第9期挑戦者決定戦 Feed

2024年3月19日 (火)

【第9期叡王戦五番勝負 日程】
第1局 4月7日(日) 愛知県名古屋市「か茂免」
第2局 4月20日(土) 石川県加賀市「アパホテル&リゾート 佳水郷」
第3局 5月2日(木) 愛知県名古屋市「名古屋東急ホテル」
第4局 5月31日(金) 千葉県柏市「柏の葉カンファレンスセンター」
第5局 6月20日(木) 山梨県甲府市「常磐ホテル」

本局の中継は以上で終了です。ご観戦ありがとうございました。

挑戦権を獲得した伊藤匠七段は、感想戦後に改めて報道陣の取材に応じました。

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――藤井聡太叡王との五番勝負が決まりました。竜王戦七番勝負、棋王戦五番勝負に続いての対戦となりましたが、いまの率直な気持ちを教えてください。

伊藤 再び藤井さんと対戦する機会を作れたことはよかったと思います。

――棋王戦五番勝負で敗れた直後のインタビューでは、「自分の力不足を実感した」というコメントがありました。いまの時点で、叡王を奪取しにいくための腹案はどのようなものでしょうか。

伊藤 番勝負で2回続けて結果が出ていないので、前の2回よりは実力を上げて臨まなければいけないと思っています。

――本日の将棋は、永瀬九段は81手目の▲2一飛までは予定だったとのことでしたが、伊藤七段はどの辺りの局面まで思い描いていたのですか。

伊藤 本局は、こちらのほうがはっきり認識が不足していた印象です。▲7九玉(61手目)と引くところは先手の手が広い局面かと思っていたんですが、玉を引かれて、こちらも8筋の歩交換を通しにいくよりないのかなと。ただ、そのあとの直線の変化でそこまで深い認識を持っていなかったのは問題でした。

――今期の叡王戦全体を振り返って、ご自身としては、ここまでの戦いぶりはいかがですか。

伊藤 叡王戦は持ち時間が短めの棋戦ですが、いままでそういった棋戦であまり結果が出ていませんでした。今期の叡王戦では、持ち時間が短い中でも比較的、決断よく指すことができていたのかなと思います。

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――「実力を上げる」という点についてですが、藤井叡王と戦ううえで、どういったところを強化していきたいと考えていますか。

伊藤 なかなか終盤勝負というところまで持っていけていないので、中盤の難所で正しい判断をできるようにしなければと思っています。

――今回の五番勝負では、愛知県名古屋市での対局が2局あります。名古屋は藤井叡王だけでなく、伊藤七段にとってもご縁がある土地ですが、いかがですか。

伊藤 そうですね。名古屋には親戚の家があって、小さい頃にはよくいっていた場所なので、うれしいです。

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――これまで藤井叡王と番勝負を戦ってきて、何か手応えとしてつかんだものがあれば教えてください。

伊藤 なかなか手応えはつかめていないのが現状ではあるんですが、序盤の分かれとしてはこちらのやりたい将棋が指せているところはあるので、やはり中盤をどう乗り切れるかというところが鍵になってくると思います。

――番勝負ではよい結果が出ていないものの、竜王戦、棋王戦、叡王戦と、立て続けに挑戦権をつかんでいるのはとてつもないことです。「対藤井」以外では素晴らしい結果を残しているわけですが、ご自身のここ1、2年の棋力の向上や調子についてはどのように考えていますか。

伊藤 藤井さんと番勝負を戦うことで成長できている部分は大きいのかなと感じています。

――最後に改めて、叡王戦五番勝負への意気込みをお願いします。

伊藤 いままで不甲斐ないシリーズが続いているので、もっと熱戦をお見せしなければいけないなと思っています。

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Dsc_28851 (終局直後の対局室。まずは報道陣からのインタビューに応じる)

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◆伊藤匠七段の談話

――本局は角換わりになりました。相手の永瀬九段は昼食休憩までほとんど時間を使わずに指し進めてきましたが、序盤の駒組みはいかがでしたか。

伊藤 ▲7九玉(61手目)と引かれたときに△8六歩からの一歩交換が通るかという将棋で。本譜はかなり激しい展開になったんですけど、こちらとしても、この将棋を選んだ以上は仕方がないのかなと思って指していました。

