終局直後
――伊藤さんとの対戦で穴熊を相手にするのは経験が少なかったと思いますが、序盤についてはいかがでしたか。
里見 一手、一手考えていこうと思っていました。
――昼食休憩明け、▲7四銀(45手目)と出たところの形勢については。
里見 難しいと思っていました。
――と金を作ったあたり(53手目)からは快調に見えたのですが。
里見 やっているときは難しいと思っていましたが、確実に攻められる形が見えてからは、よそさそうな気がしました。
――具体的にはどのあたりでしょうか。
里見 ▲5二歩(69手目)と垂らしたあたりです。
―― 一局を振り返っていかがでしたか。
里見 昼食休憩明けから難しいと思っていて、具体的に分かりませんでした。
――低い陣形を維持できて振り飛車らしい指し方、という控室の意見もありました。
里見 もう少し待つ手があればよかったんですけど……。ただ、指したい手を指せていたので、攻めていってどうかなという感じで。
――本局の勝利で女流名人防衛となりました。シリーズを振り返っていただけますか。
里見 1局目は力戦形になって、一手、一手考えながら指して自分の力は出せたかなと思います。2局目は、やや指しやすいと思っていたんですど、最後はどちらが勝つか分からない将棋でした。3局目は軽い仕掛けになってしまって、あまりいいところがなかったと思います。
――4局ともいままでにないような序盤戦で、お互い工夫を凝らしたシリーズという印象でした。伊藤さんはタイトル戦で当たる機会が多いと思いますが、伊藤さんの存在についてはいかがですか。
里見 今回のシリーズは力戦形になることが多かったので、一手、一手考えながら指し進めていくという点で楽しかったですし、貴重な経験になりました。
――10連覇を達成しました。率直なお気持ちをお聞かせください。
里見 あまり意識したことはなかったんですけど、今回のシリーズが開幕する直前くらいから周りの方々に注目していただいているのを実感していました。結果は出さないといけないと思っていたんですけど、自分の力を出しきることに専念したいなと感じていたので、結果を出すことができてうれしく思います。
――1期目の獲得は17歳でした。この10年間は、どのような時間だったと思われますか。
里見 振り返ってみるとあっという間でした。最終局まで指すシリーズもあって、そういう経験をすることで、少し成長できたのかなと思います。
――今期はいろいろな環境が変化した中での防衛となりました。
里見 余計なことを考えず、将棋に集中することができたと思います。純粋に将棋を楽しむことができたのかなと。
――今シリーズは開幕局から脚のケガを抱えた中での番勝負になりました。
里見 私のミスで周りの方にご迷惑をお掛けして。今日もそうですけど、足を崩させていただくなど、皆さんに助けていただいて対局することができましたので、感謝の気持ちで一杯です。その分、将棋に集中させていただいたので、いちばん周りの方に助けられたシリーズだったと思います。
――来期も防衛戦を迎えることになります。本棋戦のみならず、今後に向けての抱負をお願いします。
里見 やっぱり力をつけることがいちばんだと思いますので、地道に勉強を重ねて頑張っていきたいと思います。
――序盤、穴熊に組んだあたりはいかがでしたか。
伊藤 穴熊に組むのは予定だったんですが、本譜は思っていたより悪くなって。それが誤算というか、もうちょっと警戒したほうがよかったと思います。
――昼食休憩のあたりではいかがでしたか。
伊藤 角銀交換になりそうな順があって、本譜もそう進んだんですけど、考えてみたら悪そうで、昼休のあたりはもうちょっと慎重に指すんだったかなと思いました。
――△5五銀(48手目)と角を取るところで△5四金も有力と見られていました。
伊藤 本譜を思えば△5四金のほうがよかったかもしれないですね。
――△8八角と打ったところの感触は。
伊藤 桂香が取れる形になるのでと思ったんですけど、取ったあとが使えないのと、思ったより食いつかれてしまったというのがあったので。そのあたりでも慎重に考えるべきだったと思います。
―― 一局を振り返って
伊藤 自分の大局観が悪かったので、それが反省点です。できればもう1局指したかったですが、自分の課題が見つかったので、また改善していけたらと思います。
――シリーズ全体を通していかがでしたか。
伊藤 1局目はあまり作戦がうまくいかなかったので、もうちょっと工夫が必要でした。2局目は里見さんにうまく動かれてしまって、そこから形勢を悪くしてしまう感じだったので、反省点が多かった将棋でした。3局目は1勝返せて去年よりスコア的にはよかったのかなと思いますが、今日の内容が悪くて。周りの方々からお声をいただいて、改めて支えていただいているなと感じシリーズでした。この場をお借りして感謝いたします。
―― 里見女流名人に挑むということ、また、その存在についてはいかがですか。
伊藤 タイトル戦までいかないと、なかなか当たれない方なので、こういった舞台で指せるのはありがたいと思いました。
――来期の抱負をお願いします。
伊藤 またこの舞台に帰ってこられるよう、自分の足りない部分を改善していけたらと思います。
(玉響)