前夜祭(6)
(両対局者が退場したのち野月七段、谷川治恵女流五段、本田女流三段が第2局の見どころを語る)
野月 非常に楽しみですね。タイトル保持者同士が戦うというのはなかなかないですし。特に今回は挑戦者の上田初美女王、めちゃくちゃ気合が入っています。どうですか、最近の若手たちの様子は。
谷川 そうですね、やっぱり里見さんが強くなってから「追いつけ追い越せ」という感じがあって、強くなるスピードが速くなった感じがしますね。
野月 ぼくも家での研究では女流の将棋も並べているんですが、自分よりいい手をいっぱい指しているんじゃないかと。
谷川 野月先生からご覧になって、女流の将棋のいいところはどんなところですか?
野月 いいところは、思い切りがいいのがひとつと、あと男性より発想が柔らかい。男性ですと「こういう形ではこうしなければいけない」と子供の頃から植え付けられるので、その枠の中で指し手を見つけるんですけども、女性の方は自由奔放な発想が多いので、我々が思いつかない手が多いので、見ていて楽しいですね。
本田 お二人の将棋はどういった特徴がありますか?
野月 里見さんはいま「化け物」になる一歩手前ですかね。女流トップの強さはもちろんあるんですけど、そこから一段階二段階じゃなくて、ぐんと飛躍して強くなるような勉強をしている。成長の途中なんですけども、思っている通りの勉強ができれば、怪物になりますね。
本田 いま奨励会に在籍していますけども、将棋の内容、棋風は男性棋士に近いものになっている?
野月 奨励会に入る前の里見さんというのは、自分の得意な戦法があって、その枠の中でむちゃくちゃ強かったんですね。それが奨励会に入って、そうすると苦手が必ずつつかれるんですね。そうなると苦手な部分を消さないと勝てなくなるので、得意な部分はそのまま強くて、苦手な部分を同じくらいまで強くしようとしているので、だんだん見ていてスキがなくなってくる感じがしますね。
谷川 そうなると指す戦型も多くなってきますね。
野月 そうですね。ほとんどオールラウンダーに近いんじゃないですかね。
本田 上田さんもすごく勉強熱心で。
野月 すごく熱心に勉強しているのが、将棋を見ているとよくわかります。上田さんの一番いいところは、当たったときのパンチ力。自分の思う展開に持っていくのもうまいですし、そうなったときのパンチ力、破壊力はものすごいですね。第1局は最後難しい展開で詰みを狙いにいって間違えてしまったんですけども、途中で見せた、流れを自分のほうに持ってくる力はピカイチですね。
本田 私もお二人と対局で当たるんですが、読みがすごいんですね。感想戦で読みを披露するときもそうです。私も負けないようにがんばっているんですけれども。
野月 去年公式戦で女流棋士二人と対戦したんですね。事前に調べたときも普通に負かされる可能性があると思いましたし、実際に盤を挟んで戦ってみたら実力的にほとんど変わらないと思いましたね。だから明日の大盤解説会は「解説と聞き手」とありますけど、「解説と解説」で……。
本田 いやいやいや(笑)。最近調子が悪いので、明日の将棋を見て刺激を受けたいなと思います。
谷川 明日の戦型予想はいかがですか?
本田 第1局は相振り飛車でしたけども、第2局は対抗形になるんじゃないかと思います。いかがでしょうか。
野月 ぼくも上田さんが居飛車をやるんじゃないかと思いました。里見さんは第1局で勝っているので変える必要はないのかなと。上田さんがシフトチェンジするんじゃないかなと思います。明日は大盤解説もわかりやすくやりますので、よろしくお願いします。
(文章書き起こし・文記者、撮影・吟)