▲8一飛成に羽生王座が27分考えて夕食休憩となった。夕食休憩は18時~19時まで。ここまでの消費時間は山崎3時間44分、羽生3時間47分。
中原名誉王座の見解
「この局面は△8五歩を利かすタイミングではないか。▲同竜なら△7四金▲8一竜△6五金と桂を取って駒を補充します。後手は少し駒が足らないので、駒を補充しながら攻めることになるでしょう。△8五歩に▲8七歩なら後手が得でしょう。山崎七段は▲8四桂~▲7二桂成が間にあう展開になれば面白いでしょう。まだ難しい形勢だと思います」。(聞き手・高野五段)
中座七段の見解
「先手の要の金をあっさり取る事ができたので羽生王座が優勢だと思います。ただ、山崎七段の▲1六歩と突いた手が、どうしても気になります。もし形勢が悪ければ、あのような大胆な手を指せるのかどうか。見た目ほど形勢には差がないのかもしれません」。
伊藤能五段の見解
「激しい横歩の中でも、最も激しい変化に踏み込んで入ったのには驚きました。現在は羽生王座が優勢と思いますが、うまく決まらないと危うい。巧妙な収束があるかどうかが勝負だと思います」。
(吟)
27手目▲3七桂の局面が新山崎流の基本形です。それまで多く指されて来たのは、この局面から(▲5八玉▲3八金)と2手進んだ形でした。この2手を省いたのが、山崎七段の斬新で素晴らしい発想です。
この指し方により、後手は右桂を使う大事な2手「△7四歩~△7三桂」を指す事ができなくなりました。
図では△7四歩が一番多く指されていますが、後手にとっては、その瞬間が非常に怖い局面となります。以下▲3三角成△同桂▲3五歩と桂の頭を攻められた時に△同飛と取る事ができません。△7四歩と歩を突いているために、▲4六角の飛車香取りが生じてしまうのです。△7三桂まで進んでいれば、この進展はありません。
図の局面での後手の対抗策がなく、一時期△8五飛戦法は下火になりました
新山崎流基本図(27手目)からの、△7四歩は紆余曲折を経て、現在は力戦調の将棋になる事が多くなりました。後手がはっきり悪くなる訳ではないので、△8五飛戦法は以前よりも指されるようになり、また昔の変化も掘り起こされるようになりました。
本譜の△8六歩の筋は以前からありましたが、本譜のような進展で後手がダメだと思われていました。△3三銀と上がる筋も一応ありましたが、あまり注目はされていませんでした。羽生王座は、どこかでこの手の可能性に気付き、光明を見出していたのではないかと思います。
もしこの手が成立すれば、新山崎流に対する大きな対抗策になります。(中座七段)
(烏)