうなったのか、後手がどこで変化すれば良かったのか。よくわかりません。この将棋は、木村八段が力を発揮する前に差がついてしまいました。
◆第6局(角換わり、▲木村勝ち)
この将棋は陣屋で勉強させていただきました。途中は第3局のように持将棋になる可能性もありましたね。▲4二銀に、△2一桂ではなく△4一桂と打てば後手が勝ちでした。細かいですが、2一へ逃げられるスペースを残しておく必要があったんですね。ですが、その前は後手が良かったのかと言われるとなんとも……。△3七歩成で△3四玉もどうなっていたんでしょう。仕掛けのあたりの攻防も結論不明です。
◆まとめ
第1局~第3局は挑戦者ペース、そこから王位が力を出されて木村八段をカド番に追い込んだという流れだと思います。今日は角換わりだと思っていたんですが、矢倉になりましたよね。実は第1局と第2局のイメージが強くて、王位は矢倉じゃなくて角換わりを選ぶと思っていたんですよ。でも逆に矢倉を選ぶのは羽生王位らしいといいますか、ええ。第7局も激戦になるのは間違いないと思います。
(紋蛇)