伊藤沙恵女流名人に西山朋佳女王・女流王将が挑戦する、第49期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負が開幕します。
伊藤女流名人は前期に里見香奈の女流名人連覇を12で止めて、9回目のタイトル挑戦で初戴冠を果たしました。今期は初防衛戦となります。西山女王・女流王将は女流名人戦初参加にして、挑戦権を得ました。女流名人の初獲得と三冠復帰を目指す戦いです。
これまでの対戦成績は伊藤3勝、西山10勝(両者が奨励会時代を含む)。タイトル戦で戦うのは、2021年の第14期マイナビ女子オープン五番勝負(西山がフルセットで防衛)に続いて2回目です。直近の対局は昨年9月の第30期大山名人杯倉敷藤花戦で、西山女王・女流王将が制しました。
第1局は1月15日(日)に神奈川県箱根町「岡田美術館 開化亭」で行われます。対局開始は9時30分、持ち時間は各3時間、昼食休憩は12時から13時。開幕局なので、先後は振り駒で決めます。立会人は塚田泰明九段、記録係は安食総子女流初段。スポーツ報知の観戦記は松本哲平さんが執筆します。
本局はYouTubeで対局開始から動画中継されます。13時30分から始まる大盤解説は、高見泰地七段と中村真梨花女流三段が担当します。
【日本将棋連盟公式YouTubeチャンネル】
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本局の中継は棋譜・コメント入力を牛蒡、ブログを紋蛇がお送りします。よろしくお願いいたします。
【報知新聞社】
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【株式会社ユニバーサルエンターテインメント】
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【岡田美術館】
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【第1局の棋譜中継ページ】
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感想戦終了後、伊藤沙恵新女流名人への記者会見が行われました。
―― 改めまして、初タイトル獲得の思いをうかがえますでしょうか。
伊藤 実感が湧かないですね。すごく長かったような気がします。
―― 長かったというのは歳月やそれとも何度も何度もチャレンジというところもあるかと思うのですが、そのあたりについてはいかがでしょうか。
伊藤 苦しかったんで、タイトル戦に挑戦できるっていうことはそんなに何度も経験できることではないのでうれしいんですけど、やっぱり負けたりするときついので、今回は結果を残せてよかったなあと思います。
―― 支えてくださっているお母様から戦前に、「沙恵のまだ見ぬ景色を見てみたいという強い願いがかないますようにと切望しています」とのメッセージをいただきました。そのお言葉を受けて、どのような思いでいらっしゃいますでしょうか。
伊藤 ずっと応援してくれて、サポートもしてくれて、すごく感謝しています。ようやく親孝行できたなって思いますね。
―― 第3局で、ちょっと完敗という内容だったかと思うんですが、そのあと公式戦で結果も伴わないという状況で本局を迎えられたと思うのですが、その間、心の揺れ動きなどはなかったのでしょうか。
伊藤 いや、結構ありました。3局目は見せ場も作れなくて早い段階で形勢を悪くしてしまいましたし、2月は勝っていなくて、正直、これじゃーダメだなと感じだったんですけど、でも、師匠から言葉をもらって、すごく勇気づけられたんですよね。やっぱり応援してくれている人の気持ちに応えたいなというのはずっとあったので、気持ちを切らさずに頑張りたいなと思いました。
―― その師匠の屋敷伸之九段からうかがっていまして、「大変なことが長く続いて、多かったと。ただ、それは無駄ではなかった。何故ならその経験が生きるからだ。結果というものが出ればさらなる修行というものは続けられるものだ。里見さんや西山さんはまだまだ高い壁で、逸れに迫る活躍をしてほしい。おめでとう」という言葉をいただきました。その師匠に対して、存在というか、お言葉をうかがえますでしょうか。
伊藤 (涙をながしながら)めちゃくちゃありがたいです。本当に感謝しかないですね。お会いするといつも通りなんですけど、応援してくれているのも分かりますし。お言葉もありがたいですし。お会いしてもいつも通りに接してくれるのもありがたいですし、すごく大きい存在なので。1つ結果を残せて、少しは恩返しできたのかなと思います。
(最後はマスクを外しての撮影。記者のリクエストに応え、一冠のポーズを取った)
