第52期王位戦七番勝負第4局 Feed

2011年8月10日 (水)

10時10分頃、控室では定跡の話題で盛り上がっている。定跡の定義とは、という問いに森下九段が「実戦の積み重ねと、あと信用が大事だと思いますね」と答えている。

森下 むかし米長研では初手から研究していたんですよ。▲7六歩は良い手か悪い手か、じゃあ△8四歩はどうだ、と。当時は時間が無限にありましたからね。
中座 藤井さん(猛九段)は今でもそうらしいですよ。『将棋世界』に書いてあった気がします。
森下 私が若い頃は、「定跡は弱い奴が覚えるんだ」と言われましてね、定跡通と呼ばれた棋士が「これは○○戦だ」と言うと笑われていたんですよ。信じられないですよね。
中座 今じゃ知らないと逆に笑われますからね。
森下 いまは定跡が当たり前になって、でもそれだけじゃダメなんですよね。これからは定跡と力の時代ですね。
(将棋も変わりましたよね、「駒得至上主義」の時代とはスピード感が全然違いますよね、と関係者)
森下 そうですね。「駒得するからいいだろう」という曖昧な価値観から、一手一手がより具体的に理論付けされるようになって。一手の重みが昔とはまるで違ってきましたよね。

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(こちらは話題が変わった後の様子。「自転車に乗ってるとカラスが襲ってきましてですね……」。控室が笑いに包まれる)

(文)

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10時10分頃、左図の局面で羽生二冠が時間を使っています。ここまでの消費時間は▲広瀬4時間20分、△羽生4時間6分。

【棋譜コメントより抜粋】
ここから△8六竜▲3三歩成△同銀▲4五桂△5四桂▲同角△同歩▲3三桂成△同金▲4五桂△3二金(右図)に、(1)▲3三銀と(2)▲3三歩が検討されている。

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(1)▲3三銀は△同金▲同桂成△5二玉(左図)で後手玉が意外と広い。「▲7二金や▲7二角では足りないでしょうねえ」と森下九段。
(2)▲3三歩は△4二金寄▲3四桂△8九歩成▲4二桂成△同金▲3二金△5二玉▲4二金△6一玉(右図)が一例。これも8筋に竜がよく利いていて、後手玉は捕まえにくい形だ。「ほおー。定跡は大したもんですね。なかなか破れないですね」(森下九段) 「ただ、こっち(後手)も相当怖いですけどね」(中座七段)

(八雲)

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立会の森下九段が封じ手を開封。

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読み上げるとともに、両対局者に用紙を見せて確認する。

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封じ手の▲3七桂を着手する広瀬王位。

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封じ手が着手され、考え出す羽生二冠。

(八雲)

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8時40分頃の対局室。

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羽生二冠が先に入室した。

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続いて広瀬王位が入室。

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記録係の天野三段の読み上げで前日の手順が再現される。

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9時を少し回った頃、前日の手順が全て再現された。

(八雲)

9時05分、立会の森下九段により封じ手が開封され読み上げられました。広瀬王位の封じ手は▲3七桂。過去の実戦例4局と同じ選択でした。

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【Twitter解説】
佐藤紳哉>おはようございます。佐藤紳哉です。昨日は”深夜A時”の相方の”A時”の解説でしたが”深夜”のほうもしっかりやっていきたいと思います。本日はよろしくおねがいします。
書き忘れました。王位戦の解説だけにおおいに頑張りたいと思います。

封じて予想は▲3七桂です。遊び桂の活用とともに数手後の▲2九飛を見せた味のいい一手です。
封じ手の局面、前例のある形ですがそれを考えずに真っさらな目で見ると先手持ちの形勢に見えます。広瀬王位は細かく突き詰めて研究するタイプではないので、この形なら実戦で考えればなんとかなると考えているのではないでしょうか。対して羽生二冠は自身の経験や、実戦例から後手もやれるとみているのでしょう。ここから一気に終盤に飛び込むであろうこれからの展開とても楽しみです。

(八雲)