2019年9月26日 (木)

木村新王位インタビュー

感想戦終了後、木村新王位は報道各社のインタビューに応じました。

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――どのような気持ちでシリーズを戦われていましたか?

木村 (相手の豊島前王位は)とても充実されている方だったので、挑戦できたのはよかったですけど、いい勝負になればというか、ストレート負けをしないようにということをまず考えました。ただ、第1局はちょっと早く負かされる展開になってしまったので、悪い流れを早く変えなきゃいけないなとは思っていました。札幌(第2局)でもちょっと、逆転負けになっちゃって。第3局で勝ったときには、ほっとしました。

――シリーズの終盤はいかがでしたか?

木村 徳島の第5局が、もうちょっと頑張んなきゃいけないな、と。ちょっと淡白だったので。そういうことがないようにと思って、臨みました。豊島さんが、研究していてテンポが速いので、そういうところも落ち着いて対処できるようにということは考えました。

――今シリーズは竜王戦の挑戦者決定三番勝負もあわせると十番勝負ともいえましたが、戦われての印象はいかがでしたか?

木村 やっぱり、作戦の立て方がとってもうまいと思います。

――世代が違うということで、感覚の違いもありますか?

木村 そうですね。ついていくのがやっとといいますか。そういう意味では、作戦のところで随分、苦しみました。

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――これまではタイトルにあと1勝が遠かったですが、今シリーズは第6局でタイに戻されて、最終局を迎えるに当たってはどのような心境でしたか?

木村 あんまり意識しませんでした。悔いの残らぬようにとか、一生懸命やろうとか考えましたけど、いつも通りだったと思います。
――これまでなかなかつかめなかった最後の1勝を勝ち取れた要因は何だったと思われますか?

木村 いや、ちょっと分からないですね。たまたまだと思います。

――タイトルを取れた実感は?

木村 いや、あんまり、ありません。これだけ撮られてっから(カメラを構えている報道陣を手で示す)……それくらい……です。

――大盤解説会場に入られたとき、ファンの方々から大きな拍手が沸いていました。その瞬間はいかがでしたか?

木村 うれしかったですね。多くの方に支えていただきました。

――タイトルを獲得されたいまのお気持ちを改めて教えてください。

木村 結果を出せたということは大変うれしいことです。年齢は、取ってしまったんでしょうがないところで、精一杯やったということしかいえませんけどね。

――年齢を意識されることは何かありましたか?

木村 くたびれるとか、あんまりいいイメージのものは一つもありません。3年ぶりの二日制だったんですけど、やっぱり疲れてますし。そういったところでは、ちょっと戸惑いつつやっていたところもありました。

――そのような中で、今シリーズをどのように乗り越えられたのでしょうか?

木村 うーん、一生懸命やった結果ですので、「なぜ」ということはまだちょっと分かりません。ただただ無我夢中でやったというところです。

Dsc_7195(家族への思いについて聞かれ、目頭を押さえる場面もあった)

――誰よりも喜んでらっしゃるのはご家族であると思います。奥様、娘さんの存在。その辺りについて、お言葉をいただけますでしょうか?

木村 ……………………家に帰ってから、いいます(笑)………………。

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――この3ヶ月、竜王戦挑戦者決定三番勝負を含めた十番勝負を熱い思いで見守っていたファンの皆さんの声援は感じられていましたか?

木村 そうですね。前夜祭とか、王位戦に関していえば第1局、第3局、第5局とありまして、いろんな方にお声掛けいただきました。あとはファンレターとかもいただきましたし、とてもこう、「頑張れよっ」ていってくださっているのを感じました。実際、力になったかといったら、やっぱりなったと思います。ありがたく感じています。

――昨晩、封じ手のあと、夜は眠れましたか?

木村 はい、眠れました。とてもよく。

――これまではあまり眠れないこともあったと伺いました。

木村 そうですね。意識して寝るようにはしていました。前局の2日目(の前の夜)だけちょっと「おや?」っていう感じだったんですけど、その点はコンディションとしてはいいほうだったと思います。

――今日の終盤戦はだんだん勝利が近づいてくるという状況だったと思いますが、勝利の意識、あるいは緊張感など、どのような心境でしたでしょうか?

木村 勝ちを意識した時間が短かったんですよね。あっという間だったんですよね。(感想戦での検討でも)実際、最後、難しかったところもあって、あまり楽観しているつもりもなかったので。本当に、気がついたら終わってたというか。

――豊島王位が投了を告げた瞬間は感慨がありましたか?

木村 いやー、いつも通りだったような気がします。

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――最近は久しぶりに順位戦A級にも上がられて、強い木村先生が戻ってきたと思うのですが、何かやり方を変えて調子が戻ってきたということはあるのでしょうか?

木村 いや、私にも分かんないんで。気づけばずっと続けるんですけど。ちょっと分からない状況で。ただ、単純に、研究する時間が増えました。ですので、それがうまくいったということかな。

――タイトル獲得まで長い道のりだったと思いますが、タイトルの重みというのはどのように感じられていますか?

木村 そうですね、まあ…………縁がもうないもんだと思ってましたんで、あまり今回、意識することは正直いってありませんでした。ですので、これから意識することになるんでしょうか。

――今回、この年齢で結果を出されて、四段になられたのも23歳と決して早くはなかったと思いますし、将棋史においても極めて稀有な栄光だと思います。いままで誰もできなかったことをやれたということについてどのように思われていますか?

木村 今回はいい結果にはなりましたけれど、やっぱりこう、年齢が40代の半ばになって、現実的にはどんどんきつくなってるなということも感じます。タイトルを取れたということに関しては、よくできたなと思いますけど、これから先もどんどんきつくなってくんだろうなということも、実感してます。まあ、意識してもこればっかりは防ぎようがありませんので、自分なりに技術的な研究の時間を増やして頑張っていくしかないなと思っています。

――これまでタイトル挑戦は王位戦での挑戦が多く、今回の初タイトルも王位となりました。王位戦への思いを教えてください。

木村 挑戦者決定リーグから落ちないようにということをいつも意識してやっていましたので、5局やって3勝2敗だと、運が強くないと落ちるんですよね。いつも残留を目指してやって、残留が決まると、一つ勝てば挑戦者決定戦が目指せるという感じになるわけですね。いつもそこにしがみついてようと思ってたんですけど、たまたま今回はいい結果につながったということだと思います。

――今シリーズはニコニコ動画とAbemaTVでもずっと中継しておりまして、ファンの方から木村先生を応援するコメントがたくさんきています。最後にファンの方々に喜びのメッセージをいただけますでしょうか?

木村 皆様、どうもありがとうございます。いい結果にたまたまなりました。またこれからも頑張っていきたいと思います。ありがとうございました。

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