第1局 7月5・6日 愛知県小牧市「合掌レストラン大蔵」
第2局 7月15・16日 兵庫県神戸市「中の坊瑞苑」
第3局 7月29・30日 北海道千歳市「ポルトムインターナショナル北海道」
第4局 8月19・20日 福岡県宗像市「宗像ユリックス」
第5局 8月26・27日 徳島県徳島市「渭水苑」
第6局 9月9・10日 静岡県牧之原市「平田寺」
第7局 9月24・25日 神奈川県秦野市「元湯 陣屋」
永瀬九段インタビュー
――王位戦の印象は。
永瀬 真夏の棋戦という印象です。
――夏は得意なのでしょうか。
永瀬 夏はかなり弱い。9月生まれなので秋が強いと思うんですけど。9月以降のほうが私は好きです。夏が弱いことはまったく言い訳にならないので、頑張って熱を逃がせるようにしたいと思います。
――藤井聡太王位との七番勝負は2日制になる。長い持ち時間は得意か。
永瀬 相手がかなり得意なので相対評価になりますよね。だとあんまり得意じゃないかな(笑)。
――この夏はどんなテーマで臨むか。
永瀬 年明けから王将戦、名人戦と2日制の経験値が高まっていると思いますので、少しずつどう戦っていくか考えたいと思います。
――ハードスケジュールが続いている。
永瀬 もうバグっていて、中2日あるとありがたいなと。明らかにおかしいんですけど、今日楽だなと思ったので。体調もよかったです。
――各地のファンの方に向けて。
永瀬 おそらく私が頑張ることによって見ていただく機会が増える理屈になるはずなので、まずは拮抗したスコアになるように頑張らないといけないなと、そうすれば皆さまにお目にかかる機会も増えるかなと思います。厳しい相手ですけど、そうしたいなと思います。
――表情が明るく見える。
永瀬 棋聖戦で痛すぎたので(注・挑戦者決定戦で敗退)悪い流れかと思ったんですけど。私は挑戦者決定戦に多く出る時期が2、3年前くらいにあって、そのときはまったく(挑戦権が)取れなかったので、今年は割と多く取れているんじゃないかと思います。悪い流れを断ち切れてよかったと思います。
――過密日程の中で挑戦権を得た。
永瀬 中3日あればだいぶありがたいので。王位リーグラストが一番きついなと(笑)。今日はだいぶ体調もよくて。よい状態で挑めたかなと思います。移動日と移動日が重なっていなければそこまできつい印象はないですね。
――関心のある対局地は。
永瀬 第4局まで指せることが確定しているので、第5局以降、1局でも多く指せるような形にしたいと思います。なので5から7がとても関心があるという流れなんですけど。できれば陣屋(第7局)に行きたいなと思っています。
――第3局が新千歳空港で名人戦に続いて空港での対局になる。
永瀬 藤井王位が喜ばれているイメージしかないので(笑)。たぶんホームなんでしょうね。藤井王位が喜ばれている姿を見るとアウェー感を感じてしまいますけど。北海道は人生2回目なので楽しみだなと思います。
――佐々木八段との大一番に勝って挑戦権を獲得した。
永瀬 彼はかなり入念に準備する印象で、こちらが準備を立てられやすい状況で、それを回避できるかどうかというところがありました。厳しいだろうが何だろうがベストを尽くすだけと決めていますので、ベストを尽くすという心境ではありました。
――藤井王位と2日制を指すと得るものが多いと話していた。今年度は過密日程で10勝4敗と充実されている。
永瀬 得るものが多いですね。(挑戦権を)獲得して長い期間2日制ができることが確定したのは心理的に大きいと思います。2日制は封じ手をして、普段より考える時間が長いというか。基本的に2日制は封じ手のあとの時間が長い、藤井王位は寝ているような気もしますが、私はけっこう考えたりもするので、藤井王位と将棋に接する時間がとても長いというのは2日制のメリットかなと思います。
――ここまでの名人戦で得たものは。
永瀬 私の課題は対藤井戦においての先手番。(七番勝負は)先手番をブレークできればフルセットまでいって振り駒という形になるので。基本的に先後であまり差がないのが幸せだと思っているんですが、先手番があまりにも藤井王位に勝てていないので、勝つことができれば景色が変わるのかなと思います。
――王位戦七番勝負ではそこが課題になる?
