図は10時10分頃の局面。藤井九段は手に乗って美濃囲いから矢倉に組み替えた。6三の駒が金になっている矢倉を「金矢倉」といい、▲6七銀(図)と引きつけた矢倉は「銀矢倉」という。飛車が向かい合う対抗形で互いに矢倉に組むことは非常に珍しい。相矢倉では、敵玉を目指してのタテからの攻め合いがよく見られるが、本局ではどこから戦いが起こるのだろうか。
後手の理想形は、△5五歩~△5四銀。位を取って銀が支える形になると、後手陣は▲6一角のスキも小さくなる。杉本七段は、「▲1五歩は後手の△5五歩を阻止したものですかね。もし△5五歩なら、その瞬間▲1四歩△同歩▲1二歩△同香▲1一角と仕掛けやすくなるので」と言う。今後の進展については、と尋ねると深浦九段と一緒に首をかしげた。まだ駒組みの段階で、どこから戦いになるのかも見えにくいようだ。二日制とはいえこの進行の遅さは現代では珍しい。「一日目の午後という感じですよね。午前、と言われたらちょっと早いかな、と思うくらい」と杉本七段。深浦九段は「もう一回封じ手がありそうですよね」とぽつり、つぶやいた。
(文)