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第61期王座戦五番勝負第4局

2013年10月 8日 (火)

重いが確実な手

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羽生王座は△4六歩~△4七銀(図)と上から押さえつけて金を攻めた。検討にあがっていた△6六歩▲同歩△6七歩に比べて玉から遠い金を攻めるだけに重く感じる手だが、その反面で確実に戦果をあげられる手でもある。後手は金を手に入れると受けやすくなる点も見逃せない。たとえば▲4七同金△同歩成▲1二銀と進んだときに△2二金打という受けが利く。

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(大盤解説会で、深浦九段は「さっき挑戦者よしと言いましたが保留させてください。おかしいなあ」と首をかしげていた)

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羽生王座の選択は

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20時9分、中村六段は▲5六歩(図)と突いた。好位置にいる角を追った手だが、玉のコビンが開いたのは気になるところ。大盤解説会では△6四角と引き、▲1二銀に△4六銀と反撃してどうかと言われていた。以下▲2三銀成には△4七銀不成▲3二成銀△同玉のとき、思いのほか厳しい手がないとのこと。一方、控室では△7七角成と切られて嫌だ、と言われていた。以下▲同桂に△6六歩▲同歩△6七歩と垂らされて、とにかく先手玉が薄い。寄せに直結するだけに、切ってよしなら話は早い。羽生王座はどう指すのだろうか。
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苛烈な攻め合い

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羽生王座が選んだのは△5五銀直(図)の攻め。次には△4六銀、もしくは△5六銀▲同歩△4六銀と角を使って攻めていく。先手からも▲5五同銀△同角に▲1二歩や▲1二銀といった攻めがあるため、後手もただではすまない。激しい攻め合いになることが予想される。大盤解説の深浦九段は、▲5五同銀△同角と進めたあとの△8五桂を気にしていた。「将棋は難しいですねえ」とため息をつく。
19時35分、中村六段が手を止めている。その表情が険しい。

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東京・将棋会館の解説会

東京・将棋会館では19時から大盤解説が始まっている。
解説は阿久津主税七段、聞き手は甲斐智美女流王位。
夕食休憩の局面で、阿久津七段は「先手ペースに見えます」と話していた。

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夜戦へ

19時、対局再開。羽生王座はすぐには指す気配がない。

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夕食休憩に入る

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18時、▲2六飛(図)の局面で夕食休憩に入った。夕食の注文は羽生王座がおにぎりセット(おかか、鮭、昆布)、中村六段が親子丼。飲み物は両者ともグレープジュース。対局は19時に再開される。

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※対局者と同じメニューを注文し撮影しました。 (文)

日が落ちて

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中村六段、戦端開く

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中村六段は▲4五歩(図)と突いて戦端を開いた。△同歩▲同銀△同銀▲同桂△4四銀▲4六歩と進めば、銀と桂をさばいて先手好調だ。このとき、3七のキズをあらかじめ金がカバーしている。

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4筋に手をつけ、続いて▲1四歩(図)と端にも手を広げる。ここから激しい戦いに入っていくだろう。羽生王座の打った△6四角が攻防にどの程度働くかがひとつのポイントになる。
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角換わり今昔

大盤解説会場では中村修九段と近藤六段に解説者が交代した。「千日手で大変なのは記録係ですよね。昔はコピー機がないので4通書いていた(現在は2通)んですが、深夜に朦朧として間違えると全部書き直しで」と近藤六段。本譜の解説に移る前には、角換わりの昔の形、今の形を語っていた。

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手損のない角換わりの古い定跡。昔は飛車先は伸ばすものと決まっていた。現在は▲2五歩を保留することで▲2五桂の余地を作る順が主流になっている。ここから△3四歩▲8八銀△7七角成▲同銀△2二銀で下図。

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先手が飛車先を伸ばしていた関係で、昔は△2二銀と上がっていた。図で▲2四歩△同歩▲同飛なら△3五角で後手よし。しかし先手が飛車先を保留するようになると、△4二銀とこちらに上がって中央にも備える手が主流になった。

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本局の一手損角換わりは、図を見てわかる通り手損のない角換わりとは出だしがまったく異なる。似て非なる戦型である。

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「夜が楽しみ」

16時過ぎ、大盤解説会では深浦九段が解説中。「戦う場所がなくて千日手になるのが怖いですよね」と話すが、表情は楽しげだ。ただ、千日手になる可能性は低く、戦いになるでしょうとも。すると今度は「成り駒をたくさん作って玉が上に出ていくと……こう、入玉になりやすいですよね」と、持将棋の可能性をほのめかす。「夜が楽しみですね」と本田女流三段。

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