21日朝、常磐ホテルで伊藤叡王の一夜明け会見がありました。この様子をお伝えして、第9期の中継を終わりたいと思います。来期をお楽しみに。
【第10期叡王戦 段位別予選トーナメント表】
https://www.shogi.or.jp/match/eiou/10/yosen.html
――昨夜はゆっくり休めたか。
対局後ということで、なかなか深く寝つくことはできなかったんですけど、たくさんの方からお祝いの連絡をいただいて、少しずつ喜びが込み上げてきました。
――色紙に書いた「孤高」について。ハシゴ高の字を使う意図は。
「孤高」は棋士になった頃からよく書いてきた言葉で、「自分の中でしっかりと信念を持って、高みを目指して」という意味だと自分では解釈しています。ハシゴ高については、それほど深い意味はありませんが、ハシゴ高で揮毫される棋士の先生もけっこういらっしゃるので真似をしています。
――3回目のタイトル戦で奪取に成功。過去2回と何が違ったか。
竜王戦、棋王戦と立て続けにストレート負け(棋王戦は3敗1持将棋)だったわけで、叡王戦の挑戦が決まった段階では、なかなかタイトル獲得というところに意識がいっていませんでした。内容としても接戦にできていなかったので、今回は熱戦をお見せできるようにしたいという気持ちで臨んでいました。
――(上記の質問に追加で)技術的な面ではどうか。
自分としては、今年に入ってから先手番で角換わりを採用することが多くなって、今回の叡王戦は全局角換わりになりました。この戦型の理解も少しずつ深まってきたと感じています。
――昨日の△5三銀(98手目)から△5二銀について。
▲6四同飛から▲4六銀(97手目)は自分も視野には入っていたんですけど、応手の厳しさを軽視していました。▲4六銀に(△5三銀ではなく)△6三玉はハッキリまずそうなので消去法で本譜を選びました。思いのほか、先手がよさに結びつける順がすぐには見つからない、というのは幸運だったと思います。

――タイトル獲得の地になった。次に常磐ホテルを訪れるときはどんな気持ちになると思うか。
常磐ホテルさまは伝統的な場所ですし、こちらで対局できることは楽しみにしていました。結果を出すことができて縁起のよさも感じますし、また訪れる機会を楽しみにしています。
――山梨の将棋ファンにメッセージを。
こちらの常磐ホテルさまで対局できたことはうれしく、昨日は最後まで優劣のハッキリしない実戦を見せることができたかなと思うので、今後もそういった将棋をお見せして将棋界を盛り上げていけたらと考えてします。
――帰京前に山梨でやりたいことがあれば。
山梨県は果物がおいしいという印象があります。今回も食事で振る舞っていただきました。何かお土産に買っていければと思います。
――師匠の宮田利男八段は「25歳まで酒とギャンブルは厳禁」と弟子に言っている。25歳になったらどうするか。
自分はそういったことにあまり関心がない、というのが正直なところです。
























▲6四桂(図)はどれほど利いているのか。検討陣は「金を2枚渡しても詰まない」。たとえば△8八金▲同銀△7八金▲同竜△同と。その局面で後手玉は詰みません。これは後手が勝ちそうです。「歴史が動くか」の声も出ました。
ここ十数手は藤井叡王が粘っています。金銀竜を穴熊に集結させることに成功しました。図で伊藤七段の残り時間は4分。いまだ先の見えない、激闘、死闘、名局です。
図の▲6九金で藤井叡王は時間を使いきり、一分将棋に入りました。伊藤七段は残り28分。図から△4八飛▲7七銀△5九とにも▲7九金寄と逃げることになりそうです。後手に流れがきているようにも思えますが、先手玉は依然として堅く、検討陣の面々は「長い将棋になります」「終わりませんね」と話しています。大熱戦です。
藤井叡王は40分の長考で図から▲8六同歩。残り13分になりました。伊藤七段は残り36分です。△8六歩▲同歩は、いわゆる後手の利かし。この2手は後手のプラスしかないやり取りですから差は詰まったと思われます。「▲8六同歩は伊藤さんも考えていなかったでしょう」と勝又七段。注目の大一番は形勢不明になりました。