以上で第48期五番勝負第4局の中継を終了いたします。第48期女流名人戦の中継をご観戦いただきましてありがとうございました。第49期もどうぞお楽しみに。
(潤)
終局後、両対局者に主催紙インタビューが行われました。
□伊藤新女流名人のインタビュー
-- 一局を振り返って。
序盤はゆっくりしているとまずくなるのかなと思って、自ら駒をぶつけていました。遠い場所の開戦で相手にはしてもらえないかと思いましたが、仕掛けられたあたりは難しいのかなと思って指していました。
-- 序盤を振り返って。
こちらは自然に指し進めていたつもりでしたが、少しわかりませんでした。
-- 先にと金作った局面(46手目)について。
と金が生きる形にしたいなと思っていましたが、桂を逃げられるような変化もあったので、と金が残ってしまわないように指したいと思っていました。
-- △4九飛(58手目)と攻めに転じた局面は。
わからなかったです。天守閣美濃は飛車に強い形ですので。ただ、こちらも割と堅めの陣形でしたので、難しいのかなと思いました。
-- ▲2五桂(61手目)あたりの中盤戦について。
できれば中央に使いたいはずの桂だったと思うので、こちらはこちらで主張があるのかなと。
-- よくなったと思った局面は。
ずっとわからなかったんですよ。玉頭戦なので1手間違えるとすぐに終わってしまうので。最後の最後まで本当にわからなかったです。
-- 最終盤はどのような思いで指していたか。
時間がどんどんなくなっていく中で、間違えないようにしたいなと思っていました。
-- 勝ちを確信したのは。
△8六桂(112手目)と打ったところで、受けが難しそうなのかなと思いました。
(質問に目を赤らめる場面も見られた)
-- 初挑戦から7年、9度目の挑戦でのタイトル獲得について。
うれしいです。ずっと応援してくださる方がいらっしゃったので、結果を残せてよかったなと思います。
-- 里見女流名人からタイトルを獲得した点について。
これだけ長くの間、いろいろなタイトル戦で安定した成績を収められている方なので、すごいなと思います。こういう舞台で何度も戦わせていただいて、うれしいです。
これまでいろいろ経験をさせていただき、確実に自分の成長につながっているのかなと思います。将棋に対する向き合い方などが変わったのかと思います。
-- これからの夢について。
タイトルを持たれている方は、素晴らしい方、強い方ばかりです。自分も見合った実力をつけなければいけないと思うので、これからもがんばっていきたいです。
■里見女流名人のインタビュー
-- 一局を振り返って。
うまく仕掛けることはできたと思いましたが、攻め方がひどくて、時間を使った割に正解が指せなかったのが悔やまれます。
-- 序盤について
いい形で仕掛けることはできたので、作戦的にはまずまずかなと思っていました。
-- 4筋に飛車を回った構想(43手目)は。
いちばん自然に指したつもりだったので、いけると踏んで本譜で攻めていきました。
-- 飛車交換から▲4一角(53手目)と据えた局面について。
▲3四角と迷っていました。本当は切り合っていく順を考えていたのですが、自重してしまって均衡を保てませんでした。攻め方が変だったと思います。
-- ▲2五桂(61手目)と跳ねた局面について。
当然▲6三角成と切って、中央に桂を活用しなければいけませんでした。ちょっと大局感がおかしかったです。踏み込んでいく順を考えていて、そちらを選ぶべきでした。
-- 終盤について。
あっさり、と金を金と交換した(67手目)のですが、やや苦しく、細い攻めになりました。馬が使えていないのがひどく、苦しいかなと思っていました。
-- 今期の4局を振り返って。
スタートダッシュが悪くて、1、2局目でだいぶ乱れてしまいました。そのあたりが自分の弱さかなと思っていました。
-- 17歳から守り続けた女流名人を失った点について。
いつかは当然負けてしまうことはわかっていました。ただ、長きにわたってタイトルを保持していく中で、人間的に成長させていただくことがかなり多かったので、女流名人戦という棋戦に感謝したいです。
-- 20代最後のタイトル戦だった。指し盛りを迎えるにあたってどのような目標があるか。
ソフトが普及してきていて、振り飛車が厳しいとされている時代ではありますが、その中で自分の個性を生かした将棋を指せていけたらと思います。
(書き起こし=武蔵)
(潤)
第48期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負第4局は、114手までで伊藤女流三段の勝ちとなりました。終局時間は17時54分で、消費時間は▲里見2時間57分、△伊藤2時間57分。この結果、伊藤女流三段が3勝目を挙げて、初タイトルを獲得。新女流名人となりました。
(武蔵)