2024年8月

2024年8月29日 (木)

対局翌日の29日朝、藤井聡太王位の防衛一夜明け会見が行われました。

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――熱戦から一夜明けての心境は。
「今期の王位戦は苦しい将棋が多いシリーズだった。その中で結果を出すことができて、永世称号が得られたのはうれしく思う」

――これから追い求めるもの、理想の将棋は。
「経験の少ない展開でも、局面の急所を見抜いて考えていけるような力をつけていきたい。そのうえで新しい局面や面白い局面を切り拓いていけたら」

――今期七番勝負の盤外で印象に残ったことは。
「函館と唐津にはじめて訪れ、食事や街の雰囲気を楽しめた。シリーズを通して、前夜祭では地元の方々に温かい歓迎をいただいて、励みになった」

――昨日の勝ち方を振り返って。
「終盤の入口で誤算があったが、踏みとどまって軌道修正して勝ちに近づけた。ミスをできるだけ減らしていくのが理想だが、実際はミスや誤算が生じる。それをリカバリーできたのはよかった」

――王座戦と竜王戦は、主に関西での対局が続く。関西に対する思いは。
「奨励会に入った頃から、関西将棋会館に通っていた。馴染みある地域で、タイトル戦を戦う機会を多くいただいたのはありがたい。よりよい内容の将棋を指せるように、しっかり取り組んでいきたい」

――2つ目の永世称号を得て、羽生善治九段の存在は。
「永世称号の話が出るたびに、羽生九段の偉大さを改めて実感する。対局の内容や立ち居振る舞いを含めて、少しでも近づけていきたい」

――王座戦を迎えるにあたって、永瀬拓矢九段とどのように戦うか。
「永瀬九段には普段から練習将棋を指してもらっていて、強さを感じている。序盤で遅れを取らないようにするのが必要。チェスクロックの対局では、残り時間が少なくなったところミスが出る。時間配分も意識したい」

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本局のブログ更新は以上です。伊藤園お~いお茶杯第65期王位戦七番勝負は藤井聡太王位の5連覇、永世王位の資格獲得で幕を閉じました。

第66期は既に開幕し、現在予選が行われております。そちらも新聞三社連合加盟各紙の観戦記などでお楽しみください。

(書き起こし=武蔵)

感想戦終了後に藤井聡太王位の防衛記者会見が行われました。

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――渡辺九段との今シリーズを振り返って。
「全体として苦しい将棋が多かった。特に第1局と第2局は、押されている内容だった。そのあと第3局は際どい終盤を勝つことができて、流れをつかむことができたと感じている」


――永世王位を獲得。これまで戦われた5期の七番勝負を振り返って。
「はじめて王位戦に挑戦できたとき、2日制の対局は初めてだった。指してみると1日制の対局と感覚が違うと感じた。長い持ち時間の中でしっかり考えることができて、印象に多く残る対局も多い。王位戦の対局を通して、成長できた部分が多くある」

――羽生善治九段が持つ、永世二冠の最年少記録(24歳9ヶ月)の更新について。
「永世称号については、対局に臨むにあたってまったく意識していない。これまで獲得した5期の積み重ねで、永世王位を獲得できたのはうれしい」

――これからの将棋に向きあう姿勢について。
「今回の七番勝負でも、考えていてもなかなか判断がつかない局面が多く、中盤戦の形勢判断のあたりで課題が見つかった。そのあたりを意識して、長い目で見たとき、着実に実力が伸ばせたと思えるように取り組んでいきたい」

――今期のシリーズで印象に残ったのは。
「第3局の終盤戦は、最後際どい形になって、突き詰めるとこちらが悪い部分もあったようだが、最後でギリギリ勝ちをつかめたのが印象に残っている」

――第1、3局は逆転勝利だった。要因は。
「第1局は、最後のほうはかなり差がついて、勝ちになったのは幸運だった。第3局は駒が足りないながらも際どいと思っていた。判断の難しい局面を作っていくことができたように思う」

――22歳をどのように過ごすか。
「最近は公式戦の対局でも幅広い展開になることが多い。発見や課題ができていると感じているので、経験を生かして、実力を高めていけるように取り組みたい」


――将棋を始めた、子どもたちに伝えたいメッセージを。
「将棋はいろいろな可能性があって、自由なゲームだと思っている。将棋を始められた方も、自分で少しずつ考えて、可能性を探ってもらえたら」

