2014年9月

2014年9月25日 (木)

Dsc_7389 (封じ手用紙)

Dsc_7393(赤いペンで駒の動きを示すのが慣例)


なお、この封じ手用紙は、現地の大盤解説会のお楽しみ抽選会景品になります。

現地大盤解説会の情報は下記の通りです。東京・将棋会館、関西将棋会館の大盤解説会の情報は、こちらをご覧ください。

◆現地

【日時】   9月25日(木)14時~終局まで(休憩あり) 受付は13時30分
【場所】   陣屋「竹河の間」
【解説】   飯島栄治七段
【入場料】  2,000円(コーヒー付)
【問い合わせ】 陣屋(TEL:0463-77-1300)
 ※終局後にサイン色紙や書籍、ペア入浴券、陣屋でのお食事の割引券などが当たるお楽しみ抽選会あり。

http://www.shogi.or.jp/topics/2014/06/55-1.html

(紋蛇)

Dsc_7357 (記録係の川崎三段の声に従って、1日目の手順が並べられる)

Dsc_7360

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Dsc_7372 (1日目は羽生王位が▲3五歩と先攻)

Dsc_7376 (△3七銀で封じ手の局面へ。攻め駒を責めるのは木村八段の得意技だ)

Dsc_7377 (立会人の石田和雄九段が封じ手を開封する)

Dsc_7379 (封じ手は▲1五香。2日目が始まった)

Dsc_7381 (▲1五香は予想されていなかった手。羽生王位は飛車を見捨てる激しい手を選んだ)

Dsc_7383

Dsc_7384

(紋蛇)

第7局は羽生王位が矢倉を選びました。午前中はスローペースでしたが、午後に入って戦いが始まります。前例も多いなか、先に工夫を見せたのは羽生王位です。

20140924akimurahabu60ここで▲1四歩と垂らしました。前例が多いのは▲1三歩(8局)で、▲1四歩は1局のみ(結果は後手勝ち)です。

20141021ahabukimura612歩を打って端を攻めるので同じようですが、意味合いは大きく異なります。それぞれ△3七銀と打った局面から比較してみましょう。

20141021ahabukimura622まずは左図(▲1三歩△3七銀)の局面から。△3七銀以下、▲6八飛△2六銀成と進むのが一般的です。

20141021ahabukimura1338 飛車を追い払って自玉を安全にし、攻め駒を責める。図を見ればわかるとおり、先手は桂取りが受けにくいです。すべての前例が▲1四銀と打っており、銀で桂にヒモをつけています。それは「先手は桂をさばきにくい」という弱点を抱えていることが現れていると言ってもいいでしょう。

では、本局の▲1四歩の形はどうでしょうか。△3七銀(封じ手の局面)をもう一度見てみましょう。

20140924ahabukimura62

△3七銀以下、▲6八飛△2六銀成と桂を責められても、先手は▲1三歩成や▲1三桂成でさばけます。つまり、▲1三歩の形よりも、▲1四歩の形のほうが2五桂は負担になりにくい。そして、▲1四歩の形は攻め駒を責めようとする△3七銀を空振りにさせることができる可能性を秘めていることを意味します。▲1三歩と▲1四歩はわずか1マスの違いですが、局面の性質を大きく変えているのです。

さて、問題の封じ手予想ですが、▲1三歩成が人気でした。

20141021ahabukimurafuujite「飛車も逃げずに、もっとスムーズに攻めよう」という手です。端から駒をさばけば攻勢をしばらく取れるため、これが自然ではないかと予想されました。

駒をさばいて局面の流れを早くすればするほど、先手は△3七銀を空振りにさせることができる可能性が高まります。そうなれば先手が優勢です。逆に、後手は手番がまわれば手駒をいかして厳しく反撃できます。先手の攻めをうまく凌げば楽しみが多いため、辛抱しがいのある将棋だと言えるでしょう。

羽生王位がスピードをコントロールしてうまく攻めるのか。それとも木村八段が受けの妙技を見せるのか。両者の持ち味が存分に出そうな展開です。ぜひ2日目もご覧ください。

(紋蛇)

2014年9月24日 (水)

1日目の午後、飯島七段に第1局~第6局のポイントを振り返っていただきました。なお、飯島七段は七番勝負の展望を阿久津主税八段とともに分析しています。王位戦中継サイトの特集からご覧になれますので、そちらも合わせてお楽しみください。

