佐藤九段が投了すると、関係者が対局室になだれ込む。主催紙のインタビューで「これでタイトル戦初挑戦ですが、今のお気持ちは」と尋ねられると、行方八段は言葉を詰まらせた。
■行方尚史八段
―― この一局を振り返っていただいていかがでしたか。
行方 勝ちになってから間違えて。最後はもうわけがわからなかったです。
―― 勝ちを意識されたのはどの辺りでしょうか。
行方 最後の▲5四銀と出る筋が実現して。こちらが詰みづらいので。その直前までまったくわけがわからなかったです。
―― これで王位挑戦、タイトル戦自体初挑戦になるんですけれども、今のお気持ちはいかがでしょうか。
行方 ちょっともう……(言葉を詰まらせる)。いや……。この一年間自分なりにがんばってきた成果かなと思います。
―― 七番勝負ですが、相手が羽生王位です。印象はいかがでしょうか。
行方 20年間やっているんですけど羽生さんとの対局は少なくて……。自分が活躍してなかったからなんですけど。羽生さんと番勝負を戦えて、すごくうれしいです。
■佐藤康光九段
―― この一局を振り返っていただいていかがでしたか。
佐藤 そうですね。自玉方面から動いていったのがよくなかったですかね。成算はあったんですが、思ったよりもよくなかったかもしれないです。途中ははっきりダメでした。途中から苦しいのかなと思っていました。
(文)