深浦九段に師匠・花村元司九段の定山渓対局を振り返ってもらいました。1962年の第3期王位戦七番勝負第4局▲花村八段-△大山王位の対局は、大山3連勝で迎えた一番です(肩書・段位はいずれも当時)。
花村九段の棋風について、深浦九段は「あちこちから手を作ります」と語ります。実戦は▲5五歩△同歩▲6六銀とし、後に▲5五銀から▲5八飛と中央に戦力を集中させました。ただ、図の△3四銀が5筋を薄くして動きを誘ったようにも見えるので、難しい駆け引きです。
▲4三角に絶妙の手順があります。△1二角▲6一角成△3三玉です。
玉寄りは▲4三歩成を防ぎながら、端角の利きを通す攻防手です。以下▲7七銀△5六銀▲5八金寄△5五桂と進みました。
銀をグイッと出て、角と連携して6七の地点を狙うことに成功しています。△5五桂に▲6八金上と受けるも、△4六歩からのと金攻めが厳しく、以下は花村八段の猛攻を大山王位がいなして王位3連覇を決めています。
「▲4三角に△1二角から△3三玉で思い出しました。10年以上前に大山康晴全集で並べた記憶があります。なかなか考えられない受けでした」と深浦九段。定山渓で生まれた名手順でした。