2012年7月11日 (水)

「不思議だなあ」

1_59藤井九段は▲5五歩(図)と突いた。控室ではこの手に代えて▲1一角△6一飛▲9一角成などが検討されていたが、どれも一筋縄ではいかない。見た目は先手がよさそうなのに、具体的によくする順を示すことができない。この▲5五歩は△同歩なら▲同角で弾みがつき、次に▲5四歩と取り込めれば後手陣を乱して攻めやすくなる。力をためた手なのだ。ただ、後手に△4六飛と切られる筋もできる点は一長一短。何より、ここで後手に手番を渡す不安がある。深浦九段は「藤井さんはいいと思っていないんでしょうね」と言う。だから直線的に進めずに含みを持たせようとしている、ということだろう。形勢よしと見ればシンプルに、悪いと見れば複雑に、が将棋のセオリーだ。深浦九段はもう一度局面を見て「不思議だなあ」とつぶやいた。

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(雲が空を覆い、風も出てきた。一雨きそうな雰囲気だ。予報は曇のち雨)

(文)