――王位戦の防衛した自己評価について。
「第1局、第2局の内容がよくなかった。そのときは『もっといい将棋を指さないといけない』という気持ちを持っていた。そこから立て直して、防衛につなげられたのはよかった」

――次は、王座戦、竜王戦が控える。挑戦者の永瀬拓矢九段、佐々木勇気八段の印象は。
「これまでは王位戦のことを中心に考えていた。来週からは王座戦が始まり、ここから気持ちを切り替えて準備をしていきたい。永瀬九段も佐々木八段も序中盤の研究が深いイメージがある。まずはそこで遅れをとらないようにする必要がある。 佐々木八段とタイトル戦を戦うのは竜王戦が初めて。長考派のイメージがあり、互いの読みがぶつかり合うような将棋を指したい」

――いまの調子をどのように捉えているか。
「今回の王位戦でもミスが出たところがあった。経験が少ない局面だとミスが出やすいが、一定の手応えもあった。状態としては以前より上向いているところがあると思っている」


――ファンの皆さんに向けてメッセージを。
「この王位戦は苦しい部分も多いシリーズではあったが、結果を出せてうれしく思う。来週には王座戦が開幕する。気持ちを切り替えて、いい将棋が指せるように準備をしたい」

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(書き起こし=武蔵)

2024年8月28日 (水)

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(終局直後)

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(藤井聡太王位。5連覇で永世王位の資格を得た)

【藤井聡太王位インタビュー】

--7七玉・8八銀の形で相手の攻めを受ける1日目はどう見ていましたか。
「△8六銀(36手目)と打たれたところはいくつか対応が考えられると思ったのですが、いろいろ比較が難しそうと思っていました。封じ手は▲5六歩(45手目)としましたが▲2四歩△同歩▲5六銀と激しく戦うべきだったかなと封じ手のあとに思いました」

--2日目に▲5五金(61手目)△同銀▲5六歩と銀を呼び込んだあたりはどう見ていましたか。
「複雑でよくわからないと思っていました」

--難解な終盤戦で△2八飛(80手目)に▲8三銀打と激戦に入りました。
「その手前に飛車を切る前後に誤算があって、自信の持てない展開になってしまったような気もしていましたが、▲7四銀から下駄を預けて、その間にどれくらい厳しい攻めがくるかという感じでした」

--一局を振り返ってください。
「▲7七玉が見慣れない形でどういう方針でやるか難しい局面が続いた将棋だったと思います」

--七番勝負を通して振り返っていただけますか。
「全体として内容的には押されていた将棋が多かったので、結果には幸運があったかなと思いますし、今後もっと力をつけていかなければならないと思ったシリーズでした」

--5連覇、永世王位の有資格者となりました。
「対局に臨む上では意識していませんでしたが、永世称号を得られたことをうれしく思っていますし、この王位戦5期を通して自分自身いろいろな経験をすることができたかなと思います」

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(多くの報道陣が詰めかけている)

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(敗戦の弁を述べる渡辺明九段)

【渡辺明九段インタビュー】

--1日目、△5四金(42手目)と攻勢を取りました。
「△5五角(40手目)▲6六歩△5四金は無理かなと思ったのですが、普通に組んでいるだけでは少しずつ苦しくなると思いました。勝機があるとしたら複雑な攻め合いになる展開だと思ったのでやってみましたが、無理はしていると感じました」

--2日目に藤井王位に△6六銀を呼び込むような受け(61手目▲5五金△同銀▲5六歩)がありましたが。
「直前に△8六歩(68手目)と突いちゃった手をとがめられたようには思いましたが、角を取られる展開は、差し出している角なので仕方ないと思いました」

--△2八飛(80手目)からの最終盤はどう見ていましたか。
「▲6四歩(75手目)と打たれてどうも足りない。そこまではちょっと難しいと思っていましたがそこでどうも足りないと思いました」

--一局を振り返ってください。
「序盤のわかれで少し苦しいと思います。あまりいいところがなかったです」

--七番勝負を振り返ってください。
「途中までは内容的にはまずまず戦えていたと思いましたが、第4局、第5局と全然いいところがない将棋だったのは残念です」

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伊藤園お~いお茶杯第65期王位戦七番勝負第5局は、97手で藤井王位が勝ちました。終局時刻は18時21分。消費時間は、▲藤井7時間36分、△渡辺7時間50分。この結果、七番勝負は藤井王位が4勝1敗で防衛に成功。棋戦5連覇を達成し、棋聖位に続いて2つ目の永世称号を獲得しました。