対戦成績は藤井王座15勝、永瀬九段7勝と王座がリードしています。タイトル戦で争うのは今回で3度目。前期の王座戦五番勝負は永瀬王座に七冠を保持する藤井竜王・名人が挑む歴史的なシリーズになりました。藤井竜王・名人が3勝1敗で王座を獲得し、前人未到の八冠独占を達成しています。
雪辱を期す永瀬九段は今期、挑戦者決定トーナメントから出場。郷田真隆九段、菅井竜也八段、鈴木大介九段に勝って挑戦者決定戦に進むと、羽生善治九段を破って挑戦権を得ました。前期と立場を入れ替えてのリターンマッチに挑みます。
陣屋での対局は藤井王座が2回目、永瀬九段が7回目です。永瀬九段は王座戦では初挑戦の第67期以来6期連続。注目すべきは永瀬九段の成績で、通算では5勝1敗、王座戦は5戦全勝です。
■永瀬九段の陣屋対局成績(対局相手の肩書は当時)
2023年 ○藤井聡太竜王・名人 王座戦五番勝負第1局
2022年 ○豊島将之九段 王座戦五番勝負第4局
2021年 ○木村一基九段 王座戦五番勝負第3局
2020年 ●豊島将之竜王 叡王戦七番勝負第8局
2020年 ○久保利明九段 王座戦五番勝負第1局
2019年 ○斎藤慎太郎王座 王座戦五番勝負第1局(千日手指し直し)
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控室では青野九段、森内九段、野原女流初段が色紙に揮毫していました。東京で行われる大盤解説会の景品です。野原女流初段は森内九段門下。陣屋に立ち寄ってから東京に向かうとのことでした。大盤解説会は会場受付を締め切りましたが、オンライン視聴は申し込みが可能です。色紙は来場者だけでなく、オンライン視聴者用にも用意されています。
【第72期将棋王座戦第1局 佐藤天彦九段が大盤解説、9月4日に - 日本経済新聞】
https://www.nikkei.com/live/event/EVT240712002
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控室には勝又清和七段が取材で訪れ、日本経済新聞の解説を担当する森内九段と継ぎ盤で検討しています。森内九段に本局の展開について聞きました。「後手は△4六銀(34手目)と歩を取りましたが、△5五銀~△6四銀と戻ったので手が遅れています。先手は手得を生かして玉を固めました」。実戦は△4六銀以下、▲6八玉△3二玉▲7九玉△5五銀▲8八玉△6四銀▲7二歩と進みました。
森内九段は「▲7二歩(41手目)は積極的ですね。▲9六歩など、いろいろあるところでした」と永瀬九段の指し手に注目します。ここから△7二同飛▲8三角△8二飛▲4七角成と進みました。
先手は馬の存在と玉の堅さ、後手は歩得が主張といえます。森内九段は「馬と玉の堅さで先手を持ちたい人が多いと思います」と見解を語ったうえで、「歩切れは大きいですね。1歩入手したいんですけど、歩がぶつかるところがあまりないので、3筋で入手できれば指し方に幅が出るんですが」と先手の懸念材料について話します。
序盤は比較的早い進行でしたが、今後の展望についてはどうでしょうか。森内九段は「ここまでは作戦通りということでしょう。前例が多くない形なので、ここからポイントが見えにくくなってきます。しばらくはお互いに一手一手が難しい展開が続くと思います」と語りました。
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対局場の「元湯陣屋」は神奈川県の鶴巻温泉にある老舗旅館です。1918年(大正7年)、三井財閥の御寮(別荘)として「平塚園」が建てられ、現在の陣屋の起源になりました。囲碁・将棋のタイトル戦の舞台としても知られ、王座戦ではタイトル戦に昇格した1983年より前から対局を行ってきた縁があります。館内には対局写真や揮毫色紙など、貴重な資料が展示されています。
1952年(昭和27年)には昭和将棋史に残る「陣屋事件」が起きました。前年の12月から第1期王将戦七番勝負が木村義雄名人と升田幸三八段(肩書は当時)で争われ、第5局を終えて升田八段が4勝1敗とします。升田八段の王将位獲得が決まるとともに、当時の王将戦の規定に従って第6局が升田八段の香落ちで行われることが決まりました。ところが、対局場の陣屋を訪れた升田八段は迎えがなかったことに憤慨して対局を拒否。背景には、名人の権威を思う升田八段の葛藤があったとされます。この事件以来、陣屋では来客があると、入り口の太鼓を鳴らして迎えるようになりました。
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