第8期五番勝負第1局 Feed

2023年4月11日 (火)

感想戦は仕掛けの局面を中心に、手短に終わりました。
第2局は4月23日(日)に愛知県名古屋市「名古屋東急ホテル」で行われます。
以上で本局の中継を終わります。ご観戦いただきましてありがとうございました。

Dsc_4775(感想戦後、ABEMAのインタビューを受ける藤井叡王)

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Dsc_4729(対局を振り返る藤井叡王)

「序中盤は9五歩の位を生かせるかがポイントでした。仕掛けの形を作るのが難しく、その辺りは分からないまま進めていた感じでした。そのあと、こちらが攻めを受け止めるような形になって、少しずつ指しやすくなったのかなと思います」

Dsc_4746(菅井八段)

「数年ぶりのタイトル戦で久々にこの緊張感を味わうことができました。結果は残念でしたけど気合が入りましたので、次に向けて頑張りたいと思います」

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Dsc_4585(藤井叡王が勝利。秒読みになっても盤石の指し回しだった)

――午前中の展開について。

藤井 ▲9五歩(13手目)と位を取った形をどう生かせばよいか、わからないまま進めていました。

――仕掛けからの流れについて。

藤井 動いていったのですが、いったん受け止められた形になってしまい、あまりうまくいっていないのかなと思いました。▲6八銀(59手目)と引いたあたりでは仕掛けていった成果が挙がっていなのかなと。

――その後は後手から端攻めがあった。

藤井 こちらが駒得の形になったので、端を突破されなければ何とか指せそうかなと思いました。

――△5五歩(102手目)に時間を使い切って▲同歩としました。あのあたりは。

藤井 どういう方針で指すか、わからないところではありました。

――手応えを感じた局面は。

藤井 決め手を得られない時間が長かったですが、▲5二香成(141手目)で攻めがつながる形になりました。

――先に持ち時間を使い切った。難しかったところは。

藤井 攻め駒が少ない形なので、どのようにして戦いを起こしていくか。そのあたりが難しいところでした。

――本局全体を振り返って。

藤井 序中盤は苦心したところが多かったのですが、終盤は相手の攻めを受け止める形になって、そのあたりで指しやすくなったかなと思います。

――タイトル戦で初めて振り飛車党を相手にすることになった。

藤井 タイトル戦以外でも対抗形は指しているので、これまでと違ったということはありませんでした。シリーズということで第1局以降も続いていくので、本局の内容を踏まえて戦えていければと思います。

――第2局に向けて。

藤井 本局は途中で時間が少なくなってしまったので、時間配分も含めて、よりよくできていければと思います。

Dsc_4617(敗れた菅井八段)


――駒組みについて。

菅井 そんなに成功はしていないのですが、将棋として仕方ない展開かと思いました。普通の形より少し損をしているので、そのあたりがどうだったのかなと。

――仕掛けから後手が桂損になった。

菅井 ▲3八飛(67手目)に△2六歩を突けないとまずい形ですし、その前に△3四歩とした手を後悔していたので、そのあたりがよくなかったです。

――そのあたりは誤算があったのか。

菅井 ▲3八飛があまり見えていなかったので、そこで形勢が苦しいと感じてしまいました。

――その後の端攻めについて。

菅井 もう少し早く端を攻める展開もあったと思うのですが、それと比べて本譜はすごい損をしているので。その前に△4六歩(68手目)▲同角△4五桂としたのですが、そこからはうまく指されるとまずいと思いました。

――本局全体の感想。

菅井 中盤の重要な局面で、自分のほうが正確性がなかったので、そのあたりは反省しています。

――久しぶりのタイトル戦だった。

菅井 気持ちも入りますし、真剣に勝負できているので、いい経験になっています。

――タイトル戦で藤井さんと戦ってみての印象は。

菅井 それはいちばん最後(このシリーズを終えたあと)にします。

――叡王戦は不二家が主催している。おやつなどについて。

菅井 どういうおやつを選ぶかも考えます。今日はそれほど余裕がなかったのですが。

――第2局に向けて。

菅井 精いっぱい頑張りたいと思います。

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20230411_147第1局は147手で藤井叡王の勝ちとなりました。終局時刻は18時16分。消費時間は、▲藤井4時間0分、△菅井3時間53分。第2局は4月23日(日)に愛知県名古屋市「名古屋東急ホテル」で行われます。

230411100▲9五歩の金取りに△9二香打(図)。金を逃げない、すさまじい粘りです。▲9四歩には△同香とし、9筋を逆襲できれば先手陣の7筋の壁を利用できます。むしろ△9五金まで考えているかもしれません。対して藤井叡王が図で指した▲4五飛は華麗な切り返し。4四の角は質駒かと思いましたが、角の目の前で止まることで飛車を9筋に利かす手がありました。あとは△5五歩が最後の難敵です。

230411094先手が銀桂得になりました。さらに図で先手の手番。先手が着実にリードを広げています。残り時間は▲藤井11分、△菅井49分。藤井叡王は少ない残り時間で着地を決められるか、菅井八段は決め手を与えずに粘れるかという状況です。

230411081図は16時50分の局面。先手は79手目▲4五歩で桂得を果たし、さらに▲4四歩(図)で後手陣に迫っています。△4四同角には▲4八飛です。先手優勢がはっきりしました。ここまで先手に目を見張るような派手な手はありませんでしたが、61手目▲7九銀、68手目▲3八飛など、見えにくい手を丁寧に拾い上げていった結果がこの差につながったようです。

Dsc_3898(昨日18時40分に撮影。本局は夜戦に入る前に決着するかもしれない)

230411066図では▲3七桂が予想されていました。ただ、△2六歩とされると互いに手が出しづらく、千日手がもありえます。どうしたものかと検討陣が頭を悩ませていたところ、藤井叡王は2分の考慮でさらりと▲3八飛を選択。勝又七段は思わず「見えているものが違う」とうなりました。2四に歩を垂らしたからには、▲3七桂から▲2五桂が目につくため、▲3八飛は盲点に入りやすい手です。しかし、藤井叡王はしっかりとすくい上げました。指されてみると後手の対応が難しい。

先手は7九銀型で玉が堅いので、3五で角交換になる変化はよし。▲3八飛に(1)△2六歩▲3五歩△2七歩成も▲3六飛で大丈夫。後手のと金が空振り気味です。実戦は(2)△4六歩▲同角△4五桂と進みましたが、先手が角を引いたあとに▲4六歩が残ります。展開としては後手が忙しくなりました。どこかで奥の手の△9四歩を出すことになりそうです。

230411065図は15時58分の局面。残り時間は残り時間は▲藤井31分、△菅井1時間31分。後手に苦労が多そうな戦いですが、まだはっきりとした差はついていません。控室では「長い戦いになる」との見込みですが、「そうなると残り時間が気になる」といわれています。叡王戦の持ち時間はチェスクロック式の各4時間。実はタイトル戦で実質的に最も少ない持ち時間です。ほかのタイトル戦よりも決断よく指さなければいけません。

Dsc_4547(神社の東に東京スカイツリーが見える)

230411060図で▲7九銀が指されました。落ち着いた手と評判です。図のままでも▲5七角と引けましたが、後手に5筋から動かれたときに角の当たりが強いという問題がありました。▲7九銀から▲6八角とすれば5筋攻めは怖くありません。ほかにも、7九銀型は飛車の打ち込みに強い(先手は飛車を切りやすい)、6八角型は8六の守備強化につながる可能性があるなど、水面下の変化でも得になりそうな手でした。

Dsc_4413