2014年9月25日 (木)

1日目の流れと封じ手

第7局は羽生王位が矢倉を選びました。午前中はスローペースでしたが、午後に入って戦いが始まります。前例も多いなか、先に工夫を見せたのは羽生王位です。

20140924akimurahabu60ここで▲1四歩と垂らしました。前例が多いのは▲1三歩(8局)で、▲1四歩は1局のみ(結果は後手勝ち)です。

20141021ahabukimura612歩を打って端を攻めるので同じようですが、意味合いは大きく異なります。それぞれ△3七銀と打った局面から比較してみましょう。

20141021ahabukimura622まずは左図(▲1三歩△3七銀)の局面から。△3七銀以下、▲6八飛△2六銀成と進むのが一般的です。

20141021ahabukimura1338 飛車を追い払って自玉を安全にし、攻め駒を責める。図を見ればわかるとおり、先手は桂取りが受けにくいです。すべての前例が▲1四銀と打っており、銀で桂にヒモをつけています。それは「先手は桂をさばきにくい」という弱点を抱えていることが現れていると言ってもいいでしょう。

では、本局の▲1四歩の形はどうでしょうか。△3七銀(封じ手の局面)をもう一度見てみましょう。

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△3七銀以下、▲6八飛△2六銀成と桂を責められても、先手は▲1三歩成や▲1三桂成でさばけます。つまり、▲1三歩の形よりも、▲1四歩の形のほうが2五桂は負担になりにくい。そして、▲1四歩の形は攻め駒を責めようとする△3七銀を空振りにさせることができる可能性を秘めていることを意味します。▲1三歩と▲1四歩はわずか1マスの違いですが、局面の性質を大きく変えているのです。

さて、問題の封じ手予想ですが、▲1三歩成が人気でした。

20141021ahabukimurafuujite「飛車も逃げずに、もっとスムーズに攻めよう」という手です。端から駒をさばけば攻勢をしばらく取れるため、これが自然ではないかと予想されました。

駒をさばいて局面の流れを早くすればするほど、先手は△3七銀を空振りにさせることができる可能性が高まります。そうなれば先手が優勢です。逆に、後手は手番がまわれば手駒をいかして厳しく反撃できます。先手の攻めをうまく凌げば楽しみが多いため、辛抱しがいのある将棋だと言えるでしょう。

羽生王位がスピードをコントロールしてうまく攻めるのか。それとも木村八段が受けの妙技を見せるのか。両者の持ち味が存分に出そうな展開です。ぜひ2日目もご覧ください。

(紋蛇)