■豊島将之九段
――全体を振り返ってコメントをいただけますでしょうか。
豊島 ずっと際どい将棋だったのかなと思います。
――昼休のあたり、仕掛けられたところはいかがだったでしょうか。
豊島 一応、前例がある形なので、難しい将棋というか、互角に近い将棋、後手なのでちょっと苦しいかもしれないですけど。でも割と互角に近い展開かなと。
――よくなったと思われたのはどのあたりでしょうか。
豊島 夕食休憩のところで本譜の順みたいな感じで、先手の変化するところが難しいのかなと思っていました。でも長い手順なので、そんなにはっきり確信があるというところまではいかないですけど。先手も変化するところは難しいのかなと。
■永瀬拓矢王座
――全体を振り返ってコメントをいただけますでしょうか。
永瀬 激しい展開で、際どいとは思っていたんですけど、△3一玉(76手目)と引かれたときに攻防手が難しい気がしたので、そこまで進むとダメになっているのかなと思います。
――そこでダメになっているということはもうちょっと前で、ですかね。
永瀬 自然に攻めたつもりではいたので、どこが致命的にまずかったかはすぐにはわからないですけど、進めてみるとまずかったのかなと思います。
――仕掛けていったあたりの感触は。
永瀬 際どい将棋かなと思ってはいたのですが、手が狭い将棋にしてしまったのかもしれないです。
(文)
第1局は20時10分、110手で豊島九段が勝ちました。消費時間は、▲永瀬5時間0分、△豊島4時間31分(持ち時間は各5時間)。第2局は9月13日(火)に愛知県名古屋市「名古屋マリオットアソシアホテル」で行われます。
(牛蒡)
永瀬王座は▲4三金(77手目)の考慮中に持ち時間を使いきって秒読みに入りました。後手玉は詰めろですが、△6八飛▲4七玉△4八飛成▲5六玉△4六竜と追う順があり、どのタイミングでも竜を取ると先手玉は詰み。王手をかけながら詰めろをかけている金を抜く筋があるため、豊島九段が勝ち筋に入っているようです。豊島九段は本局で勝てば後手番での勝利、そして先後が決まっている第2局では先手番になるため、五番勝負で大きなアドバンテージを得ることになります。
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夕食休憩明け、屋敷伸之九段が控室を訪れました。今期の開幕特集では五番勝負の展望を糸谷哲郎八段と語っています。検討では△4三同金(74手目)に▲5三金△3一玉▲4三金△6八飛▲4七玉△4八飛成▲5六玉△4六竜▲6五玉△4五竜という順が調べられています。先手は▲5三金~▲4三金が大きな手ですが、それ以上に△6八飛~△4八飛成~△4六竜と竜が大暴れする順が厳しく、後手有望の終盤戦のようです。
【将棋王座戦、永瀬拓矢4連覇か豊島将之無冠返上か 31日開幕: 日本経済新聞】
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD21BGY0R20C22A7000000/
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夕食休憩が近づいたところで大きな動きがありました。豊島九段の△6九銀(66手目)がハッとする放り込み。狙いとして▲6九同玉なら△8七歩成が、次に△7八と▲5八玉△5九金▲同玉△7九飛以下の詰めろになってスピードアップの手筋になります。控室ではこの銀は取れないだろうと見られていましたが、永瀬王座は注文に乗る▲6九同玉! 意外な応手に中村太七段が「取れるの!?」と目を丸くしました。以下△8七歩成▲5八玉△7八と▲3六銀(71手目)と進みます。
銀を歩頭に出て4筋の壁を崩し、詰めろを解除しました。中村太七段は「非常手段、勝負手です。△3六同歩で後手がやれると思いますが、先手も上部脱出を狙っています」と解説します。17時30分、豊島九段の手番で夕食休憩に入りました。消費時間は▲永瀬王座3時間33分、△豊島九段4時間5分。対局は18時に再開されます。
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本局は大盤解説会をNIKKEI LIVEと動画配信サービス「Paravi(パラビ)」でオンライン開催します。日本経済新聞の電子版有料会員と購読者(日経ID決済)が対象です。開始は17時の予定。出演者は渡辺明名人と伊藤沙恵女流名人です。現地から渡辺明名人の見解が届きました。
渡辺明名人「(66分の長考となった62手目)△8六歩を境に局面が動き出しました。もう終盤に入っています。中盤あたりから後手持ちだと思っていましたが、午後5時30分からの夕食休憩前後が勝敗の分かれ目になりそうです」
【第70期将棋王座戦第1局 大盤解説会 午後5時から配信: 日本経済新聞】
https://www.nikkei.com/live/event/EVT220804005
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最近の角換わりではよくあることですが、比較的早い時間帯から激しい戦いに突入しています。永瀬王座は飛車を切って馬を作り、豊島九段も桂を打って反撃しました。豊島九段が1時間を超える長考で△8六歩(62手目)と突いたところで、中村太七段が千日手の筋について話しました。上の図から▲8六同歩△6八銀▲同金△同桂成▲同玉△8八飛▲7八銀△8七金▲7九銀△7八金▲同銀△8七銀▲6九角……と駒を打ち替える順です。2020年、当時七番勝負だった叡王戦で千日手を経験している2人だけに、控室がにわかにざわめきました。
実戦は▲6二銀△4三金寄▲5五桂と進んで上記の筋にはなりませんでしたが、8筋を手抜いて攻め合う強い選択は驚きです。青野九段と中村太七段は継ぎ盤に移動して検討を始めました。
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