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2022年10月

2022年10月 4日 (火)

永瀬王座の自戦解説について|NIKKEI LIVE

第70期将棋王座戦(日本経済新聞社主催、東海東京証券特別協賛)の五番勝負は永瀬拓矢王座が3勝1敗で挑戦者の豊島将之九段を下し、王座戦4連覇を達成しました。

NIKKEI LIVEでは10月12日に五番勝負第5局の大盤解説会に代わって、永瀬王座による自戦解説をライブ配信します。今期王座戦五番勝負を振り返りつつ、「会心の譜」を選んで解説してもらいます。聞き手は室谷由紀女流三段が務めます。

詳細はこちらです。

https://www.nikkei.com/live/event/EVT220929001



以上で本局の中継を終わります。
来期もご注目ください。

(牛蒡)

囲み取材

感想戦後に各メディアによる永瀬王座の囲み取材がありました。

Dsc_0699

――いまの気持ちは。

豊島九段とはタイトル戦を1回やってタイトルを獲られています(第5期叡王戦七番勝負)。藤井(聡太竜王)、渡辺(明名人)、豊島に番勝負で1回も勝てていなかったので、勝つことができてよかったと思います。

――7月8月は不調に見えました。(8月末に開幕した)シリーズの序盤はいかがでしたか。

去年も同じことをやったので気をつけていたんですけど、同じ状況になって驚きました(永瀬は去年の7~8月も敗戦が多かった)。気をつけても防げない要素もあるかもしれませんが、(今年7月から8月1日までの)5連敗はワーストだと思うので、かなり厳しい状態だったのかなと思います。

――そこから立て直せた要因は。

もし2局目で敗れて2連敗してしまうとかなり厳しいので、本当に勝負どころだったと思います。将棋としてもかなり厳しい内容でした。そこを何とか千日手に持ち込むことができて、流れが変わって、徐々に(よくなっていった)という感じかもしれません。

――自身の調子も上向いてきていますか。

悪い時期といまの自分を比べて、どこが自分に合っていて、どこが合っていないのかという考え方をしています。それがうまくかみ合ったというか、自分がいい状態を目指すにはどうすればいいのか、それが少しずつ実現できているのかなと思います。

――来期は3人目の名誉王座の資格(5連覇もしくは通算10期)が懸かってきます。

いつもどおり頑張るしかないと思いますが、めったにない機会ですので、ものにしたいなと思っています。

――世間では藤井聡太竜王の全冠制覇を期待する声もあります。どのように立ち向かいますか。

それをどうにかするには、自分がタイトル戦に出て、ちょっとひや汗をかいてもらうしかない。タイトル挑戦をしない限りは、なかなか(全冠阻止の)役目を果たせないのかなと思います。

――番勝負中に30歳になりました。30代はどのような戦いをしたいですか。

現状は何も変わっていません。30代になって、より勉強するようになったかなくらいです。20代とは違う点もあると思いますので、ちゃんと考えながら仕上げていきたいと思います。

――今日の棋聖就位式で藤井聡棋聖が(棋聖戦第1局で2回の千日手から永瀬に敗れたこと踏まえて「体力面を鍛えないといけないと感じた」と話していました。永瀬王座はご自身の体力についてどう思いますか。

もともと将棋体力は高いと思いますが、技術がともなってくれば、もっと焦ってもらえると思います。藤井棋聖・竜王には、ながらく教えていただいていますけど、語弊がありますが名古屋の方は(体力が)あるなと思っています。別に(棋聖戦の)1局目のときも相手の体力が減っているという印象はありませんでした。でもそういうふうに考えていただける、こちらの長所であるというのであれば、それを生かしていきたいと思います。

――本年度後半はどう戦っていきますか。

王将リーグが始まりましたし、(順位戦)A級が3回戦まで終わりました。1勝でも多く勝つことを目標にします。また、豊島九段との戦いでは得るものが多く、何が足りないのかもよくわかったので、そこを今後は生かしていきたいと思います。

――具体的に何が足りなかったでしょうか。

1局目は準備が足りませんでした。本局においては神経を使わされる展開で、実戦的に指しきるのはかなり難しいと思いました。そういう指し方も学んでいかなければいけないと思いました。

――ファンに向けて一言。

防衛という、いちばんよい結果になって、ほっとしています。今回の番勝負ではかなり収穫がありました。これを糧に頑張っていきたいと思います。あと7月8月が例年かなり厳しいので、そこを気をつけてまた頑張りたいと思います。

(牛蒡)

感想戦

Dsc_0617 

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Dsc_0600 

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(牛蒡)

終局直後

Adsc_0499(永瀬王座は4連覇達成。来期は5連覇と名誉王座獲得に挑む)

