2025年7月 5日 (土)

前日記者会見

前日の記者会見の様子です。

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【藤井聡太王位】
――藤井王位にとっては、小牧市は身近な印象と思われますが、対局場として小牧に訪れた印象、感想を聞かせてください。
「小牧には、こどもの頃に将棋大会でも来たことがあります。今回はタイトル戦として対局をさせていただけるというのは、非常にありがたいことと思っています。今日は小牧山の見学をしたのですが、濃尾平野を一望できる素晴らしい眺めで。戦国時代の戦略的な要衝であったというのも感じられました。こういった歴史もあらためて実感するところがあったと思います」

――先日棋聖を防衛されて、王位戦七番勝負を迎えられました。相手が永瀬拓矢九段ということで、今年に入って、王将戦、名人戦に続いて3回目のタイトル戦です。今年の2回のタイトル戦を踏まえて、永瀬九段にどのような印象をお持ちでしょうか。
「永瀬九段とは、今年に入ってからの王将戦と名人戦の2つのタイトル戦で対戦しまして。どちらも2日制のシリーズですので。その中で、私としても非常に勉強になることが多かったと感じています。2日制ですと、作戦の精度であったり、序中盤で遅れを取らずに互角をキープするということの重要性が、より高くなるかなということを感じたので。その辺りを意識しつつ、王将戦、名人戦のときよりも、さらに内容をよくしていけるように頑張りたいと思っております」

――対局2日目に、小牧市民館で大盤解説会が開かれます。多くのファンが注目する王位戦で、どのような将棋を見せたいか、メッセージとともに一言お願いします。
「今回の王位戦の開幕局、私の地元の愛知県での開催で。また、大盤解説会も開催していただけますので。対局をご覧いただけるファンの方に、最後まで楽しんでいただけるような、内容が充実した将棋が続くように、明日から2日間、全力を尽くしたいと思っております」

――小牧城は石垣を初めて築いた城であるとか、もしくは城下町を初めて信長が作った城であるとされています。藤井王位は信長推しとおっしゃられていたかと思いますが、信長のされたことについて共感されたことなどがありましたら教えてください。
「小牧山城の石垣なども、歴史的には非常に価値があるという説明をいただきまして。それが、まだ一般的ではなかった時代に石垣を築いたというのは、やはり信長の先見性の表れなのかなと感じました。また、小牧山といえば、戦略上も重要なところに城を築いたというところも含めて、センスというのが卓越していたのかなということは、改めて感じました」

――王将戦、名人戦で2手目に△3四歩を一度ずつ指されました。それ以降、今年に入ってからの藤井王位の挑戦というか、新たな取り組みについて、ご自身なりの手応え、感触の部分で、どういうふうに評価をされているか教えてください。
「2日制のタイトル戦という舞台で、いままでとは違った指し方をして。やはり、実際にそういう舞台で指してみないと得られない経験だったり、感覚というのはいろいろとあると思うので。そういった点では、自分としては一定の成果があったかなと感じています。ただ、一方でまだまだ、当然ながら経験として十分といえるということは、もちろんないので。引き続き、その展開に対しての対応力であったり、理解を深めていくために、取り組んでいく必要があるかなと思っています」

――小学校のときに小牧の大会に出ていたというお話しがありました。小学1年生のときに、初めて小牧の陣中将棋大会に出られたというお話を伺っているのですが。こどもの頃に小牧の大会に出られたときの思い出などがありましたら教えてください。
「小牧での大会には何度か参加をしていまして。私の記憶ですと、小学3年生のときに初めて大会で優勝することができたのですが。そのときに、記念品として、かなり大きな置き駒をいただきまして。それがこども心にも凄く嬉しかったということは、いまでもよく覚えています」