第1局(矢倉、△木村勝ち)

20140925ahabukimura1第1局はtwitter解説でして、2日間にわたって解説させていただきました。対局中は羽生王位の▲3七銀と繰り替えた手がうまい工夫に見えまして、手損でも後手が早めに△9五歩▲同歩△同香と交換したのをとがめているのかと思っていました。先手はいつでも▲9六歩から香を補充できるので、攻めがかなり続きそうだからですね。ところが、この将棋は木村八段が押し切ります。私が驚いたのは▲2五歩の継ぎ歩に△同歩と応じたところです。

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△2八角成と、普通は目標になりそうな角を避難させたいじゃないですか。それを堂々と歩を取って、やってきなさいと。この手は木村八段らしい強い手ですよね。結果的に先手は▲9六歩から香を補充する手を入れることができませんでした。終盤で△4二飛からの2枚飛車も実現して、受けの木村八段が羽生王位を攻め倒しています。

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投了数手前の△7一金も、木村八段らしい決め手。大胆な手を織り込みながらも勝つ、インパクトのある将棋でした。

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◆第2局(矢倉、△羽生勝ち)

これは途中まで木村八段が押していましたが、中盤で攻め急ぎが出て羽生王位が逆転勝ちしました。

20140925a02392ここで▲4一と△同金▲4五桂としましたが、▲7三歩成が正着だったようです。▲6三とから銀を取りにいくのが間に合うんですね。▲4五桂以下、羽生王位がうまく攻めをかわしました。

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ただ、木村先生がうまく指していた将棋でした。結果よりも内容の印象の方が大きいです。

◆第3局(角換わり、持将棋)

20140925ahabukimura02458これも押したり引いたりの大熱戦でした。途中は先手の攻めがつながらないかと思っていたんですが、△3六馬に▲4六歩△同馬▲3三歩は見えにくいですね。▲6三歩成を軸にして組み立てた、歩の妙技です。△6三歩の局面も先手大変かなと思ったんですけど、そこから2枚飛車をさばきました。

20140925a024676終了図を見ると、点数だけでなく駒の配置も絶妙のバランスで持将棋になったんだなとわかりますね。持ち味は両者出ていましたが、この将棋も若干木村ペースだった思います。流れは挑戦者で前半戦を終えました。

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第4局(矢倉、△羽生勝ち)

20140925a0254kimurahabuここからですね、羽生王位が巻き返してこられるのは。△6四歩がびっくりの工夫でした。先手が攻めてこようとしているのに、けん制している角の利きを止めたですからね。木村八段もつぎの▲2五桂に1時間9分考えていますし、やはり驚かれたと思います。

20140925a025571▲5六金に△4六角▲同金△5七銀。これで攻めが続くと見たのも凄かった。相手は「千駄ヶ谷の受け師」ですから、なおさらです。

第5局(角換わり、▲羽生勝ち)

20140925a48habukimura300△7五歩は若手で注目されています。最新形です。

20140925a030251▲8七金と受けたのが意外でしたが、▲3七馬に△3五銀▲3九香と進むと先手優勢になっています。どうしてこうなったのか、後手がどこで変化すれば良かったのか。よくわかりません。この将棋は、木村八段が力を発揮する前に差がついてしまいました。

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◆第6局(角換わり、▲木村勝ち)

20140925akimurahabu0306この将棋は陣屋で勉強させていただきました。途中は第3局のように持将棋になる可能性もありましたね。▲4二銀に、△2一桂ではなく△4一桂と打てば後手が勝ちでした。細かいですが、2一へ逃げられるスペースを残しておく必要があったんですね。ですが、その前は後手が良かったのかと言われるとなんとも……。△3七歩成で△3四玉もどうなっていたんでしょう。仕掛けのあたりの攻防も結論不明です。

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◆まとめ
第1局~第3局は挑戦者ペース、そこから王位が力を出されて木村八段をカド番に追い込んだという流れだと思います。今日は角換わりだと思っていたんですが、矢倉になりましたよね。実は第1局と第2局のイメージが強くて、王位は矢倉じゃなくて角換わりを選ぶと思っていたんですよ。でも逆に矢倉を選ぶのは羽生王位らしいといいますか、ええ。第7局も激戦になるのは間違いないと思います。

(紋蛇)