感想戦後に、菅井八段への記者会見が開かれました。
(記者会見に臨む菅井八段)
――叡王への挑戦権を獲得しました。その思いをお聞かせください。
菅井 信じられないというか、最近の自分の調子で挑戦できると思っていなかったです。
――序盤、▲4三角成△7四角(28手目)という進行から、後手が金を手持ちにする展開でした。手ごたえはいかがでしたか。
菅井 思っていた形よりも損をしてしまって、午前中から面白くない将棋にしてしまいました。形勢を悲観している部分が多かったと思います。
――先手が▲9九飛(63手目)と回ってきたところはいかがでしたか。
菅井 その辺はうまく指されたら形勢は苦しくなっていくだろうと思いました。
――飛車と銀桂の2枚換えになりました(86手目)。難解だったと思いますが、いかがでしたか。
菅井 終盤も苦しいものの、どうやって辛抱するかという展開が続いていたので辛抱する順を選んでいたつもりです。
――角取りを放置しての△9六桂(96手目)は手応えをつかんでのものでしょうか。
菅井 あそこは△9六桂と△6二銀かでかなり迷いました。おそらく△6二銀のほうがよかったと思いますが、積極的に勝負しようと思いました。それで△9六桂を選びました。
――よくなったと思われたのはどのあたりでしょうか。
菅井 ▲4三桂に△1四歩(106手目)が打てて、形勢が少し良くなったと思いました。ただ、いつも優勢になってからうまく勝負に持ち込まれるので気を引き締めてという感じました。
――時間もなく、仕留めるのは難しい最終盤だったと思います。
菅井 形勢判断する余裕もなく、最後のほうはうまくやられたら負けと思いながら指していました。
――挑戦者決定戦は永瀬王座との対戦でした。小学生のころから互いを知る間柄で、第4期には挑戦者決定戦で悔しい思いもされていたと思います。今日はどのような気持ちで臨まれていましたか。
菅井 自分の中ではいちばんの強敵というか、そういう棋士なので苦しい戦いになると思いました。以前に挑決で負けているので、今日負けると自分の棋士人生が相当きついものになると思っていました。気合はかなり入っていました。
――叡王戦五番勝負は藤井叡王とのタイトル戦になります。お二人はタイトル戦で初めての顔合わせです。タイトル戦に向けての思いをお聞かせください。
菅井 いまの最強の棋士に、自分は振り飛車でいくことになるんですけど、振り飛車がどれだけ通じるかを思っていますし、そういうシリーズにしたいと思います。
――タイトル戦で藤井叡王に振り飛車党が挑まれるのは初めてです。ファンが期待されていると思います。
菅井 ファンの方は振り飛車党が多いです。いまの時代は振り飛車が苦しいんですけど、十分に勝負できるところを見せたいと思います。
――菅井さんはA級順位戦で藤井叡王に勝たれました。五番勝負に臨むにあたって、あの1勝は大きいのでしょうか。
菅井 関係はないといいますか、その前にうんざりするくらい負けていますので、なんとか1局返せたという感じです。持ち時間も変わりますし。自分が頑張ってようやくいい内容にできると思いますので、いまからしっかり調整して頑張りたいと思います。
――30代初めてのシーズンでした。シーズン当初にお話しをうかがったときに今シーズンは挑戦者が目標とうかがいました。最後に挑戦権を得たことについていかがでしょうか。
菅井 めちゃくちゃうれしいですし、ずっとタイトル戦に縁がなかったので、ようやくチャンスをつかめたと思っています。
――地元の方にどういう将棋を見せたいですか。
菅井 一生懸命頑張っていいシリーズにしたいと思っています。
――菅井さんにとって、もう1度タイトル戦を取ることにどのような思いを持っていますか。
菅井 数年前ならタイトル戦に出場は自分の中ではそれほどこうなんというか、挑戦するのは難しいことではない、と思っていたのですが、いまの自分は挑戦することも難しくなっていました。その中なので、まだタイトルを取るということはまったく頭にありません。ようやく挑戦権を得られたのでいい将棋を指したいと思っています。
――最後に五番勝負への意気込みをお願いします。
菅井 久々のタイトル戦なので一生懸命頑張りたいと思います。振り飛車ファンの皆さんがいつも応援してくださっています。いちばんは結果で恩返しすることだと思っています。
(前期は菅井八段と同門(井上慶太九段門下)の出口若武六段が藤井叡王に挑戦。弟弟子の敵討ちの意味もある)
本日はご観戦ありがとうございました。藤井聡太叡王と菅井竜也八段による五番勝負もご注目ください。第1局は4月11日に東京都千代田区「江戸総鎮守 神田明神」で行われます。