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【永瀬拓矢九段】
――小牧市に訪れた印象を聞かせてください。
「名古屋駅で降りることは多くて、名古屋市には多く伺っていたのですが、小牧市に来るのは初めてです。本日、小牧山の歴史観に伺って、歴史などを勉強させていただきました。藤井王位は地元ですから、たぶんご存知だったのかなと思ったのですけど。対局場のほうは、合掌レストラン大蔵様で、素晴らしい環境をご用意いただきまして。私は食べるのが好きなので、大蔵様の食事だったり、おやつコンテストで入賞されたおやつも楽しみにしたいなと思っております。とても素晴らしい環境を整えていただいて、集中できるのではないかなと思っております」

――今年に入って、王将戦、名人戦に続いて3回目の藤井王位とのタイトル戦となります。これまでの2戦を踏まえ、長年の研究パートナーである藤井王位の印象の変化、もしくはご自身の課題などを教えてください。
「藤井王位の印象としましては、絶対王者であり、近年、内容もよく、本当に手厚いという印象があります。課題は、そうですね。王将戦や名人戦のときと、対局の状況だったり、いろいろな状況・環境が変わっていますので、そこが変わったときに、自分なりにどう対応していくかが重要なのかな思っています。王将戦、名人戦で、今回王位戦ということで、どれも2日制ですけれども。先の棋戦で得られた経験値がありますので、そこを生かして対局したいなと思っております」

――対局2日目に大盤解説会が開かれます。ファンの皆さんにどのような戦いを見せたいか、メッセージをお願いいたします。
「私は近年、大盤解説の解説者、動画媒体の解説者をちゃんとして欲しいという風にいっていたら、伊藤(匠)叡王が来てくださり、藤井猛先生も来てくださりと、豪華な解説陣で。伊藤叡王は本格的な解説で、藤井猛先生は、面白い解説をされるんじゃないかなと思っておりますので。皆さま、将棋が、大盤解説に行っても敷居が高いと思われる方も多いかもしれませんが。行っていただくと、とても面白いですし、勉強になるかと思いますので、一度足を運んでいただければ、今回は素晴らしい解説陣が揃っているのではないかなと思っています」

――藤井王位とのタイトル戦は6回目だと思いますけれども。結果だけみると、なかなか永瀬九段の工夫なりが実を結ばないことも多いかなと思うのですが。ご自身の中では、これまで藤井王位と対局を重ねて来た中で、力が接近してきている、もしくは手応えを感じている、そういうことはありますか。
「手応えは、もちろんあるときも、瞬間としてはあるのですけど。1日や、2日間を見たときに、どれぐらい手応えがある瞬間が訪れているのかが重要なのかなと思うのですけど。棋力の接近に関しては、藤井王位に聞いたほうが、たぶん正確な判断をされているかなと思いますので。私としては、近づけたいなというふうに思い描いています。今回、6回目の藤井王位とのタイトル戦ということなので。藤井さんと多くタイトル戦を指している棋士に並んだわけですけども。藤井王位が年間を通して本当に安定されていますので、厳しい戦いになるのかなと思っています」

――小牧山城を見学されたときに、将棋と戦が似ているところがあるとおっしゃっていました。小牧山城は、石垣を作って、織田信長の先見性があるんじゃないかという話だったのですが。藤井王位とタイトル戦を重ねる中で、藤井王位の将棋に先見性があるなと感じるときはありますか。
「その瞬間は、こちらが目が追いついていなくて。数年経って見ると、藤井王位が先を走っていたというのが確認できる瞬間があるのですけど。その瞬間でいうと、私が追い付いていない瞬間が多いと思いますので。藤井さんが先に新しいものに目を付けて、これが新しい技術、素晴らしい技術だというのは、時代のトップランナーじゃないと、なかなか気づけないのかなと思います。私は結構、戦のマンガの『キングダム』が好きでして。とても勉強になるなと感じるんですけど。ただ、戦のノウハウみたいなものは、特にはないので。一つ一つ、本日のいろいろ案内していただき、解説もしていただきましたので。そういう部分を将棋に取り入れて――戦と将棋はやっぱり似ていると感じましたので。藤井さんはいろんな分野に長けていると思いますので。生かされているんじゃないかなと思います」