第10期五番勝負第1局 
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終局直後
終局直後、両対局者にインタビューが行われました。 (終局直後の様子)
――非常に長い中盤戦でした。昼食休憩明けのあたり(39手目▲1四歩)の形勢判断はいかがでしたか。
斎藤 本譜はちょっと攻めが細いかなと思って、攻めさせられたのかなと。△1七歩や△1六歩を、△2三歩を打ってからか打つ前か、ほかの順を考えていましたが選択肢が多くて。ただ▲1四歩と伸ばされてあまり自信はなかったですね。7五の飛車を8五に移動させられたような感じで、細いかなと思っていました。
――長考して52手目△1八歩と垂らしたあたりは。
斎藤 △3三角(56手目)と引く手で互角があるのか読み切れなかったです。悪くてもおかしくはないと思っていましたが、ほかの手も思い浮かばず自信ない展開が続いてと思います。
――その後、秒読みでの難解な終盤が続きました。△4七桂成(92手目)から△1七歩成と踏み込まれました。そのあたりはいかがでしたか。
斎藤 △7七香(94手目)と打ったところで展望が見えてきましたが、いきなり自玉が寄り筋があると怖いのでずっと読みきれてはいなかったです。
――勝ちと感じた局面は。
斎藤 いや、もうギリギリでしたので勝ちと確信できる局面はありませんでした。ですが、面白くなったと思ったのは△7七香と打ったところです。
――一局の振り返っての総括をお願いします。
斎藤 序盤は後手番ながら、かなりアグレッシブに動いていく将棋になりました。ブレーキをかける手がわからず細い攻めになったと思います。△1八歩(52手目)と打ったところで、ほかの手を選ばずに辛抱したのがよかったと思います。
――昨日は「自然体で」というお話もありました。久しぶりのタイトル戦を自然体で指せましたか。
斎藤 ここにいると緊張して、中盤はなかなか手が出なかったところもありましたが、終盤は開き直って指せました。
――次局の意気込みをお願いします。
斎藤 ここから2週間ほど期間があくので、また作戦を考えて臨みたいなと思います。
――序盤は早い進行で進みました。▲1四歩(39手目)に長考されていました。そのあたりの形勢判断はいかがでしたか。
伊藤 △8六歩(34手目)から飛車を転換されたところはこちらの手番なので何か手段があるというのが第一感でした。ですが、考えてみてもなかなか方針が定まらず、▲1四歩と伸ばしたときに後手から候補手が多くてわからないまま指していました。
――△1四香(46手目)に▲同香で1時間13分の大長考されました。このあたりも手が広いところだと思いますが、どのようなお考えでしたか。
伊藤 直前の▲2八飛(45手目)と引いたときに△1四香を軽視していて、▲2七飛を考えるべきだったと思っていました。△1四香の図はいろいろ考えたのですが、どれも自信を持てず本譜で▲7七桂(61手目)と跳ねてどうかと考えていました。ただ、そこまで進んでもあまり自信がないかなと思っていました。
――その後、秒読みで難解な終盤に入りました。どのあたりで形勢を損ねてしまったと感じましたか。
伊藤 秒読みに入って▲7三歩(77手目)から▲7四香が結構まずかったと思います。▲7四香としても次の狙いに乏しかったです。△7四歩(74手目)の局面で▲同香△7三歩として手段を考えるべきだと思いました。
――一局の総括をお願いします。
伊藤 中盤は自信のない局面も、少し手段がありそうな局面もあったと思います。秒読みになったところで乱れたのは残念です。
――次局への意気込みをお願いします。
伊藤 苦しいスタートになりましたが、切り替えて準備して臨みたいと思います。
斎藤八段が先勝
第10期叡王戦五番勝負第1局は、斎藤八段の勝ちとなりました。終局時刻は19時39分。消費時間は▲伊藤4時間0分、△斎藤4時間0分(持ち時間各4時間、チェスクロック使用、切れたら1手60秒未満の着手)。第2局は4月19日(土)、石川県加賀市「アパリゾート佳水郷」で行われます。
壁形と開けている形
図は95手目▲7九歩の局面。△7八香成に▲同歩を用意して粘り強いですが、7筋が壁になった意味もあります。対する後手の玉は4二から3三への脱出路が開けているのが大きな違いです。そこに着目して、斎藤八段は図から△1七歩成▲7三香成△2七とと寄せに出ました。先手玉は7筋が詰まっているため、その逆側から攻めるのが有効です。△1八飛成と飛車を成り込めるのも大きく、後手の攻めのほうが速いとみられています。
流れが急になる
図は84手目△3五桂まで。少し前に伊藤叡王も秒読みに入っています。
ここまで角桂香といった駒が交換になっていましたが、飛車銀両取りがかかり、流れが急になったのが明らかになりました。斎藤八段のほうが先に守りを崩せそうです。これを形勢差に結びつけられるかどうか。
秒読みの中、伊藤叡王は▲1五香と打って勝負に出ます。▲2六飛とかわすのは、△4七桂成▲同金△3五角▲3六飛△2四飛という攻めがありました。激しい終盤戦に突入です。
斎藤八段が秒読みに入る
切り返しを用意
図は先手が▲1六歩と香を取って▲1五香△2四飛▲2五歩の飛車取りを狙いにしたのに対して、斎藤八段が△6四桂と打ったところです。
しばらく前から、控室では先手が▲1六歩と香を取って▲1五香を狙ってきたら、後手は△3五歩と横利きを通して飛車が逃げられるようにする手が示されていました。それを斎藤八段は香を打ってもいいよといっています。
図の△6四桂を指されてみると、▲1五香△2四飛▲2五歩は△同飛!▲同飛△7六桂▲7九玉△2四香(参考図)で、後手が飛車を取り返せることがわかりました。参考図は後手有利です。▲1五香を打てないと先手の対応が悩ましそうです。伊藤叡王は▲7五香と逃げて辛抱しました。