終局直後
―― 今日の将棋を振り返られて。
里見 第1局とほぼ同じ形になって、はっきり分かっている訳ではなかったのですが、自分の棋風にあった指し方を選べたのではないかなと思います。
―― 第1局から変化して、加藤さんが長考していたあたりは。
里見 実戦的には難しいのかなと思っていました。
―― ペースを握ったのはどのあたりの局面でしょう。
里見 桂を取り合ったところは、こちらの玉が固くて攻める展開になったので、そこは指しやすいのかなと。
―― 中・終盤も方針に淀みがないのかなという印象でしたが。
里見 途中は、玉が露出してしまって、指しているときは神経を使っていました。きっちり読み切れたかなと思います。
―― 本局の勝利でタイトルを防衛されました。どんなお気持ちですか。
里見 ほっとしています。
―― 今期は最強の挑戦者である加藤さんとのシリーズを制しました。
里見 対抗形で、課題局面になる将棋ばかりだったので。準備段階で考えるのは、こちらが課題を突きつけられるような感じだったので、少し苦労はしましたが、それはそれで楽しめたのかなと思います。
―― 3局を通しての印象は。
里見 いい部分も悪い部分も出たのかなと思うので、今後に活かせればと思います。
―― タイトル防衛は難しいことですが、12連覇になりました。
里見 いろんなシリーズがあったとは思うのですが、精神的に強くしていただいた棋戦かなと思います。
―― 今回の防衛で、清水市代女流七段と並ぶ、通算タイトル獲得数が43期になりました。いまのお気持ちは。
里見 当時と較べると女流棋戦がかなり増えて、いい環境で指させていただいているので、清水さんとはそういったこともあって、比較することはできません。清水さんのような人間性に成長できるように、これからも技術面も磨いて頑張れたらなと思います。
―― この43期の前にはひとつのシリーズで足踏みがありましたが。
里見 年間通して、棋戦が増えたこともあり、対局数が増えました。1局に一喜一憂する訳にはいかないので、純粋に将棋が好きという気持ちでやっていました。
―― 並んだ記録を更新するという期待を持たれる方がいると思います。女流王位戦が最短での防衛になりますが。
里見 技術的にまだまだ不足しているのを感じるので、日々、それを埋められるようにしていきたいです。
―― 最後にこれからの目標、夢のようなものは。
里見 特にはないのですが、好きなことをさせていただいているので、勝負とは別に楽しむ気持ちを持って、将棋に向き合っていけたらと思います。
―― 一局を振り返っていただきたいのですが。
加藤 第1局と似たような将棋になりました。第1局よりは、駒を前に出せたかなと思いましたが、ただ桂を取り合ったあとが自信がなくなってしまいました。そのあたりの組み立てに問題があったのかなと思います。
―― 第1局の類型になって、▲5五歩を選ばず、▲9六歩から▲3五歩でした。実際、指されてみて。
加藤 ▲3五歩ではいろんな方針があって、時間を使ってしまったのですが、そんなに悪い手という気はしていなかったので、そのあとなのかなと。
―― ▲4二角と打ち込んだあたりの局面は。
加藤 自信があるわけではなかったですね。歩切れなのと△3六歩の催促が待っているので、ちょっといくしかないかなと思って、攻めてしまったところはあります。
―― 終盤はいかがでしたか。
加藤 △4七歩からのと金攻めが、振り飛車側からすれば、分かりやすく攻められるので、美濃囲いをどう攻略すればいいのか分からなかったです。▲8三桂成からいきましたが、ちょっと足りないと思っていました。もうちょっと稼ぐ手があったのか、自分の力では見つけられなかったです。
―― このシリーズ3局を振り返られて、どうでしょうか。
加藤 あっという間だったなと。女流名人戦のタイトル戦は初めてだったので、いろいろ収穫があったなと思います。勝負をするからには、勝ちたかったのですが、タイトル戦に向けて準備というか、自分自身と向き合うことができて、結果は残念でしたが、少しだけ成長できたかなという気はしています。
―― 女流名人戦という古いタイトル戦に臨んでみて。
加藤 非常に重みのあるタイトルだと思います。こんなに長く棋戦を続けていただいているので。リーグも厳しかったですが、そこを抜けても里見女流名人の壁は厚いなという気がしました。
―― 里見さんとは、何度もタイトル戦の大舞台で戦っていますが。
加藤 一番、最初に出てくるのは『うれしい』ですね。強い方と指せるのがうれしい。過去を振り返るとかなり負け越しているので、もうちょっと頑張りたいというのはあるのですが、そういった意味で、私自身の能力を高めてくれるというか、引き上げてくださる方だと思っています。
―― 最後に気は早いですが、すぐに次にリーグ戦が始まります。来期、再挑戦に向けての思いを。
加藤 今期が初出場だったこともあって、長期のリーグ戦を戦い終えて、ほっとしたというか、しんどいところもありましたし。また一からスタートということで、気持ちを切り替えて、ひとつひとつ、積み重ねて、この場に戻ってくることができればいいなと思います。
(吟)