図はと金で金を取った局面。以下▲7七同金△6七歩▲8六歩△6六角成▲同金△6八銀(詰み)で渡辺王将が投了しました。あっさり終わったようですが、水面下に複雑な変化が隠れていたようです。
「▲7七同金に代えて▲7七同銀のほうが怖いです。しかし、羽生先生は△6六歩で勝ちと思われていたようで。自玉に有効な詰めろがこないという読みなんですよ。渡辺王将も観念されていて、▲7七同金から形作りをされたのでしょうね」(田中悠四段)
まず、▲7七同銀に△8七飛成は▲7八角(詰めろを受けつつ、間接的に2三の地点をにらんだ攻防手)で粘られてしまいます。そこで後手は飛車を成る前に△6六歩とたたくのが手筋です。
△6六歩は、(1)▲同金に△8七飛成▲7八角△7七竜と必死をかける狙い。そこから▲2二歩成とされても、△同金▲同飛成△4一玉!で後手玉は詰まないようです。
△6六歩の問題は詰めろでないこと。その瞬間が甘いので、先手にうまい詰めろをかけられたら負けです。例えば(2)▲3五桂が怖い手ですが……。
「羽生三冠は7三~6四のルートで逃げられるとおっしゃっていました。予想される進行は△6七歩成▲2二歩成△4一玉▲3二と△5二玉▲4二と△6一玉▲2一飛成△7二玉です」(田中悠四段)
後手は2~4筋の駒をぼろぼろ取られてしまいましたが、玉が上部に逃げだせるので詰みません。△6七歩成が利いているのはもちろんのこと、8四飛や3九角も守り駒として立派に働いてる格好です。
田中悠四段は、この順を継ぎ盤に並べてうなっていました。渡辺王将と羽生三冠の対局だったからこそ、▲7七同銀は指されなかったと言ってもいいかもしれません。