2025年9月 9日 (火)

永瀬九段の研究か

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戦型は角換わり腰掛け銀になり、早いペースで指し手が進みました。藤井王位は▲4五銀(43手目)とぶつけて開戦。玉の位置の差がポイントで、銀交換になると▲6三銀△同金▲7二角という定番の攻め筋が先手にだけ生じます。実戦は△5五銀▲5六銀△同銀▲同歩△5二玉▲6八金△4四歩と進みました。

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データベース上には5局の実戦例があり、2022年のお~いお茶杯第63期王位戦七番勝負第4局で初めて指されました。藤井王位に豊島将之九段が挑戦したシリーズです。この王位戦第4局は先手を持っていた藤井王位が▲4七玉と指し、以下△4二金▲5五歩△6三角▲5七金左△8六銀▲同歩△同歩▲5六角と進んで激しい戦いに突入しました。結果は先手勝ち。

以後の4局はいずれも▲4七玉ではなく▲5五歩と位を取り、後手は△6三角や△7二角と自陣角を打って対抗する構図になっています。

本局でも藤井王位が▲5五歩と新しい定跡を選びましたが、永瀬九段は△6三銀(52手目)と角ではなく銀を打ちました。これは前例のない手です。永瀬九段の研究と思われます。

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八代八段は「角を打つのは見たことがありますが、銀はないですね」と意外そうな様子。藤井王位は33分使って▲5六銀と位を支えました。八代八段は「後手は△5四歩▲同歩△同銀と動く手があったので、そのときに▲5五歩と打って追い返せるようにしていますね。先手は5筋の位が主張です」と話します。一見すると位という明確な差があって先手十分のようですが、角換わりは持ち角を使った切り返しに警戒が必要な戦型。うまく陣形をまとめながら進められるか、先手は神経を使う展開になりそうです。