検分を終えた両対局者は記者会見に臨みました。
――叡王戦第1局が今年度の初対局になりますが、その点についてお願いします。
藤井 3月の順位戦からしばらく対局がなく、久しぶりの公式戦ということで、緊張感もありますし、よいスタートを切りたいと思います。公式戦の対局はありませんでしたが、今までと同じように調整していました。
――挑戦者の出口若武六段につきましては。
藤井 出口六段は非常に強い内容で勝ち上がってきていて、手強い相手だと思っています。
――これまでのタイトル戦は実績のある先輩にぶつかっていく格好でした。今回はご自身よりもあとにプロになった出口六段が相手になります。そういう立場になったことに、思うところはありますか。
藤井 自分としては、今までのタイトル戦と違うという点で、新鮮であります。気持ちを新たに戦っていきたいと思います。
――棋士としては出口六段は後輩になりますが、年齢が上で、ご結婚もされていて、人生の先輩になりますが。そのあたりについて出口六段の印象は。
藤井 自分が奨励会のころに将棋を教えてもらったこともあり、温厚で余裕のある方という印象です。
――第1局に臨む意気込みを教えてください。
藤井 久しぶりの公式戦ということで、検分を終えて、緊張感を感じたところがあります。集中して対局していければと思っています。
――3月9日以来の公式戦で、スポーツ選手などは、久しぶりだと不安を感じる人もいると思うのですが、そのあたり、感覚を取り戻すのは大変そうですが。
藤井 やっていないので、わからないところがあるのですが、久しぶりの対局が楽しみというところです。
――持ち時間や不二家さんが主催という点も含め、叡王戦の印象をお願いします。
藤井 叡王戦は持ち時間がチェスクロック使用の4時間ということで、ほかの番勝負より短い持ち時間になっているので、決断力が問われるのかな思います。不二家さんは、対局のときのおやつを提供していただけるということで、楽しみにしています。
――叡王戦と並行して、王位戦の防衛戦も始まると思いますが、王位戦のリーグの星取りなどは、把握されていますか。
藤井 叡王戦に加えて、棋聖戦、王位戦と防衛戦が始まります。棋聖戦は永瀬拓矢王座との対戦。王位戦も佳境を迎えているということで、注目して見ています。王位リーグはまだ挑戦される可能性のある方が多く、激戦なのかなと思います。
――今年は五冠ということで、5つの防衛戦と、残り3つの挑戦の可能性があるということで、意気込みを聞かせてください。
藤井 今年度は叡王戦、棋聖戦、王位戦と防衛戦が続くことになるので、まずはしっかり指してよい将棋にしていきたい。それ以外の棋戦でも、順位戦や王座戦など、挑戦できるよう頑張っていきたいと思います。
――叡王戦の挑戦までの道のりを振り返っていただくと。
出口 予選から非常に熱戦が多く、自分の力が出しきれたのかな思います。
――タイトル挑戦を決めたときの気持ちは。
出口 挑戦者決定戦のときは、何とか勝ちきれたという気持ちが大きかったのですが、日がたつにつれて、タイトル戦という大きな舞台で将棋が指せるということを実感してきました。
――対戦する藤井叡王の印象は。
出口 ひと言でいえば、強いという印象です。
――藤井叡王とはどんな存在ですか。ライバル?
出口 充実されている印象で、実力者です。新人王戦(三番勝負)でも当たりましたが、何かと大事なところで当たる方なのかなと思います。奨励会のころは長い持ち時間に慣れていなくて、(新人王戦は)負けてしまったのですが、最近は少し時間を使うことを覚えてきたので、前回よりは戦えるのかと思っています。
――初タイトル挑戦の秘訣などがあれば。
出口 特に何かを変えたということはなかったので、さきほど話した、持ち時間のことなど、棋士の将棋に慣れてきた面が大きかったのかなと思います。
――初タイトル挑戦のお気持ちは。
出口 慣れないこともあると思うのですが、盤面に集中して、一局を指せればという気持ちです。
――五番勝負はどんな戦いにしたいですか。
出口 白熱した将棋を指せればと思います。
――明日が誕生日ですが。
出口 明日で27歳ですね。そういった縁は叡王戦とあったのかなと。競った将棋で、藤井叡王にぶつかっていければと思います。
――師匠の井上慶太九段、奥さまの北村桂香女流初段からは、何かありましたか。
出口 師匠からは「頑張ってください」と。和服を買っていただいたときに、「理事として行くのは第5局になるので、それまでは」と。妻からは、妻も明日は対局なので、「お互いにいい将棋が指せるといいね」といったり、いわれたりしました。
――明日からの将棋で、どういった形になれば勝機があると思っていますか。
出口 序中盤をうまく乗り切る必要があると思います。序中盤もうまい方なので、ついていく形になればと。
――和服はどんなコンセプトで選びましたか。
出口 叡王戦が春から夏にかけてなので、それに合わせたものを意識して選びました。
――2年前の棋王戦で、藤井叡王に勝っています。何らかの後ろ盾になっていますか。
出口 結果として勝てたことは自分としては大きかったのですが、そのときの将棋は力戦形というか、想定の外の将棋だったので、相手の全力を受けて勝ちにいった将棋ではなかったというのは感じています。
(書き起こし=吟、撮影=文)