永瀬 この課題を解消できればフルセットまでいける可能性が高いので、個人的にはかなり大きな課題かなと思っています。
――王将戦と名人戦のおやつでフルーツを食べていた。夏のフルーツはどういったものを期待するか。
永瀬 夏? マンゴーですか? スイカ? スイカは種があるので厳しいと思います。ぶどうは好きです。メロンいいですね。メロン大好きです。
――佐々木八段が旧会館の壁に、永瀬九段と50局指したいと書いていた。
永瀬 50局。今何局ですか? 14局? 私ちょうど14年目くらいですね。無理じゃないですか。今年度2局目であと36、18年……あ、できるか。私は誰と一番指してるんですか? 藤井王位と34局。そんなに指してるんですか。
――佐々木八段は永瀬九段を意識している。永瀬九段から見て佐々木八段はどういった存在か。
永瀬 彼は系統が正反対なので……。難しいですね。180度違いますね。私とは正反対の存在なのかなと思います。感覚派だと思いますし、嗅覚型だと思います。本能型に近いのかなと思います。
――前は夏でもスーツの下にベストを着ていた。今日はネクタイも外している。
永瀬 対局を多くやってるので重いんですよね、着ているものが(笑)。私、重力系に弱いので、服とか重いと厳しい。体調がよければ問題ないんですけど、対局が多いと厳しいので、割と最近は気合が入ったら脱ぐようにしてます。
――大分(名人戦第4局)で食べたスッポンはまだ効いてますか。
永瀬 効用より味が好きでした。亀が好きなんですけど、亀とスッポンは別物だと思っているので。
――夏の暑さ対策は何か用意しているか。
永瀬 藤井王位も室温にシビアなイメージがありますので、藤井王位が調整してくださると信じている。扇風機は個人戦なので、個人戦でできるものをいただくと思います。将棋を指すところなので守られていると信じています。
感想戦
終局直後
■永瀬拓矢九段
――一局を振り返って。
永瀬 ▲7六香(75手目)が工夫というか研究会で指したことのある手だったんですけど、穏やかな展開になりやすいので、角換わりは激しい展開を望むところがあるので正反対ですが、ゆっくり指してどうなるのか、やってみようと思いました。
――▲7七玉(97手目)と受けたあたりは。
永瀬 形勢は難しいのかと思っていました。基本的に金銀と王様の厚みで指す将棋なので、王様も守りに利かせてどうなっているかと思いました。
――王位挑戦は初めて。挑戦権獲得について。
永瀬 割と上に行くことも少ない棋戦でしたので、挑戦を決めることができてよかったと思います。リーグから勝ち上がって挑戦者決定戦ですので、なかなか上に行くのは大変な印象もありました。
――名人戦でも挑戦中で藤井聡太王位との七番勝負が続く。
永瀬 そうした形にできてよかったと思います。
■佐々木勇気八段
――▲7六香(75手目)と打たれたあたりは。
佐々木 こちらの用意がない状態になってしまって。前例のある手だったと思うので、そこは研究不足だったと思います。
――一局を振り返って。
佐々木 ▲7七玉(97手目)と受けられたときに最善の手順がわからなかったんですけど、本譜の△4二歩(105手目)はない手で、△4七歩と打つべきで▲6五歩△8四桂の順が細いと思ったんですが、まだそれで勝負すべきだったかなと思いました。
――今期の王位戦を総括して。
佐々木 強い方々と対戦できたので、充実したリーグだったと思います。