いよいよ先手玉も入玉に向けて動き出しました。点数勝負は後手が足りるかどうかギリギリのところです。現局面で先手陣に入り込んでいる後手の小駒は4枚。持ち駒の小駒が8枚で12点。大駒2枚を足して22点あります。つまり後2点入れば持将棋成立で引き分けになります。
可能性があるのは、6四歩を逃がすか、先手陣に残る小駒を、駒の交換をせずにタダ取りすることです。
「持ち駒に飛車があれば、小駒を拾えるチャンスがあるんですが、角2枚なので難しいんです。将棋の本質とはまったく関係ない技術の話なので、アマチュアの方は気にしなくていいことですが」(先崎九段)
(八雲)
第55期王位戦七番勝負第3局
持将棋模様
後手玉が入玉を目指し、先手玉も入玉は確実と見られており、勝負は点数勝負の様相を呈してきました。いま先手は王手飛車をかけて大駒3枚を持っていますが、図の△2八銀で角を取り返されるため、大駒の枚数は互角です。あとは、互いの自陣の小駒をどう拾うかです。
控室では、少なくとも先手の負けはなく、後手が自陣の小駒をいくつか助けられるかどうかの勝負と見ています。
【持将棋】
互いに玉が相手陣に入り、詰ませる見込みがなくなった場合、持ち駒の数で勝敗を決するルール。大駒を1枚5点、小駒を1枚1点と計算し、互いに24点以上あれば引き分け(持将棋成立)、24点に満たなけば負けとなる。
なお、王位戦七番勝負では持将棋が成立した場合指し直しはせず、引き分けとして完結する。次局は第4局として行われる。
(八雲)
実戦的に後手が勝ちづらい
図は18時過ぎの局面。
ここまでずっと受けに回っていた木村八段ですが、図の数手前に△6五桂と打って攻め合いを目指しました。対して羽生王位は▲4三歩△5二金を利かしてからじっと▲9一竜と香を補充しています。互いにまだゴールは見えてきません。長い勝負になりそうです。
残り時間は、▲羽生15分、△木村31分。
控室の棋士に見解を聞きました。
「実戦的には後手を持って勝てるビジョンが見えにくいです。先手を持ちたいです」(石田四段)
「先手が飛び道具をたくさん持っているので、後手はリスクが高い局面が続きます。攻めるのも受けるのもぴったりした手が見えず、非常に分かりにくい局面です。すでに先手良しになっているのかもしれません」(広瀬八段)
【Twitter解説】
豊島将之七段>▲9一竜で後手の手が非常に悩ましいです。先手から厳しい狙いはないのですが、なにを指しても逆用される恐れがあります。(互角)
地味な好手が必要な局面
図は17時25分頃の局面。木村八段は遠く敵陣から角を利かせて8一の桂取りを受けました。ここの至るまでに先手は銀を角と交換することに成功しており、Twitter解説の豊島七段は、評価を互角に戻しています。
ただし、まだ逆転したとは言い難く、「先手から攻めると悪くなるので、何か地味な好手を指して手を渡したいところです。例えば▲4八飛などが考えられます」と先崎九段。
【Twitter解説】
豊島将之七段>△2七角の局面、先手も▲6四飛は△7三金があってできないので手が難しいです。後手は△4六歩からのと金作りが楽しみです。効率の良い手ではありませんが、歩を補充する▲7四竜や▲8二竜として△9三香なら▲9二角などが考えられます。(互角)
実戦は図から▲7四竜と歩を補充し、以下△4六歩▲7一竜と進んでいます。
(八雲)
差が詰まっている
17時を回ったところで羽生王位は▲5一飛と打ち込みました。もしこの手で先手良しなら、直前の△4一銀では、形が悪くても△5一銀と受けたほうが良かった可能性もあると言われています。
「木村八段は▲5一飛は大丈夫と見たのでしょう。実際検討すると、難しいのですが簡単にはうまく行きません。ただ、少し前よりは差が詰まった印象を受けます」(広瀬八段)
「先手にワンチャンスあってもおかしくないですね」(先崎九段)
【Twitter解説】
豊島将之七段>▲5一飛には△6四歩が予想されます。先程6三から打った歩を突くので気分は良くないのですが……。▲5一飛に△5三歩などと受けますと▲4二と△同銀上▲5二飛成がうるさいです。△6四歩としておけばそこで△6三角と受けられます。(後手やや有利)
(八雲)