――本局について。

永瀬「穴熊対右玉という陣形差のある将棋でした。こちらがかなり神経を使う将棋で、自信がないかなと思いながら指していました」

――よくなったと思った局面は。

永瀬「△2一香(180手目)とかで入玉が確定してくれば持ち駒は豊富ですので、後手玉は寄らなくなってきていると思いました」

――シリーズ全体について。

永瀬「全局角換わりというシリーズでした。腰掛け銀から早繰り銀まで、角換わりのなかでもいろいろな形を指せたと思います」

――4連覇について。

永瀬「1局目はかなり準備不足でした。かなり厳しいと思いながら指していました。2局目以降は苦しくなってからも頑張れたので、それで徐々に好転していったと思います」

Adsc_0490(敗れた豊島九段)

――本局について。

豊島「仕掛けが無理気味だった気がします。角を取り返したあたりは(96手目△3七馬で)桂損なので少し悪いかもしれないですけど、そのあたりで何か別の手段があったかもしれません。でも基本的には、ちょっと苦しい時間が長い将棋だったのかなと」

――シリーズ全体について。

豊島「だんだん内容が悪くなっていってしまって、もうちょっといい将棋を指したかったんですけど、実力不足だったのかなと思います」

――第2局の千日手局を決めきれなかったのは痛かったでしょうか。

豊島「確かにあとで調べたらいろいろな筋がありました。手を戻したときに自玉がどれくらい安全になっているかわからなかったので……。あの将棋は痛かった気がします」

Adsc_0511(終局直後に主催者インタビューがあった)

Adsc_0528(感想戦の前に大盤会場へ移動)

Adsc_0547(本局と五番勝負全体について一言ずつ述べた)

豊島「本局は仕掛けが無理気味で、苦しい時間の長い将棋でした。シリーズも途中からどんどん内容が悪くなってしまい、実力不足だったと思います。実力をつけていきたいと思います」

永瀬「本局は自信がないと思っていました。こちらは網が破れるとすぐにダメになってしまうので、一日を通して厳しい時間が長かったと思います。(勝ちになった局面を問われて)最後の最後で入玉が確定して、こちらは持ち歩が9枚10枚あり、相入玉は難しいと思いましたので、そのあたりでやっと勝ちになったんじゃないかなと思いました。(防衛については)1局目の内容がだいぶ悪かったので、厳しいシリーズになるのは間違いないと思いました。そこから少しずつですが内容をよくして、2局目をしのぐことができたのが大きかったです」

(牛蒡)

永瀬王座が防衛

Ouza202210040101184184手まで、永瀬王座が豊島九段を下しました。終局時刻は20時41分。消費時間は▲豊島5時間0分、△永瀬5時間0分。この結果、五番勝負は3勝1敗で永瀬王座が防衛。4期連続4度目の王座を獲得しました。

(八雲)

双方一分将棋

220416920時27分、豊島九段も図で一分将棋に入りました。後手はいよいよ入玉に向けて動き出しました。もし入玉すれば不敗の態勢です。一方、先手が穴熊から入玉するのは大変。7九飛も逃がさなければいけません。

(牛蒡)

永瀬王座、一分将棋へ

220415820時17分、△2六角(図)で永瀬王座は一分将棋に入りました。豊島九段は残り6分。終局の形が見えない状況で形勢が揺れ動くかもしれません。この先、どのような結末が待っているのか。予断を許さない状況です。

Dsc_0469(先の見えない終盤戦。佐々木勇七段は立ったまま検討する)

(牛蒡)

渾身の挟撃形

2204151飛車取りに成香を寄って図の局面。▲2二成香は3四に銀がいる段階(たとえば138手目の局面)でも指せました。本譜は飛車成りのお手伝いをしているようですが、△3八飛成には▲2三成香で勝負するつもりです。この挟撃形に先手はかけました。狙いとしては▲7四成桂~▲6四成桂△同玉▲6五金からの5筋突破があります。先手が苦労している状況に変わりはありませんが、常に嫌みのある攻め方をしています。後手を楽にはさせていません。永瀬王座も残り時間が少なくなってきました。その点では永瀬王座も苦しい状況です。

(牛蒡)

豊島九段、最後の長考

2204140_2前記事(リンク)から動きはなく、豊島九段は30分以上の考慮に沈んでいます。19時30分、豊島九段は残り18分になりました。これが最後の長考です。永瀬王座は34分ほど残しています。先手が後手玉を捕まえるのは難しいでしょうか。勝負手として▲4三金が示されましたが、△3八飛成▲6七桂△6五歩▲7五桂△6四玉▲7三成香△同金は後手が余していそうです。

Img_4564(19時26分、モニター映像)

(牛蒡)

入玉も視野

22041403四にいた銀を2五に上がって図。△2五銀右は140手目の指し手。本局は今期五番勝負で最も手数の長い将棋になりました。直近の狙いは飛車を成り込むことです。検討陣によれば、後手は敵陣開拓から最終的に入玉も視野に入っていそうとのこと。△2五銀右は中央の守りを薄くしている点が気がかりですが、代えて△4三銀は▲4二金がありました。

Dsc_0130(昼食休憩が明ける直前の永瀬王座)

(牛蒡)

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