記者会見
(記者会見は着座して)
――八冠達成のいまの率直な感想は。
藤井 このような結果を自分自身も残せるとは思っていませんでしたので、うれしく思っています。一方で今回のシリーズは本当に苦しい将棋が多かったですし、実力としてまだまだ足りないところが多いと相変わらず感じていますので、その地位に見合った実力をつけられるように、今後いっそう取り組んでいかなくてはいけないと思っています。
――八冠の達成感や充実感は。
藤井 今日の達成はすごくうれしいことではあるのです。ただ、ずっとそれを目標にしていたというわけではないので、これからも変わらず取り組んでいきたいと思いますし、今回の王座戦の経験を今後の糧にもできたらと思っています。
――全冠制覇は羽生善治九段以来。並び立つことができたと思うか。
藤井 全冠制覇はチャレンジできる機会が今後、なかなかこないと思っていたので、今回達成できたことはすごくうれしいです。全冠制覇という点では羽生先生の記録と並ぶことはできたといえるかとは思うのですが、羽生先生の場合はそのあともずっとトップのプレーヤーとして活躍しておられるので、自身もそういった今後も息長く活躍できることをひとつ目指してやっていけたらと思います。
――今シリーズの内容については。
藤井 今回のシリーズはどれも難しい将棋だったと思うのですが、特に第3局と本局はどちらも終盤でハッキリ負けという局面がありましたので、本当に逆のスコアでもまったくおかしくなかったと思います。そういう点でも幸運な結果だったと思っています。
――シリーズを戦ってみて、改めて感じた永瀬前王座の強さについて。
藤井 どの対局でも準備をされて臨まれていると感じましたし、それを離れた中盤以降でも的確に指されることがすごく多かったので、永瀬王座の強さを感じるところが多かったです。勉強になったシリーズだったと思っています。
――八冠達成により、タイトル戦では予選やリーグなどを戦うことがなくなる。対して具体的にどのような勉強法でモチベーションを保っていこうとするのか。
藤井 今回のシリーズでいろいろ足りないところがあると感じたので、まずはそこを改善して、これまでと変わらず実力を高めていくことを目指していきたいと思っています。ただ、どうしても時季によって対局数に偏りができてしまうこともあるかと思うので、そのあたりをどう補っていくかは今後、取り組んでいくうえで考えたいと思います。
――歴代最強と評される棋士もいる。その点について。
藤井 特に時代の違う方との比較は一概にできないので、そういっていただけるのはうれしいことではあるのですが、自分自身は「そうではない」かなと思っています。また、ほかの方の将棋を見ていても勉強になることはすごく多いので、今後もそういったところから学んでいけたらと思っています。
――今後、棋士として目標は。また、棋士としてのゴールはどのように考えているか。
藤井 まずは実力をつけること。そのうえで面白い将棋を指したいという気持ちがあるので、そういったところを目指していきたいと思っています。本局でも中盤の難しいところでうまくバランスが取れなかったので、そういうところでうまくバランスを保てるようになれば、また違った将棋が指せるようになるかと考えています。
――将棋の面白さはどのようなところにあるか。
藤井 一言ではいえないと思うのですが、将棋は取った駒を持ち駒として使えるのが大きな特徴で、それによって中盤、終盤と局面が進んでいくにつれて複雑になっていくところが指していて面白いのではと思っています。私も将棋を指す中で、そういった局面に出会えたらいいなと思いながら指している感じです。
――今後の目標として記録など具体的に意識しているものはあるか。
藤井 タイトル戦が始まればそこで結果を残したいとはいつも思っているのですが、長期的な先の先のタイトル戦で勝ちたいとか、そういったことは意識していないので、長い目で見ると面白い将棋を指すことがいちばんの目標になるかなと思っています。
――地元の瀬戸市の皆さんに向けてメッセージを一言。
藤井 地元の方には私が棋士になる前から応援していただいて、ずっと励みになってきたので、すごく感謝しています。
――八冠は誰に伝えたいか。
藤井 家族や師匠には、またあとで伝えられたらと思っています。
――八冠を達成した喜びを。
藤井 対局をご覧いただきましてありがとうございました。この王座戦は第3局と第4局、どちらも苦しい将棋で、まだなかなか実感がないのが正直なところでもあります。ただ、今回の王座戦で八冠にチャレンジするのはすごく貴重な機会かと思っていましたし、それをつかめたのはうれしく思っています。今後もしっかり取り組んで、皆様にこういう将棋をお見せできればと思っています。
(飛龍)