図は▲4一角に3二の金を4三にかわしたところ。先手は5筋の銀の逃げ場がなく、忙しい状況です。藤井叡王は▲8三歩△同飛▲5六銀!と勝負しました。
銀取りを放置して、自陣の銀をぶつけるのは強気な手順にも見えます。屋敷九段は「後手がひねり出さないといけない局面で、先手の方針が明快」と話しています。
△5六同銀と△7六銀には▲7四角成が狙いで、飛車を押さえ込めば自玉が安全になります。△5五歩▲6五銀△同桂▲7四角成は「後手に決め手があるかどうか。ないと先手勝ち」(屋敷九段)。△6九角は▲2九飛△6八歩で「角が質駒になってしまう」(高見七段)で、後手が大変です。
実戦は、▲5六銀に△6九角▲2九飛△5五歩と進みました。
伊藤七段は敵陣に角を打ちこみ、▲2九飛に△5五歩と角取りを手抜いて銀を取りました。6五に銀がいたままならば、▲6九飛に△5六歩と銀を取っても▲7四角成がありません。
△5五歩の局面で、残り時間は藤井叡王が25分、伊藤七段が10分。藤井叡王は扇子を手にしながら考えています。