前夜祭(1)
【主催者挨拶】
佐野俊郎・株式会社報知新聞社執行役員ビジネス局長
「皆様こんばんは。本日は大変お忙しいなか、第43期岡田美術館杯女流名人戦の第2局前夜祭にお越しいただきましてありがとうございます。私は本日、東京から空路で参りましたが、昨日の夕刻の2便が欠航になっておりまして、今日、ひょっとしたら来れていなかった可能性もありまして、この場にいれたことにホッとしております。
本棋戦は1974年に女流棋戦を盛り上げようというところから始まりまして、第42棋から冠名をユニバーサル杯から岡田美術館杯と変更して、2年目を迎えております。これもひとえに将棋ファンの皆様や、関係者の皆様のご支援の賜物と、深く御礼申し上げます。
今期は里見香奈女流名人の8連覇が懸かっております。挑戦者の上田初美女流三段は、激戦のリーグ戦を勝ち上がってこられました。お二人の対決は4年ぶり。そのときはフルセットの激戦で、今期もそういった戦いが見られるのではないかと期待しているところであります。
箱根町で行われた第1局では、熱い戦い、熱い攻防が見られ、上田女流三段が鬼手▲5一角を炸裂させて先勝されました。そしてこの第2局は、里見女流名人の地元、出雲市で行われます。ここでイナズマを発揮されて、タイに持ち込むか、はたまた上田女流三段が連勝されて、女流名人のタイトルに迫るか、いまからワクワクしているところで、その期待に応えていただける戦いになることを確信している次第です。最後になりましたが、本棋戦に携わっていただいている日本将棋連盟様、特別協賛のユニバーサルエンターテイメント様、岡田美術館様、ならびに関係各位の方々に、この場をお借りして厚く御礼申し上げます」
東和男・公益社団法人日本将棋連盟常務理事
「皆様こんばんは。まずはじめに、世の中をお騒がせし、ご心配をおかけしていることを深くお詫び申し上げます。いろいろご意見があろうかと思いますが、これからも将棋界をご支援いただけますよう、お願い申し上げます。
この出雲市での開催も恒例になっておりまして、長岡・出雲市長様、出雲市の関係者の皆様におかれましては、盛大に歓迎をいただきましてありがとうございます。
昨年度は清水市代女流六段が挑戦者になられてこの出雲にこられましたが、そのときに私がこの前夜祭で挨拶したことは『里見さんの地元ということで、たくさんの里見ファンがおいでだと思いますが、清水さんのことも応援していただければ』とお願いしましたところ、たくさんの清水ファンがいらっしゃいまして、驚いたのとホッとしたのと両方ありました。今期は上田女流三段が4年ぶりに挑戦ということで、同じようにたくさんの方がいらっしゃると思います。明日の勝負をどうか見守っていただけたらと思います。
先ほど報知新聞の佐野様よりお話がありましたが、第1局では上田さんに▲5一角という手が出まして、私も当日ネットで対局を見ていましたが、棋譜の入力ミスではないかと思うほどの手でした。のちにタイトル経験者や若手の男性棋士にあの手について尋ねてみたところ、まったく思い浮かばなかったという声ばかりで、私がもしあのときに上田さんに変わって席について指していたとしたら、私は絶対に里見さんに負かされていたと思います。これはあんまり自慢してもしょうがないですが(笑)。それほどすごい手で、第37期名人戦第4局の中原-米長戦で指された中原先生の▲5七銀に匹敵するぐらいの、それぐらいの手ではなかったかと思います。
上田さんは久しぶりのタイトル戦ということですが、気力充実が感じられ、絶好調という感じで、里見さんも明日の対局では気を引き締めて臨まれるのではないかと思います。また、里見さんは女流五冠で、皆様の注目されるところは、六冠達成。全冠制覇ですね。これがなるかというところで興味をお持ちではないかと思います、そのためにも明日の対局は大事になってくると思います。明日の対局では里見さんの気迫も感じながらご覧いただければと思います。
