前夜祭 対局展望
(左から飯野女流1級、室谷女流二段、清水女流六段、森下九段、相川女流初段。5人が対局の展望、岡田美術館の感想などを語った)
(清水女流六段)
明日、立会人を務めさせていただきます、女流棋士の清水市代です。どうぞよろしくお願いいたします。向かうところ敵なしで、ひたむきに将棋に向かい、進化し続ける里見女流名人が、その実力を遺憾なく盤上にどう発揮してくるか。彼女はチャレンジという言葉を胸に秘めているような気がします。新しい里見香奈を見せよう、という気持ちをたいへん強く感じるので、いままで見たことのない里見女流名人の将棋が見られるのではないかなと、私もたいへん楽しみにしております。挑戦者の上田女流三段は、小さいころから女流棋界で暴れん坊のように活躍をされていて、才気煥発というイメージだったのですが、いい伴侶を得られて、家庭を持たれてから、柔らかさというものが出てきた気がします。先ほどの上田挑戦者のごあいさつの中でも、岡田美術館さんの展示に愛情を感じたとおっしゃっていました。そうした柔らかさが盤上に出るのではないかと思っております。
私は昨年も岡田美術館さんを見学させていただきまして、対局前だったんですけども、心が洗われるような気持ちで、歴史があるものは初心者でも心に響くんだなと教えられて対局に臨めました。そして勝利に結びつけることができました。岡田美術館にはいい思い出しかないんですね。昨年とは違う作品がたくさんありまして、懐の広さに驚かされました。事前に団体行動なので注意事項があったのですが、時間も限られていますので、ひとりだけ別のフロアに見にいったりしないでくださいねと、多分私が注意されていたんだと思います。しかし、いい作品の前ではついついそういうことを忘れてしまいまして、また寺元副館長がたいへんいい方ですので、こっそり説明していただいて、とっても有意義な時間を過ごさせていただきました。きっと対局者も明日への大きなエネルギーをいただけたことと思います。
(森下九段)
皆さまこんばんは。清水さんのあいさつが素晴らしすぎてプレッシャーを感じております。先ほどのあいさつでうかがいましたが、里見さんが18勝1敗、上田さんが23勝6敗。私、この半年勝ったことがないんですよ。あやかりたいなというのが正直なところでございます。里見さんはここ7~8年でしょうか、圧倒的な強さを誇っておられますけれども、上田さんもお母さんになられて、いままでと違った力を身につけてこられたのではないかと思います。新聞のインタビュー記事で上田さんが「勝つしかない」とおっしゃっていました。それは本心ではないかと思います。私は「勝ちたい」なんですけども。明日は里見さんと上田さんの将棋を解説させていただきながら、お二人の勝つ力を分けていただきたいと思っております。私、箱根の地には数年前までたびたびおじゃましていたんですが、子どもが大きくなりましてから、ここ数年足が遠のいていました。今日は久しぶりにバスで箱根の山をぐるぐる登りまして、昔を思い出しました。また足繁く通わせていただきたいと思っております。
私、実は禁酒中なんですね。3年間の禁酒を誓いまして、ただ、いよいよ残り2ヵ月半になってまいりました。今日、このぐい呑みで一杯やったらいいなというのを眺めていましたら、1億まではいかないそうです、ということをうかがいまして、いやいやいやいや、これで一杯やりたいけど、ちょっと、ちょっと分不相応かなと思いました。また、最近は古代中国の本を読むことに凝っておりまして、日本でいいますと三種の神器、昔の中国では「鼎」といったらしいんですけども、「鼎の軽重を問う」という言葉がそこから来ているらしいんですが、写真では何枚か見たんですが、実物を初めて見ました。だいたい2600年から2500年くらい前というふうに説明書きにあったと思うんですが、これが鼎の軽重を問うの鼎だったんだなというのを間近に見まして、古代中国の方々に思いを馳せることができました。
(室谷女流二段)
昨年に引き続きましてこちらに来させていただきましたことをうれしく思っております。昨年、岡田美術館を見学させていただいたときは、全部見ることができなかったんですけれども、2回目ということで、じっくり見ることができました。何百年、何千年という昔のものが、いまもきれいに残っていることに感動しました。そのあとは今年も足湯に入りまして、大きな風神雷神図を拝見しました。
美術は疎くてですね、わからない点が多かったんですが、今年は小林館長がマイクで全員に伝わるように説明してくださいましたので、非常にわかりやすく、全部の作品をもう一回見たいと思えるようなツアーになりました。私は昨年この岡田美術館に来させていただいてから、本当にいい一年を過ごさせていただきました。ですのでまた今年もいい一年になるような気がします。皆さまもぜひ美術館を足を運んでいただいて、午前中に美術品を見ていただけたらと思います。
(飯野女流1級)
先ほど岡田美術館を見て回りまして、足湯に入りまして、こうしておいしい料理をいただいたりと、本当に幸せで贅沢な一日を過ごさせていただいております。明日の対局ですが、里見さんも上田さんもオールラウンダーなので、戦型がとても楽しみです。
美術館では歴史あるものを眺めていて、感銘を受けました。途中で将棋の駒を描いたお皿があって、そこに角、歩、桂、香、銀が描かれておりまして、なんでこの駒だったのかなと気になりました。全部は見きれなかったので、家族で一緒に来たいなと思いました。
(相川女流初段)
お二人ともいろいろな戦法を指されますので、明日の対局が楽しみです。岡田美術館では短い間ですがいろいろな作品を見ることができ、とても感動しましたので、今度は家族で来たいと思います。
(書き起こし・文、写真・吟)