――昼食休憩辺りの形勢判断はいかがでしたか。

伊藤 △2二角(82手目)と打ってしまうと、先手玉を捕まえる形も難しくなるので、あまり成算はありませんでした。

――飛車角交換になってから、反撃に出ました。中盤の展開はいかがでしたか。

伊藤 判断が難しい将棋だと思っていたんですけど、少しずつこちらが駒得の形になってきて、少しペースをつかめていてもおかしくないかなという気はしていました。

――終盤は相手に入玉されるかどうかということになりました。どのように局面を判断していましたか。

伊藤 △2六歩(104手目)で、(自身から見て)左辺から寄せていく方針を採ったんですけど、上部脱出を止められるかが分からないまま指していました。

――叡王挑戦が決まりました。五番勝負の抱負を聞かせてください。

伊藤 タイトル戦で結果が出ていないので、もっとよい内容の将棋を指せるように頑張りたいと思います。

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◆永瀬九段の談話

――昼食休憩まではほとんど時間を使っていませんでしたが、予定の進行だったのでしょうか。

永瀬 そうですね。▲2一飛(81手目)までは予定で、△2二角も考えたことがあったんですけど、▲2五桂は変だったかもしれないので。駒損ではあるので、その辺りの判断が難しい将棋という認識でした。

――休憩が明けての中盤の進行はいかがでしたか。

永瀬 △4九桂成(92手目)とされた局面が、一直線の変化では分が悪いような気がしたので、形勢としては自信がない展開になってしまったかなと思って指していました。

――終盤の進行はいかがでしたか。

永瀬 基本的には、全然駄目なのかなと思って指していました。

――最後は入玉を目指しましたが、成算はいかがでしたか。

永瀬 難しいところがあればと思ったんですが、的確に捕まえられてしまったので、もう少し……ただ、全体的には厳しいのかなと思っていました。

――今期の叡王戦全体を振り返って、いかがですか。

永瀬 前期と同じく、挑戦者決定戦まではいきましたが、そこであと一歩が出ていない状況なので、何とかしてきたいです。

20240319142142手で、伊藤匠七段が永瀬九段をくだしました。終局時刻は17時8分。消費時間は▲永瀬3時間0分、△伊藤3時間0分(チェスクロック使用)。
勝った伊藤匠七段は、初の叡王挑戦を決めました。藤井聡太叡王と伊藤匠七段による五番勝負は、4月7日(日)に愛知県名古屋市「か茂免」で開幕します。

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図は16時40分頃の局面。形勢は依然として伊藤匠七段よしです。永瀬九段は、6六~7五というルートでの玉の上部脱出をちらつかせつつ、粘りの姿勢を見せています。伊藤匠七段が相手玉を捕まえきれるかどうかが焦点になりました。伊藤匠七段はすでに秒読み。永瀬九段のほうも、残り時間は3分を切っています。

Dsc_28621 (永瀬九段)

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図は15時55分頃の局面。△7六歩の突き出しに、先手が8一の竜を7一に寄って7筋を受けたところです。代えて▲7六同銀では△7七飛が嫌だったということだと思われますが、▲7一竜も受け一方の手で、苦しさは否めません。形勢は後手の伊藤匠七段が優勢。相手玉に迫る適切な順を見極めたいところです。

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図は15時頃の局面です。先手は大駒の力で5一の地点を狙っていますが、後手の金の守りも強く、すぐの攻略は難しそうということで、▲5七玉と自玉の安定を図りました。昼食休憩明けからは、永瀬九段のほうがまとまった時間を使って考えることが多く、昼前には1時間20分ほどあった消費時間の差が、いまではほぼなくなっています。形勢としては、駒数の多い後手がやや指しやすそうです。

Dsc_28481 (伊藤匠七段がペースを握りつつある)

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図は13時50分頃の局面です。後手が自玉周りをより手厚くしつつ、2筋に打たれた先手の飛車を自身の手駒にしています。次にこのまま△2五歩と桂も外せれば、後手玉はしばらく安泰といえそうです。先手は改めて有効な攻めの形を作っていくことができるでしょうか。

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Dsc_28311 (再開直前の対局室。両者、12時30分には盤の前に戻っていた)

Dsc_28361 (腕を組んで考える伊藤匠七段)

Dsc_28441 (永瀬九段は厳しい表情)

Dsc_28591 (再開を告げられると、伊藤匠七段は席を外した)

Dsc_28631 (手番の永瀬九段は、すぐには指さず。視線は相手陣のほうに向けられていた)