【藤井聡太叡王インタビュー】
――叡王初防衛おめでとうございます。いまの率直なお気持ちをお聞かせください。
「本局は中盤から終盤にかけて苦しい戦いが続いて、最後も負けになったと感じたので実感に関しては全くありませんし、今日の将棋も振り返ってどうだったかなと思っているところです」
――藤井叡王はタイトル戦など終わったときに、ご自身の課題をお話しされることが多いと思います。これまで公式戦で会心の出来と感じたことはあるのでしょうか。
「もちろんそう思えるときが全くないわけではないのですが、振り返るとここは少ししっかり指せていなかったと思えるポイントは常にあるので……。一局指すごとに課題というのはあるのかなと思います」
――タイトル戦の連勝記録13連勝は歴代2位となりました。タイトル戦での強さについてご自身ではどのように考えていますか。
「少しタイトル戦の番勝負に星が集まっているところがあるので……。もちろん大きな舞台で結果が出せていることはうれしいんですけど、それ以外の対局も含めてより内容、結果ともに向上させないといけないなと思っています」
――これから棋聖、王位、竜王、王将としばらくは防衛戦が続きます。現状維持を目指した戦いが続き、タイトルを取っていくといった戦いがない中で、モチベーションが低下するということはないでしょうか。
「棋聖戦から防衛戦が続いていくことになりますが、タイトル戦で防衛か挑戦かということはそれほど大きな違いがないかなというふうに思っているので。大きな舞台で続けて対局していけるということをモチベーションのひとつにしてやっていければなと思っています」
――3月の順位戦後は他の対局がそこまで多くはないと思いますが、どのようにコンディションを整えていましたか。
「3月から4月にかけては対局が少なかったんですけど、序盤の定跡の見直しなどをしていました」
――大盤解説会場で出口六段が泣いてられたのを横で見ていたと思います。どのような気持ちになりましたか。
「今日の将棋は特に中盤はこちらがずっと苦しい展開が続いていたので、出口六段からするとそういうふうに思われるのも自然というか。自分であってもそう思うところがあるのかなと」
――今回の防衛でタイトル獲得が8期になり、木村義雄十四世名人や加藤一二三九段に十代で並びました。
「加藤九段や木村十四世名人の頃はタイトルの数が全く違うので、並んだという気持ちは全くありませんし、昔の棋士の棋譜を見て勉強になるところもあるので、そういったところをまた学んでいけたらと思います」
――これまでのタイトル戦では渡辺明名人や豊島将之九段など、ご自身よりもタイトル戦登場回数が多い棋士と戦ってきました。今回は初めてタイトル戦に出られた出口六段が相手ということで、これまでの経験が生きたなと思われたところはありましたか。
「今までのタイトル戦は自分よりキャリアが上の棋士との対戦ばかりだったので、今回は今までとは少し違う状況でしたが、出口六段とは新人王戦の決勝でも対戦しました。棋士になる以前にも練習将棋を指していただいたこともあるので、自分としては自然に番勝負に臨むことができたのかなと思います」
(共同記者会見より)

















▲藤井-△出口戦は、藤井叡王が109手で勝ちました。終局時刻は18時18分。消費時間は、▲藤井4時間0分、△出口4時間0分。
1図以下、▲2一飛△3一金打▲1一飛成△5二銀▲6五香△4七銀成▲7五角△4三玉▲3一角成(2図)と進みました。
藤井叡王も持ち時間を使いきって、両者一分将棋のせめぎ合いになりました。一進一退の激しい寄せ合いが続きます。
△6五角に対して藤井叡王は▲7八銀(1図)と引きました。以下△7七歩には▲同玉(2図)と応じたのです。
2図で出口六段が手を止めています。いよいよ最終盤に突入します。
▲6五桂に対して後手は△9二角(1図)と打ちました。6五の桂が移動すれば△4七角成▲同金△3八銀の両取りが掛かります。△9二角に実戦は▲7四歩△4二玉▲7三歩成△6一金▲7四歩△7三桂▲同桂成△6五角(2図)と進みました。
先手は歩切れのため8七の銀取りを受けるには▲7六桂と打つことになりそうですが、△7五歩で後手が攻めきれるかどうか。先手は▲2一飛と打ち込む手がありますが、△3一金▲1一飛成△2二銀と竜を追い払う順があります。肝心の形勢は何ともいえず、難解な終盤戦が展開されそうです。





