(継ぎ盤で関係者たちに解説する谷川十七世名人)
新聞解説を務める谷川十七世名人が来館しています。
ここまでの進行について振り返っていただきました。
「18手目△4三金が少し珍しい手で、22手目△5四金と出ていくのが思いきった手段です。これが有力だというのは事前研究でしょう。△5四金に対して本譜のように▲6六歩と突けば、そこから十数手は予測できる進行です。以下、▲金△角交換になるならば後手まずまずでしょう」
「ただ、58手目△4二歩はどうだったか。これで先手に手がないのであればよいですが、実戦は63手目▲8二金と攻められています。65手目▲8一金の局面で後手が手を止めていますが、△4二歩のところは手が広かったので、そちらで時間を使うほうが自然に思えます。なのでいまは苦しい長考をしているのかもしれませんね」
実戦は100分超えの大長考で、△9三香と辛抱しています。
(虹)
豊島九段は相手の飛車を追い回し、いまの駒割りは▲金桂△角の交換になっています。9一香も取れるため、このままいけば先手が駒得を主張できそうです。陣形も先手のほうがよい形をしています。
しかし金はすでに盤上に手放しており、香を取ったあとは再利用が難しいところ。また桂と香を入手したあと、それで後手陣を崩そうという速い攻めもなかなか見えにくいです。
そして現局面では△2七角(変化図)が大橋六段にとって感触のよい一着となるかもしれません。
先手は飛車の逃げ場が悩ましく、(1)▲6五飛ではあまりにも窮屈です。(2)▲4六飛のほうが飛車は使いやすいですが、横利きがなくなるため7筋に攻め駒を集められてしまうでしょう。そのあと後手はどこかで△6四歩と突けば、遠く8一金に当てつつ、先手陣の上部圧迫、7三飛が中央の守りにも利く、など続けて味のよい手が指せそうです。
14時55分、大橋六段が30分以上の熟考に沈んでいます。
7七にいた角を追われ、豊島九段は引くのではなく端にのぞきました。次に▲7三歩と打てば7五金のヒモが途切れ、3五飛の横利きが生きてきます。実戦は△7四飛でその筋を回避しましたが、いつでも▲6二角成△同玉▲8三銀から後手陣右辺を荒らすことができるようになりました。
時刻は11時20分。あれから数手進んで、大橋六段が角切りを催促したところです。または▲8四角△同飛▲7五飛という手段もあるでしょう。午前中から激しい戦いに突入するかもしれません。
(対局開始前、記録係の手元を確認する豊島九段)
(虹)