感想戦後に伊藤叡王の防衛会見がありました。
(不二家の菊池祐一・執行役員から花束とペコちゃん人形が贈呈された)
――感想戦を終えて、あらためて本局を振り返ってください。
タイトル戦でも前例があった将棋でしたが、認識不足なところが出てしまって。中盤以降はずっと自信がない展開が続いていたのかなと思います。最終盤は秒読みになったあたりから際どい局面が続いて、二転三転していたところもあったのかなと思います。
――第2局、第3局を連勝して先に王手を掛けていました。シリーズの流れについてはどう見ていましたか。
第1局に敗れてしまって、他の公式戦を含めてあまり結果が出ていない状態でした。2局目を勝つことができて、3局目は苦しい将棋を拾うことができて。第4局もそうですが、シリーズを通して押されている時間帯が長かったのかなと思います。
――五番勝負を戦った斎藤慎太郎八段の印象について。
斎藤八段は中盤でしっかりと時間を使って、精度の高い手を指してこられるという印象が今シリーズを通してありました。斎藤八段の強さを感じることが多かったです。
――王座戦では準決勝に進出しています。二冠獲得に向けての思いは。
最近はタイトル挑戦に手が届く位置までなかなかいけていなかったので、実力不足を感じることが多かったです。王座戦はまだまだ厳しい戦いが続くと思いますが、なかなかチャンスは多くはないと思うので、そういった機会を大事にしていきたいです。
――昨年のタイトル獲得時に藤井聡太七冠との関係で、チャンスがあれば二冠目を狙っていきたいけどまだまだ実力不足と話されていました。藤井七冠との距離感についてどう感じていますか。
自分自身はここ1年ほどあまり結果が出ていませんでした。内容的にもあまり実力をつけることはできていないのかなという感じがしていて、藤井七冠との距離感はあまり縮まってはいないというか、どちらかといえば広がっているような実感があります。
――防衛という結果を出したことについて。
今回のシリーズを振り返っても、ずっと押されている時間が長かったですし、本局もかなり厳しい形勢が続いて、失冠を覚悟した場面もあったので、こうした結果につながったのが不思議な感覚です。
――昨年の奪取時と感情的にどのように違いますか。
昨年タイトルを獲得できたのは自分の人生の中でもかなり大きな出来事だったと思います。それによって自分の中でモチベーションが少し変化していったところもあったのかなと。今回もよい結果を出せたのですが、気持ちを動かさないように今後もやっていきたいと思っています。
――モチベーションの変化はありましたか。
タイトル獲得を目標にしていたので、満足感みたいなものが少なからずあったと思います。
――モチベーションの変化が成績にも反映されてしまったのでしょうか。
気持ちの変化が結果に直結しているかどうかはなんともいえませんが、タイトルを取る前と後でそれほど生活を変えているつもりはなかったです。ただ、気持ちの面での変化があったと思うので、そのあたりは今後も含めて課題だと思っています。
――獲得したタイトルを防衛するのは高いハードルだと思います。今回、防衛への思いはどの程度、強くありましたか。
もちろん防衛したい気持ちもありましたし、ここ最近の将棋の内容を見てもなかなかいい将棋が指せていないと感じることも多かったので、実力的には厳しい戦いになると感じていましたし、タイトル失冠というのも致し方ないというか、それほど恐れることではないのかなと感じていました。
――調子が少し上向いてきた感じがしますが、今回の防衛がいい弾みにという気持ちはありますか。
本局も含めて内容面ではこちらが先にバランスを崩してしまう将棋もかなりあって。もう少し均衡が取れた展開が続くような将棋を指していきたいと感じていますが、結果を出すことができたので、これを弾みにやっていければと思います。
――今、どういった目標を据えていますか。
現状は実績面での目標はあまり重視しなくなっているのかなという感じです。内容面で課題が多いと感じていますので、もっといい将棋をお見せできるようにやっていかないといけないなと感じているところです。
以上で今期五番勝負の中継を終わります。ご観戦いただきまして、ありがとうございました。