両対局者が会場から退場した後に、明日の対局の
見所?が4名の棋士によって語られた
石橋「ここまで挑戦者の広瀬六段が2勝1敗でリードしています。
加藤九段は第4期に24歳で挑戦者になっていますが、広瀬
さんは23歳とさらに若い挑戦者です」
加藤「えーと、まあ、王位戦は51期目ですけど、私は今まで七番
勝負に3回出て1期獲得していますが、予選から含めると
第1期からずっと出ずっぱりです。健康と頭の衰えがなけ
れば、控えめに言っても、あと5・6年くらいは行けるか
なぁと思います(会場拍手)。それで、第4期王位戦の第
1局は福岡で相手は大山康晴王位。当時は大山さんがタイ
トルを独占していた時代です。挑戦者になって第1局は勝
ったんですが、前夜祭で西日本新聞の担当の方から「あな
たは福岡の出身ですから、明日はぜひ勝ってください」と
言われて勝ったんですね(笑)。私は昭和35年に20歳で名
人戦で1-4でものの見事に負けまして、その2年後に王
将戦でも負けました。次いで、24歳で王位戦に出ました。
2年ごとにタイトル戦出ずっぱりだったんです。で、年齢
の件です。広瀬さんはもっと若いんですね」
先崎「広瀬さんは加藤先生と大学が同じなんですね。早稲田大学」
加藤「そうですね。同じなんです。彼は数学科なんですってね」
先崎「数学科で確率とかを専攻しているらしいんですけど、聞いて
も全然教えてくれないんですよ。どうせ先生には分からない
でしょみたいな(笑)」
加藤「で、まあ、将棋というものは僕は数学系ではないと思ってい
ます。どちらかといえば文学系。一口で言ったら、気合で指
すのが将棋だと思っています(爆笑)」
先崎「先生の将棋を見ているとよく分かりますね(笑)」
加藤「僕は文系で、広瀬六段は理系ですけど、それは珍しいと思う
んですよ」
先崎「棋士はほとんどが理系かと思うのですが…」
加藤「えっ、えっ? どうですかねぇ。中川さんはどう?」
中川「私は体育会系です(爆笑)」
先崎「いやー、先生が文系だとは気付きませんでした」
加藤「それでですね、王位戦はよく指しましたし、立会人も務めて
います。深浦さんの立会いもよくしています。深浦さんは僕
の好きな後輩です。僕が感心するのは、出身の地元の方に温
かく励ましてもらってですね、彼は非常に感謝していい将棋
を指しているんです。地元の佐世保の方々からの温かい支援
が深浦さんの励みになっているんですよ。これですね、一歩
間違ったら、ひいきの引き倒しになってしまうんですよ(爆笑)。
先ほども、自分が遊んだ場所が対局場から見られていいと言
ったでしょ。感心したんですよ。私なら真剣勝負の場で親し
い人が近くにいると、かえって気を遣ってしまっていけない
んですよ」
先崎「深浦さんは加藤先生よりも理系なんで(笑)、そこら辺はカラ
ッとしているんじゃないですかね」
前夜祭は皆が笑顔になってお開きとなった
(吟)