感想戦後に伊藤新叡王の記者会見がありました。明日も一夜明け会見が行われる予定です。
まだ終わったばかりですので、あまり実感はわいてこないですけど、やはりタイトルというのは子どもの頃から夢に見てきたものなので、とてもうれしく思います。
――21歳での初タイトル。2020年のプロ入りからこれまでを振り返って。
プロ入りから3年ほどでタイトル戦に出場することができて、自分としてはできすぎな結果だと思っていたんですけど、タイトル戦では厳しい戦いが続いていたので、このタイミングでタイトルを獲得できたのも幸運だったなと思います。
――獲得の喜び、感謝などの思いをどなたに伝えたいか。
お世話になっている方はたくさんいますので挙げればキリはないですけど、両親や師匠には感謝を伝えたいです。
――藤井さんに勝てない状況はどのような気持ちだったのか。また、実った感想を。
藤井さんにはずっと勝てない状況(初手合いから今年4月上旬まで11連敗)が続いていて、内容の面でも接戦にすらできていない将棋が多かったので、はっきりと実力の差があると捉えて、自分自身の棋力を上げていくしかないと感じていました。今シリーズを振り返ってみても、苦しい展開が多くて藤井さんの強さを感じるところが多かったですけど、なんとか結果が出てよかったと思います。
――山梨でのタイトル戦は初めて。会場の雰囲気はどう感じたか。
常磐ホテルはタイトル戦がよく行われている場所で、自分も一度ここで対局したいという気持ちがありましたのでうれしく思いました。実際に訪れてみて、都会の中でも自然豊かな場所でお庭の眺めがよくて、とても気持ちよく対局することができたと思っています。
――これまでは相掛かりも指していたが、今回は全局角換わりになった。
相掛かりは自分が棋士になったときから得意にしていた戦型ではあったんですけど、対藤井叡王戦で結果が出なくて。藤井叡王は先手番で角換わりを得意とされていて、その対策に苦労していたところがあって、前回の棋王戦から自分も先手番で角換わりを採用してみたという経緯があります。
――今後の新たな目標は。
なかなか現時点では具体的な目標はないんですけど、今回の叡王戦では終盤までどちらが勝つかわからないような将棋を指すことができたかなと思うので、そういった熱戦をお見せできるように頑張りたいと思っています。
――自信を持って藤井さんはライバルだといえるか。
まったくそういう認識はないんですけど、まだまだ自分のほうが実力が不足しているかなと感じているので、今後も藤井さんとタイトル戦で戦えるように頑張りたいと思っています。
――深く研究して定跡形で勝負するスタイルを貫いている。結果が出ない中で葛藤はあったか。
定跡形から外して力戦で戦う考え方もあるんですけど、それはそれで自分がうまく指しこなせるかというところもありますし、また変化すると若干妥協して少し相手にポイントをあげられた状態で戦うことにもなりやすいので。定跡形で戦うのも一気に終盤戦に入ってしまうこともよくあるので難しいところですけど、自分の中でまだまだやってみたい将棋もあったので、定跡形で戦っているというところです。
――小学校3年生のときに戦って、タイトル戦でも戦った。昔の記憶をどう持っているか、これから戦いが続いていく中で藤井さんはどういう存在か。
藤井さんとは出身が愛知と東京で離れているので、小学生のときに対戦があったのは貴重な縁だったなと思っています。藤井さんが中学生でプロになられて、そこから自分はずっと藤井さんを目標にやっていたところが大きいので、藤井さんには自分をここまで引き上げていただいたのかなと思っています。
――藤井さんから「終盤力で伊藤さんに上回られてしまった」という話があった。中終盤の力について、自身ではどう思うか。
今シリーズを振り返っても、中盤戦ではこちらがリードを許す展開が多かったと思います。叡王戦は持ち時間が4時間のチェスクロックということで終盤は時間がない中での戦いになりやすく、そうなると終盤勝負にはなりやすかったのかなと思います。藤井さんは終盤力に定評がありますし、厳しい戦いになるかなと思っていたんですけど、その中で結果が出せたことは一つ自信につながったかなと思います。
――同世代に藤井さんという強い存在がいることはどう思っているか。
自分はずっと藤井さんを追いかけてここまで来られたと思っていますので、藤井さんがいなかったらタイトルも取れなかったと思いますし、重ね重ねになりますけど、藤井さんのおかげでこういう舞台に立てているのかなと思っています。