あと、里見さんは三段リーグも戦われておりまして、以前、NHKで『ふたりっ子』というドラマがありましたが、私は当時、台本のチェックをしておりまして、その物語では女の子が将棋を覚えて興味を持ち、奨励会に入って三段リーグを抜けて四段になり、最後はタイトル戦を戦う夢物語だったわけですけれども、里見さんは三段リーグで結果を残せば、それを現実のものにしてしまう立場にあります。女流六冠制覇、また四段になれるかというところも注目していただいて、ご声援をいただければと思います。明日の対局は絶好調同士の両者で、どちらかが敗者にはなってしまいますけれども、勝者、敗者にかかわらず、皆様にはご声援をいただければと思います。
最後になりましたがこの女流名人戦を主催していただいております報知新聞社様、出雲市様、そして特別協賛をいただいているユニバーサルエンターテイメント様には、改めましてこの場をお借りして将棋連盟から御礼申し上げます。ありがとうございました」
長岡秀人・出雲市長
「ばんじまして。これは出雲弁で、夕暮れどきの挨拶であります。
7回目の出雲での女流名人戦を迎えることとなりまして、皆様と一緒に楽しませていただきたいと思っている次第でございます。
出雲での最初の女流名人戦は、平成23年でした。当時は女流名人位戦だったと思いますが、里見さんが女流名人を持っておられるかぎり、出雲で女流名人戦を行うと宣言しておりまして、先ほどからプレッシャーを掛ける挨拶が多いですかね(笑)。
上田さんようこそ。4年前の対局では特に第5局が大変な名局だったとうかがっておりまして、今期も第1局、素晴らしい対局だったと聞いております。
この出雲というところは、心の広い人が住み、国を譲るくらいの気持ちを持っておりまして、その意味ではアウェーと思われずに、日頃の力を十分に発揮していただければと思うところであります。
こうして開催できますのも、報知新聞社様、将棋連盟様、特別協賛をいただいておりますユニバーサルエンターテイメント様、そして昨年に続いてお越しいいただいております第1局の開催地であります岡田美術館の小林館長様、ようこそお越しいただきました。また、明日の大盤解説会などもお世話になります。どうぞよろしくお願いします。
私どもは、里見さんの元気な姿を見れるということでそれがいちばんの楽しみでありまして、今日も後援会の方々をはじめ、地元の方々がたくさんお見えであります。我々の思いとしましては、どんなことがあろうとも里見さんが常に平常心で力を発揮していただけるように、特に里見さんが故郷に帰ってきたときには、あたたかくお迎えしようというのが基本路線でして、そのうえで勝っていただければこれに越したことはありません。
将棋の歴史というのは江戸の中期から始まって、男性棋士の時代はほぼ400数十年というところにあります。女流は40数年で、この長い歴史のギャップの中で、誰が歴史を打ち立てられるかというところで、こういうことを言うとまたプレッシャーになりかねませんが(笑)。明日の対局では記憶に残る名勝負を期待しております」
【特別協賛社挨拶】
小林忠・岡田美術館館長
「失礼いたします。岡田美術館はまだ開館して4年目の幼い美術館で、箱根町に開館しました。この岡田美術館の本社がユニバーサルエンターテイメントでございまして、藤本社長が将棋に愛着が深い方で、ユニバーサルエンターテイメント杯でこの女流名人戦を協賛させていただいてきたわけですけれども、伝統ある将棋という日本の古典文化を預かるということで、本当の美術館でずっとやろうということから日本将棋連盟様、また報知新聞社様にお許しをえまして、昨年から岡田美術館杯とさせていただきました。
第1局はこちらほどではありませんが、寒い箱根町ながらその寒さを吹き払うような熱戦となりました。この第2局は私も去年に引き続きまして、出雲市にお邪魔いたしまして、出雲市における将棋熱に感動している次第です。この前夜祭は、箱根における倍ほどの皆様がお見えになられており、大変盛大な催しになっていることに対して、長岡・出雲市長様をはじめ、出雲市の関係者の皆様に厚く御礼を申し上げる次第でございます。明日からの対局をやさしく、温かく見守っていただくことをお願いしまして、挨拶と代えさせていただきます」
【対局関係者紹介】