■羽生善治王位
―― まず、指し直し局からお話を聞かせていただきます。序盤の駒組みから仕掛けのあたりはいかがでしたでしょうか。
羽生 穴熊に囲うような感じを目指していたんですが、中途半端な形になってしまったので、作戦負けになってしまったかなと思いました。
―― △8六歩(44手目)から△6五歩と仕掛けられたんですが、それ以降の戦いはいかがだったでしょうか。
羽生 少し模様が悪いので、勝負手気味にいきました。ゆっくりしてるとジリ貧になってしまうので。しょうがないかなと思っていました。
―― どのあたりで優勢を意識されたでしょうか。
羽生 そうですね。△1七歩成(68手目)で。ええ。
―― 続けて千日手局についても聞きたいのですが、序盤の駒組みから相手に仕掛けられたあたり(△3六歩~△3八歩……44~46手目)はいかがだったでしょうか。
羽生 ▲3七桂と跳べると思っていたので、長考して予定変更だったんですが……。いや本譜は少し失敗したと思って、粘りにいくという順でした。千日手ならこっちもしょうがないですね。
■藤井 猛九段
―― まず指し直し局のほうからですが、駒組みのあたりはいかがでしたでしょうか。
藤井 作戦の意図はそれなりに通ったとは思うんですけれども、先手番なのであまり待っているわけにもいかず、(後手の仕掛けを)誘ったのがよくなかったという感じですね。角どかす(▲6八角……43手目)タイミングが最悪――△1二香が一番生きちゃう展開にしちゃったので。相手を誘った割には最悪の展開でしたね。軽率でした。ただ、先手番なので待っているわけにもいかないので、あそこは悩みどころでしたね。
―― 続いて千日手局を振り返っていただきたいのですが、序盤の駒組みはいかがでしたでしょうか。
藤井 いやー難しい将棋でしたね。全然わからなかったです。こちらが仕掛けたのも勝負手気味だったんですけども。千日手を打開するには条件が悪すぎるかなと。だからこちらも成算はなかったですね。
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